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城南事件帳 2

 すると、やっと、あるじが口を開いた。

「梅宮刑事にお聞きになってらっしゃるんでしょうから、申し上げます。ウチは、裏稼業として、口入れ屋を営んでいるのは事実です」

「・・」 今度は羽生が固唾をのんだ。

「現今の婚姻制度の元で、法律的にも社会、倫理的にも夫婦と言われる方々のために、求められれば、人を紹介しています。第三の男をね。これを世間では、他人〇と言うようですが」

 やっと本題に入った。羽生が聞きたかったのはここだったのだ。N〇Kの夜7時のニュースの最後に出てくる魔法少女とニックネームのついた気象予報士と、同じく民放テレビのT〇Sで出演する先輩気象予報士とで行われた変態的な性的関係をNTRと呼ぶ、と知ったのは、ネット記事からであった。これはただでさえDTの羽生にとっては衝撃以上のなにものでもなかった。

 なにっ!? オレのために、別の男と寝てくれ、だと? 君が別な男に抱かれる姿を見たいんだ、と? たとえ妻子持ちの不倫相手の男のことがいくら好きだからって、女も女だ。そんなおつむがおかしくなるようなリクエストに応える義務なんてないだろうが。気象予報士の事務所の会議室でやった、とか、も自ら暴露しているし。どういうカップルなんだ? お前ら、犬猫かよ。所かまわずお繋がりしやがってさあ。独り、興奮して憤る羽生であったが、

「たしかに、変態的と思われるでしょう。外側の、正常と言われる人々からすれば」

 むろん、そう思うよ。だれだって、そう思うにきまってるじゃないか。何言ってんだ、この、古本屋のあるじは。

「ですが、夫婦が離婚の危機にある場合などは、現状では、少なくとも、弁護士に双方依頼する、しか道が残されていないんです。家庭裁判所に離婚調停を申し立てるとか。ただ、それだと、結局は、離婚なんですよ。別れるしかないんです。いままで、築いてきた家庭も一気に崩壊せざるをえない。子供もいる家庭も多いでしょう。就学児童が楽しく学校に通っているケースも少なくないでしょう。そういったときに、安くない弁護士費用を費やして、破滅に向かうんだったら、もう一度、焼けぼっくいに火をつける、ってやり方があるんだったら、少々アブノーマルかもしれないけれど、そういう道を模索するのも、また、やさしさ、人情ってもんじゃ、ござんせんか?」

 そこまでいうと、あるじは、一度奥に引っ込んで、お湯を入れた急須と湯呑2つをお盆に乗せてすぐに戻ってきた。きっと、本人的には重い話をしているのだろうから、のどが渇いたのだろう。よろしかったら、と羽生の分まで煎れて、勧めた。

「あっ、すいません。また、おいしいお茶をいただけるなんて」と素直な気持ちを述べて、煎れてもらったばかりゆえ、湯呑が熱く、「アチッ!」とおもわず湯呑を落としそうになりつつも、日本茶を一口、口にしながら、話の続きを伺う羽生刑事だった。

「世の中、なんでもかんでも、西洋式で、フリーセックスだ、ピルだ、なんか言って、やりたいときにやって、産みたいときに子供産んで、お互いあれほど出会った頃はアツアツだったくせに、飽きてきたら、はいさようなら、とばかりに、離婚届に判を押して別れる。それじゃ、世の中、いいことありませんよ、ねえ。そう、おもいませんか?」

 たしかに、そうだ。男なんてのは、金玉オッ立てて、すぽんっ! って、精子を抜けば気持ちが収まる。女だって、同じだ。明治の文豪・夏目漱石だって『草枕』で書いてる。情に竿指せば、腹が膨れる、と。羽生は自己流の解釈で納得していた。

「互いが必ずしもWINWINでいかない離婚調停だったら、そんなもん、やんないほうがいい。だったら、その代わり、といってはなんだが、私が面倒みてやろうじゃないか。一肌ぬいでやろうじゃないか。ひびが入ったどころか、完全に割れた茶碗を、他人〇という瞬間接着剤、アロンアルファーを媒介させることで、一気にもとの鞘に戻してやる。そう、考えたんですよ。だから、最初は、あくまでも、離婚の危機から救い出すための特効薬として、この商売を始めたんです」

 そうだったのか? 


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