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城南事件帳 2

 ジョン・マッコイはそのころ、五反田有楽街のコンカフェをあとにして、国道一号を約一キロ南下したところにある戸越銀座商店街近くの2階建てアパート203号室に到着したところだった。たった1時間前、母国語、にやけ顔、バーカウンター越しのスキンシップの合わせ技という、白人ならではの日本人への優越差別意識が根底にある図々しさ傲慢さが功を奏し、その晩が初出勤だったおつむの足りないコンカフェ女を見事釣りあげ、それだけでなく、まんまとラブホ代まで相手持ちにさせるべく、女のヤサにしけ込んだ。

 六本木のショットバー・ホブゴブリンでいつもの白人仲間とゆっくり網を張っているところ、いきなり大崎警察署刑事による任意の聴取という余計な邪魔が入り、日本人空き家女を釣れないと諦めたマッコイは、別の馴染の五反田に河岸をかえたのだ。すると、さっそく、新しい獲物をゲットしたというわけ。その日初出勤だったコンカフェの従業員ラムちゃんが、白人の、ほとんど日本語を話せないマッコイにコロッと騙され、「いいホテル知らない?」と甘い言葉とねっとりとした目でくどかれたものだから、日本人生来のお人よしと舶来品に対する憧れ、それと表裏一体の英語を含むもろもろのコンプレックスが手伝い、自分の借りているアパートまでお連れしたのだ。たったの1時間前に会っただけの、どこの馬の骨かわからない、どんな魂胆を持った、どんな病気を抱えた、どんな犯罪歴を重ねてきたか、どんなドラッグを母国のカナダで経験してきたかわからない、そんな白人を毎月毎月、体を張って家賃を払っている自分の聖域にいとも簡単に上げたのだ。ガイジンからしてみれば、ほんと、日本の女ってバカだよね、尻軽だよね、ちょろいよね、とお腹のなかで大笑いしているにちがいない。

 ラムと名乗った若干19歳の娘、実は、羽生刑事がたまたま秋葉原の裏通りをぶらついた時、「よかったら、最初で最後ですから、お兄さん、私のこと、拾ってもらえませんか?」そう言って、人の気を引こうとしたビラ配りのコスプレ娘だったのだ。「私今日で最後なんです、次から五反田で働くことになるんです」と言っていたのは、うそではなかったようだ。しかし、源氏名は、それまでのモカちゃんから、ラムちゃんへと変わっていた。小林旭の歌の文句とそっくり。時代は変わっても、夜のお店でやってることは変わらない。そういうことだろう。



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