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城南事件帳 2

「ですから、この商売、人から感謝されることで長続きしてきたということです」

「ああ、そうでした」思い出した、思い出した。そこだったんだよ。自分が別れさせ屋だとか昨日のニュースを持ち出すから、そこで話しがおかしくなっちゃったんじゃないか。よし、と仕切り直しをして、

「ところで、あれ以降、NTRという言葉が独り歩きしはじめましたよね。約8年前に初めて世間一般に広がり、他人〇という異質用語も、徐々にAVのタイトルに使われ始めた。だから私たちのような外野は、あくまで興味本位で、それを斜めから見るようになった。人助けなんてことは考えもしなかった。それは間違っているということですよね。まったく不届きな考えであると」

「いや、それほど、厳格なものでもないんですよ」なにやら急にあるじはトーンダウンしてきた。「いや、逆にあの一件がきっかけとなって、ま、正直言いますと、お客さんの数がぐん! と増えたのは事実なんです」あるじは、てへっ、と舌を出さんばかりに照れて、下を向いた。なんだ、さっきまで、心外だ、みたいな論調だったのに、結局、お金か。金が儲かるから結果オーライってことか。

「じゃあ、あの騒ぎのおかげで、相当利益も上がったと、こういうことですか」

「まあ、あんまり大きな声では言いたくはないんですけどね。刑事さんの手前だからなんだけど、税務署も関係するしね」

 なるほど。儲かってんだ。相当に。へえ、そうなんだ。世の中、NTRだ、他人〇だ、とばかの一つ覚えみたいに、ネットのエロサイトを検索すれば、たちどころに何百万件とヒットするし、シリーズ化された作品名もいくつかあるらしい。「他人〇物語」「五十路妻に他人〇を…」「夫に内緒で他人〇S●X」などなど。

「じゃあ、結構常連さんなんてのも、いるんですか、ひょっとして、相当、大立者とか、有名人とか?」とどさくさに紛れて水を向けると、

「いやあ。こっちも商売柄守秘義務ってもんがありますからねえ」と断りつつも、顔はまんざらでもないのが明らか。言いたくてしょうがない、と顔に書いてある。よって、もう一押し、とばかりに、

「誰なんですか? 教えてくださいよぉ~、絶対に言いませんから」などとすり寄る羽生に対し、

「仕方ねえなあ」と渋りつつも、どうみても、顔の筋肉はほころびっ放しという感じ。「じゃあ、ほんと、一人だけですよ」と断りを入れてくるのに、

「ええ、一人で十分ですよ」と同意して、さらに促してみると、

「はっきりいって、驚きますよ。ええ、この人がって、人がね。頼みにくるんですよ。それこそ、IT業界で世界的に有名な人とかね。政治家も政治家、与野党問わずにね。陣笠議員じゃなくて、派閥の領袖、それこそ、大臣経験者とかも」

「ええっ? ほんとですか? 政治家も、こちらに紹介を求めて来るんですか?」と思わず声を張り上げてしまった。

「ちょっと、抑えて」

 頭を下げて、縮こまる羽生。しかし、お店のなかは他に客などおらず、外は、そろそろ日も暮れてきて、客引きも中央通りに立ち始め、サラリーマンOLたちがぞろぞろと繰り出して、そのあとから、商売女たちも少しずつご出勤という時間帯だったから、なにも、扉で閉じられているなかで声をひそめなくったって、外に漏れる心配などないのだ。

「正直、政治家の名前は教えられません。これだけは言っておきます。あとはね、テレビのニュース番組や情報番組でよく見るコメンテーターに学者先生に経済評論家に弁護士に医師に元政治家に元女子アナにフリージャーナリストに作家に、ととにかく多岐に渡るから。仲介を求めるってクライアントは。ほんと、そのへんは、私も、長年この仕事に携わってるけど、人の裏の顔ってのはわからないなあって、始めはさすがに、人間不信に陥りましたよ」

「はあ、はあ。で、誰、なんですか」

「言うの? やっぱり。言わなきゃダメ? ねえ」

「なんで、そんなにもったいつけるんですか? こっちは、有楽街の治安を守ってあげてるじゃないですか。いいじゃないですか、一人や二人、名前出したって。こっちは口が堅い警察なんですから。信用してくださいよ、いいかげん」

「ほんと、しょうがねえなあ。わかったよ、わかりましたよ。言いますよ。あのね、じゃあ、条件がある」

「なんですか、その条件ってのは?」











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