城南事件帳 2
ちょうどそのころ、マッコイ逮捕の一報がテレビニュースで流れた。
「関越自動車道越後湯沢インターチェンジ近くの山の中腹で、外国人を含む男女4人組が、公然わいせつ行為により、先ほど、新潟県警南魚沼警察署の捜査員に現行犯逮捕された模様です。現場から中継です」
東京のスタジオのアナウンサーから映像が切り替わる。すると、高速を見下ろす高台で、マスコミ車両が何台も駐車し、現場中継をしているようすが映し出された。ほんとうなら、現場を行為中の男女を押さえたかったに違いない女性記者であったが、そんな口惜しさなどはみじんも感じさせずにレポートを始めた。
「え~、苗場スキー場近くの現場です。私の後ろに見えますひらけた場所に車を停めて、白人の男性2人と日本人女性2人がカップルとなって、白昼堂々、わいせつ行為を行ったために、たまたま現場を目撃した地元警察の警察官により、その場で身柄を確保されました。警察関係者に取材をしたところ、どうやら、4人全員、この週末3日間に開催されているフジロックフェスティバルに訪れていたらしく、会場で知り合って、意気投合したものと思われるということです」
すると、スタジオの、黒目勝ちで色白でおちょぼ口でいかにも男好きする六本木テレビの大森美咲アナは、「その音楽フェスって、そんなに乱れた雰囲気なんですか? そんなに簡単に、男女が仲良くなっちゃうんですか?」と、お昼にしてはずいぶん直球な質問を投げかけた。すると、同じく若さゆえ熱き血潮に満ち満ちた女性記者も、
「そうですよね。私もちょっとびっくりしました。なんでも、出会って1時間くらいしか経っていないっていうんですよ。この4人は。ただ、どうやら甘い体臭から察するに、全員クスリをやってるんじゃないか、とのことで、公然わいせつの他、違法薬物の線でも、どうやら取り調べが行われているようなのです」
「だけど、うらやましいですよね。山のなかで、高速道路を見下ろしながら、マイナスイオンをたくさん浴びて、自然のなかで、異性同士、おつながりできるなんて、ね」と思わず本音を漏らしてしまった女子アナに対して、女性レポーターも負けじと、
「私も率直に、うらやましかったです。ほんとに。ですので、明日は仕事が休みですから、彼氏求めて、私もフジロック、ぜひ参加したいと思います」
ここで、なぜか、バチッ、と稲妻でも走ったかのように、画面が飛んだ。
直後、当然のことながら、フジロック会場周辺はハチの巣をつついたような大騒ぎとなったのはいうまでもない。ステージで演者たちが音楽をかきならしていようが、音楽そっちのけで、マナーの良くない聴衆たちはスマホ画面に見入り始めた。ニュース動画をチェックし、ネット記事で再び内容を反芻しては、ソワソワし始めた。さすがに、ミュージシャンや主催者側も、いったいなにがあったんだ、といぶかったりなどして、会場はもう収集のつかいないカオス状態。
「馬鹿じゃねえの、こいつら。ガイジン男2人と日本人女2人の合計4人、公然わいせつで捕まったってさ。とくに、この白人、マッコイってやつ、知ってるよ。さっきまでいたじゃん。それに、毎年来てるぜ!」
「私も見たことある。なんか、白人にしちゃあ背は低いし、さえないカンジなのよね。それで、クスリやってんの」
「でも、英字新聞ヨコハマ・トリビューンの編集者だったなんて、なんか意外だね」
「ほんと、そう」
「大学受験でさんざん、英語問題で出題されたからな。ヨコハマ・トリビューンの記事は。だけど、こんなやつらが作ってた記事だったなんて、ちょっとがっかり」
「そうだよね。こんなクスリ漬けの青カン野郎の英文を読解させられたのかと思うと、日本の英語教育、大学受験勉強って、なんなんだって、考えさせられちゃうよね」
「見直したほうがいいんじゃねえの? ヨコハマ・トリビューン自体もよお」




