城南事件帳 2
マッコイの初体験は自国カナダ・トロントの路地裏の娼婦だった。しかし、性病をもらった。もうこりごりだ。 プロの女 なんかやめよう。 これが大学生の時だった。学生時代も彼女はできなかった。もともと、ちんちくりんで、カナダ版「大崎署恵三四郎係長」といった風情だったから、モテるわけがない。出版社に就職しても、たいして文才があるわけでもなく、かと言って、仕事が猛烈にできるわけでもなく、 情熱を傾けていたわけでもなかったから、どうしたって小さな会社 ゆえ、 居づらくなってくる。 だから、数年でやめた。 やめたと言えば聞こえはいいが、 要は、お払い箱になっただけだった。
さあ、これから、どうすべ? 彼は迷った。このまま何もしないってわけにはいかない。家だって、 潤沢に資産があるわけでもない。 じゃあまた マスコミ関係か? 確かに大学でジャーナリズムを専攻した。 なぜか?はっきり言ってしまえば、 女にモテたかったから。別に 社会正義を実現したい、とか言う立派な志 など 皆無だった。 ただ漠然とやりたかった。 ただそれだけだった。
さあ、どうする? 家康。 そんなもんもんとした気持ちで、 ネットサーフィンをしている時、 当然のことながら、 男なら、 どうしたって脱線する。 その先は ポルノだった。 日本的に翻訳すれば、『素人無料エロ 動画』だった。
「 素人」の中の、「Asian」を なんとなく 覗いてみた。いや、 なんとなくではない。 トロントの地下鉄で、日本人らしき キュートな大学生の女の子を見かけたことがあったのだ。 ミニスカートのその子は しきりに本を読んでいた。どうやら、 語学学校のテキストのようだった。 何とかして 話しかけたいと思って、 自分の 降りるべき 駅を行き過ぎても、彼女の前の席で粘ってみた。
すると、 次の次の駅で彼女はすっと立ち上がり、 ホームへと出た。 マッコイもすかさず後を追った。彼女は足早にエスカレーターへ乗った。マッコイも 3,4段 下がって従った。彼女が先に地上へ出た。目の前がちょうど交差点で、きょろきょろ見回すと、それまでの無表情が嘘のように、一気に嬉しそうな表情となって手をあげた。 体全体で喜びを表現しているではないか。 見ると、その先には、 本屋の前で、同じように手を振り微笑む、 自分と同じくらいの年齢ではあるが、 背が 190cm くらいある ハンサムの白人男が待っていた。 負けたのが一目で分かった。
こんな経験がトラウマとして心の中に残っていたせいで、腹いせも大いにあって、「Asian」を選んだのだ。なんとなく、なんてもんじゃなかった。




