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城南事件帳 2

「これ?」羽生のパソコンの画面に映し出された動画を食い入るように見入る梅宮だったが、「しかしまあ、よくも、こんなにたくさんのメンズエステだけの動画があるもんだねえ」

「すごいですよね」

「心配すんなよ。きっと、他人の空似だよ」梅宮は一顧だにしなかった。

 グーグル、または、ヤフーで、『メンズエステ 流出動画』とかけると、まあ、出るわ出るわ。『これはガチです!』『超有名店 予告なく削除』『盗撮メンエス動画』など枚挙にいとまがない。しかし、『盗撮』と銘打っている割には、注意深く観察していると、カメラのアングルが3パターンくらいあったりして、あれっ、これって、ひょっとして、仕込んでるんじゃないの、と素人でもうさんくさく疑い始めるものである。さらにいうなら、それ以外にも、結構突っ込みどころ満載なのである。

 だいたい、メンズエステが、『施術』なんだ。いったい、なにを『施術』してるんだ? そもそも『施術』って言葉、なんだよ?

 放送の世界では、NHKによると、「あんま・マッサージ師の国家資格のない人」が行うのは「施術せじゅつ」。「国家資格を持っている人」が行う行為しか「マッサージ」と呼べない。「医療類似行為」である「柔道整体師」等の行為は「治療」とは言えず、「施術せじゅつ」である。((以上、ネット情報による)

 だいたいが、容姿で選んで、バイトで働かせているのがメンエス嬢なんだから、施術といわれればそうかもしれないけれど、はたして、術って言っていいんだろうか? なんの術だ? くノ一忍法か? 山田風太郎か? 店も店だよ。なんで、男に、紙パンツなんか穿かせにゃあ、ならんのだ。あんなもん、どうやったって、はみ出るだろ。スケスケだろ。水に弱いだろ。

 「マンションエステで決死の覚悟」なんて、銘打ってるエロ動画もあるけど、画面も薄暗くして、さも、隠し撮りしてますの態だけど、ホントなの、これ? だいたい、裏講習ってなんだよ、裏講習って。それこそ、店長が役得で貫徹しちゃうってオチでさあ。動画の最初で、なんで、よろしくお願いしますって、お互いかしこまって挨拶しなきゃならないんだ? 何しに来たのか最初っからわかりきってるってのに、わざわざ形式ぶりやがって。歌舞伎じゃないけど、これも、日本が誇る様式美の一種なのか? この一つの型のなかで、エロスを追及するってか? ほんとに、日本人って、好きだよねえ。

 などと、二人の刑事が己のおつむのなかで勝手な妄想を繰り広げていると、

「あれっ、まだ、いたの? お二人さん」素っ頓狂な声で、恵三四郎係長が半分ふしぎそうな、もう半分はちょっとお怒り気味のようすで、つかつかつかつかと二人に近づいてきた。

 まずいっ、メンエス動画がバレる。こういう非常事態では、刑事二人のおつむは瞬時に連動して、タッチの差で、なんとか係長が画面をのぞき込むちょい前に、×をクリックして、それまで何事もなかったかのように、ふるまった。

「どうしたの? なにか検索してた?」

「いやいや」

「いやいや」

「なんか、オレに隠してる?」

「いやいや」

「いやいや」

「二人ともやけに、息が合うねえ」

 恵係長も男だから、男同士があうんの呼吸のケースで、いいことなんか一つもないことくらい、本能的に察知していた。が、まあ、オレも男だから、これ以上、追及するのもなんだな、と、武士の情けでやめておいた。

「じゃあ、係長、行ってきます」

「同じく、行ってきます」


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