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城南事件帳 2

 香水の香る長い髪、ミニスカートでまたがったため 布きれを通して ではあるが、おのれの股ぐらとごっつんこするの女の股ぐら、これまた ブラウスの上からではあるが、胸のふくらみと背中の感触と、勢いでくっついたほっぺたと。DTとしてあらゆる女のエレメンツ(和訳:要素)をいちどきに浴びせられた羽生は、それはそれは衝撃だった。初めて目にした『ナンパものAV』と同じく衝撃だった。

 「えっ、こんなにも早く、こんなにも簡単に、女の子ってナンパ師たちにカラダ許しちゃうの? すご~いっ! オレも、やろうかな? 渋谷センター街で、歌舞伎町で、戸越銀座で、と、頭がどうにかなってしまうんじゃないかってくらい、脳が打撃を受けていた。


 翌日は、祝日。何もすることのない羽生は、珍しく近所の 区立図書館へ行ってみた。 コロナが下火になって開放的になったのか、 マスクを外すこと自体、人をその気にさせるのか、図書館で、これまたショッキングなシーンを目撃することになる。

 なにか笑える小説でもないか、とテレビドラマのコメディーミステリー系の作家、二時間ものトラベルミステリー系の作家などの棚を渉猟して、カウンター横の席に着いた。

 本をめくり始めて数分、すぐと小説の世界へ引きずり込まれていたのは、東山徳蔵の『謎解きは夜食のまえで』 

 笑える。面白い。 キャハハ。周りも静かに本を読んでいる利用者ばかりだから、それでも、声を押し殺そうと努めても吹き出してしまうのはいかんともしがたかった。それほどに、筆がなめらかということなのだろう。 ひとしきりお腹の中で笑った。

 やっぱり、図書館っていいなあ。 こんな環境にいられるのもちゃんと行政が仕事をしてくれるからだ。 やっぱり、 しっかり税金を払わなくちゃならない、 我々 公務員は 納税者・ 市民のため、 誠実に職務を執行しなくてはならないぞ。 警察官の本文に則り、 公僕としての決意を新たに羽生は胸に刻んだ。じーんときた。感動した。やっぱり、警察という職業を選択して、よかった。

「悪いやつらを捕まえるんだ!」 この 言葉、幼稚園の卒業文集に載せた言葉だ。「犯人を捕まえるんだ」これが羽生大也の原点となっていた。もとはといえば、テレビの仮面ライダーにあこがれただけなのだが・・

 案外、人間というものは、 こういったふとしたきっかけで一生が決まるもの、かもしれない。己の使命感はなんと尊い素晴らしいものであることよ、と自作自演の余韻に浸っていると、そのイイ感じを妨害するかのような男女のコソコソ声が。

 うるさいなっ!

 図書館だぞ。静かにしてくれよ。嫌だな、と感じつつ、音のする右斜め四十五度の方向へ目を向けると、本棚の前に若い女と男の姿が。なんだ、こいつらか。

 目を本に戻して、読書を再開するも、なんだか気になって、もう一度目を上げてみた。すると、男が女の左側から口を吸った。いちゃついているのである。男が女の口に己の唇を押し付ける。すると、女は笑いながら左手で男の胸を押して引きはがしにかかった。

 あっ、こんなところで、いちゃつきやがって。羽生の、妬ましい気持ちが、いや違う、正義感だ。こともあろうに公共の場で異性交遊をしていやがる。つまりは、憲法を逸脱している。「性行為非公然性の原則」に明白に違反している。

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