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城南事件帳 2

 一度、外に出た。例の両開きにスイングするドアを押して。西部劇に必ず出てくるドアだ。なぜ、今回、羽生はマッコイに写真をぶつけて反応を見たのか。実は、ちょっとした因縁があったのだ。出した記事を完全に無視された因縁が。送信した質問メールを再三無視された因縁が。もっといえば、やつのSNSで2019年、台風19号が東日本を直撃した夜に、「日本人よ、ざまあみろ」と国民の神経を逆なでする内容のイラストをアップされた因縁が。翌朝の新聞テレビでは犠牲者が多数出たと報道された。にもかかわらず、それをそのまま放置し、なんの謝罪もない。あるはずがない。そんな気などさらさらないのだ。日本人など虫けら同然に思っていたのだから。典型的な差別行為。いや、これが、ごくごく普通の白人が日本人に対して生まれる以前から持っている「当たり前の」認識なのだ。

 

 マッコイは、この夜、河岸を変えた。ほんとうなら、今夜も、この店で、相手のいない日本人空き家女を釣るつもりだった。が、余計な邪魔が入ったので、場所を五反田のコンカフェ「ヴィオレッタ」へと独りで移動した。背が167センチの、白人としてはチビの部類で、スポーツも得意ではなかったから、余計女にも持てなかった。そうなると、おのずと内向的になるのか、遺伝子がそうなのか、まっ、どっちもどっちだな、と納得しつつ、地元カナダ・トロントの大學でジャーナリズムを専攻した。文学をやりたかったのだが、その才能はないと見切りをつけていたから、ノンフィクションを選んだのだ。が、大學でも女にもてない。若い性欲を吐き出すのには、手っ取り早く、トロントの裏路地の娼婦に金を払って寝た。不潔な女だった。当然ながら、お土産を貰った。

 2日後、学食で飯を食い、トイレで用をしている最中、「イテッ!」と激痛が走った。あっ、もしかしたら・・ 悪い予感が的中したのは、自宅から地下鉄で15分ほどの距離にある性病科で検査した後だった。クラミジアと診断された。やられたっ。

 まあ、幸いに、大事には到らず、薬を服用して1週間ほどでよくなったのだが、精神的なショックは大きかった。もう、街のプロの女はやめよう。なにせ、初めての女に性病を病気をうつされたのだから。

 大學を卒業し、地元の小さな雑誌社で働いたが、なんか刺激を感じることがなく、たまたま、ネットサーフィンをしていると日本で英語教師を募集しているとの記事が目に留まり、現在にいたるのだ。自国にいた時は、ドラッグもやったのだが、日本はかなり規制が厳しいことが玉に瑕だ。なんとかならないものか、と常々考えている。


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