城南事件帳 2
翌朝、ラムちゃんは、6畳の部屋でひとり、全裸のまま、仰向けで息絶えていた。警視庁荏原警察署に死体が発見されたのは、夕方、出勤時になっても、姿を見せないため、店長自らがアパートに様子を見に行った時で、首には、きつく絞められた跡があった。
「なんだか、いやですね。こう、五反田だ、戸越だ、と若い女の絞殺死体が上がるってのは」
「たしかにそうだね。コロナが終息して、世間も経済回復で勢いがつきはじめているってのに」
JR山手線五反田駅から歩いて4,5分の山手通り沿いにある大崎警察署刑事課では、珍しく、朝、遅刻することなく出勤した梅宮が、羽生と刑事らしい会話により、仕事始めとなっていた。どうやら前の晩、梅宮のおかみさんは体調がすぐれなかったのだろう。そうとしか考えられない。毎晩毎晩、結婚以来10年以上の長きにわたり、特訓が続いていたのに、ぷつんと切れたのだから。
なんでも、ツヤ子は昨日の夕方、戸越銀座商店街の八百屋でなすを買って帰った。急になすが恋しくなったらしい。それをきれいに水道水で洗って、焼き鳥の串で穴を数か所開けて、オーブンで焼いたまではよかった。260度で16分、焼きなすの出来上がり。が、おいしいからとひとりでポン酢につけてぱくぱく、ぱくぱくとよく召し上がったようだ。それがため、お腹を壊してしまい、アレどころじゃなかった。まあ、ナスが梅宮の代わりをしてくれた、と思えば、夫としては感謝の念しか浮かばない、といったところか。オッとどっこい、オットピンである。




