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城南事件帳 2

 刑事どうしのじゃれあいが終わったようなので、

「ところで、本日、お越しなさったご用件はいったいどういうことでしょうか?」

 社長が丁重に切り出した。そうなのだ。まだ用件を伝えていなかったのだ。大崎署の刑事たちは。

「あっ、失礼しました。じつは、品川ふ頭で今朝、車のなかで死体が見つかりましてね。社長さんの名刺が見つかったんですよ。なので、どういうことか、とお話を伺えれば、と」

「いや、まったく、身に覚えがありませんね。その車だって、ウチのじゃないですよ。よくお確かめください」

「いや、だって、お宅の名刺が」

「名刺はそうかもしれない。きっと、私を罠にはめようかなんか企んで、仕込んでおいたんじゃありませんか? とにかく、ウチの車じゃありません。ナンバー、ご覧になりました?」

「ふん? ナンバー?」首を右30度傾け、眉を八の字にそむけ、横の羽生に確認を求めるも、羽生も? というふしぎな顔をむけるだけ。

「ちょっと、失礼」梅宮はケータイを取り出して、ぴっぽっぱっ、ぴぴぽぽぱぽっ、と打ち込むと、まだいたらしき現場の捜査員に車のナンバー照会を頼んだ。

 その間、わずか1、2分。しかも横に座っているにもかかわらず、羽生は再び空いた時間を活用して質問を始めた。

「さっきの続きなんですけど。どうやって、スカウトしてるんですか?」

「ああ、あれですか。ですから、スカウトマンが彼女の好きな食べ物をごちそうしてあげるんですよ。それで、学校の話とか友達の話とかオシャレの話とか日常のたわいない話や愚痴など全部聞いてあげるんです。言うなれば、財布兼サンドバックですよね。それでまた半年くらいインターバルを置く。彼女が好きな時に連絡をしてくれるようにもちろんこっちも連絡先を教えておく。まあ、胃袋と相談係と、そんな感じですね。そのうちに、彼女も人間だから、ただおいしいものをおごられるだけじゃ悪いと思ったらしくて」

「なるほどねえ。それはイイ事・・、ではなくて、悪いことをお聞きしましたね」

「いや、悪いことではないですよ。うちも、ビジネスですから」

「いや、失敬失敬。そりゃそうだ、そりゃそうだ」

 二人のやりとりが終わるのを見届けて、梅宮が、

「いいかな、そろそろ、羽生君。だいぶ勉強してたみたいだけど」

「あっ、もう、連絡終わったんですか?」しれっとした顔で確認すると、

「とっくに終わってるよ」憮然と言い放った梅宮。「社長、おっしゃる通りでした。我々の不手際で申し訳ありません。よくナンバーを確認しませんで。『わ』ナンバーでした。レンタカーのね。お宅の所有ではないようですので、貴重なお時間取らせて、大変失礼いたしました」


 『わ』ナンバーを見落とす二人も二人だが、とにかく、もう一度やり直し、とレンタカー会社を当たった。桜田通り沿い(JR山手線五反田駅ホームの真下を南北に通る。第二京浜ともいう)の、有楽街西口に、大和レンタカーが営業している。そこで聞くと、

「あっ、このナンバーはうちです。うちが法人契約をさせていただいてる会社さんです」



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