ありふれたファンタジーライフ
目覚め
「人間如きが……なかなかやるではないか。」
「ムカつく事言いやがるなあのオッサンは。」
「余裕そうじゃない」
「気を抜くなトーマス!!」
「次が来るよ!!」
「裁きの時だ。お前達との戦いは面白かったぞ。だがやはり人間なんかでは魔族に抗えぬ。次で終わr!」
「驚いたかぁ!?人間を舐めるなよォ!!」
……
……
――――――――――――
「学校はつまらないなぁ……。」
俺の名前はレイ。学校が終わるといつもこの雑木林に来て身体を動かしている。さっきも言ったが学校は本当につまらない。五分で分かるようなことをなんで一時間もかけて勉強するのだろうか。全くあんなとこで勉強してるよりこうやって身体を動かしt
「レイ!またサボりか!」
やばい。今俺に向かって怒鳴った筋肉質で高身長の青年は幼馴染のトール。実はさっき嘘をついた。まだ学校は終わってない。サボっているだけだ。
「おー……トール……。いやぁ……。」
「早くその木から降りてこい。」
……。こういう時は……。
逃げる!!
「さらばだトール!」
「あ!ちょ!待て!!」
ぬはは。自慢ではないが俺は学校で一番運動神経がいい。サボってるのにね。しかもこの雑木林はなかなかに複雑だ。つまりよく来ている俺はトールから逃げれる!!
「フッフッフッ。トール君は甘いねぇ。」
「あいつなんであんなに速いんだよ!!」
「よく来ているからさぁ!」
「サボりだろ!」
よし。このまま行けば逃げ切れるな。ここを曲がりさえすれば……。
「学校に戻るわよ。」
「うわぁ!」
……
……
――――――――――――
二人もいるなんて聞いてない。くそ!トールだけだったら逃げ切れただろうに。
「残念だったわね。トールだけだったら逃げ切れるとでも思っていたのでしょけど、いい加減あんたには学校に来てもらわないと困るのよ。」
ウグッ……。全部お見通しか。このロングヘアで全てを見透かしていそうな奴はもう一人の幼馴染のアメリア。クールで整った顔立ちをしているからよくモテるそうだが猫を被ってるだけだ。なんたって俺に対して暴力的すぎる。まぁそんなわけで昔は俺とトールとアメリアは仲良し三兄弟だったという訳だ。昔は無邪気に遊んだねぇ。アメリアなんて「将来レイかトールのどっちかと結婚してあげる!」とか言っていたんだよね。そんなアメリアが今では。
「次サボったら埋めるわよ。」
恐ろしい。「結婚してあげる!」とか言っていたアメリアは一体どこへ……。
「アメリア……。助かったよ。」
「トール。あなたもしっかり捕まえなさいよね。」
「はい……。」
「そうだぞぉ!」
ゴツン!
「痛っ!な、殴らなくてもいいじゃないですかぁアメリアさん。」
「早く行くわよ。」
なんて恐ろしい子!
……
……
――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
「やっと終わったよぉ!」
「あなたずっと寝てたじゃない。」
なっ!なぜ気付いた!瞼に目を描いておいたのに!
「見れば分かるだろ。」
「トール!お前まで!」
「……そういえば今日は誕生の日ね。」
「そうか、、今日だったな。」
「ん?誕生の日って明日じゃないの?」
「レイ……誕生の日も忘れていたの?」
「あ、あはは……。」
誕生の日とは、勇者が生まれる日のことだ。大賢者様が五年に一度、勇者が生まれる日を予言する。この予言された日に必ずどこかで誰かが勇者として覚醒するのだ。そして、勇者として覚醒するのは十六歳の青年一人。ちょうど俺達と同い年だね。そしてこの勇者は仲間を率いて魔族を倒しに行く。
50年前。人類は魔族による襲撃を受けた。その時に人類の三分の一が死んだ。あっけなくね。しかしそこで生まれたのが当時十六歳だった初代勇者、トーマス・レイ。そう!名前が俺と同じなんだ!苗字は違うけど。この勇者は中々に凄い人でね。魔族のトップ。冥界王クロをギリギリまで追い詰めたんだ。だがギリギリまで追い詰めただけ。結局クロは生き残っている。トーマス・レイ率いる勇者パーティーは行方不明。だがまぁトーマス・レイ達がを追い詰めたおかげで今の人間界は割と平和だ。五年に一度、勇者が魔族討伐に出るがやはりクロまでは倒せない。この勇者パーティーはみんな行方不明だ。恐らく死んでいる。それなのに世間は勇者が生まれると必ず旅に出ろと言う。しかしそうするのは仕方ない。勇者として力は五年しか使えない。時間は限られているのだ。そしてその次世代の勇者として覚醒してもいいように俺たちは学校で魔法や剣術、学業などを学んでいるわけだ。
勇者は独自のスキルというものを得るからこんな事しても意味無いと思うんだけどね。
「皆の者!そろそろ勇者が生まれる。自分の腕の紋様を見るのだ!」
この世の人間は生まれた時から腕によくわかんない模様がついてる。そして予言された日にこの腕が光った人が「勇者」ということらしい。
「そろそろよ……。」
「自分なわけ無いと思っていてもやはり緊張するな……。」
「早く俺は帰りてぇよ……。」
「相変わらずだなお前は。」
「だって俺が覚醒なんてするわけn」
!?!?!?!?!?!?
なんか俺の腕が光っているような気がするが気のせいだよな。俺が勇者なわけないよな。まさか。はは。
「あなた。光ってるわね。」
「ああ。光ってる。」
「や、やっぱ光ってるよね……?」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「勇者だ!!レイが勇者だ!!!」
「我が校から勇者様が出るなんて!!!すごいぞ!」
な、凄い祝福モードだ。
「どうしたレイ!もっと喜べよ!」
「凄いじゃない!!」
ホントに現実なのか?怖くなってきたよ。俺が勇者?実感が湧かない。……これから俺は死にに行くのか?……そんなこと考えても仕方ないよな。勇者として覚醒したのなら目指すは魔王討伐だ。
「これから大変だぞ!まずは正教会の本部へと行くのだ!おっとその前に護衛を呼ばなくてはな。」
先生がすごい嬉しそう。護衛とかも呼ぶのか。まぁ正教会に向かう途中で殺されたりなんかしたら大変だしな。
……
……
――――――――――――
すごい疲れた。護衛付きで移動するのってこんなに大変なのか。これからまた面倒くさそうだ。
「勇者様でありますか!?」
「あ、はい。」
「私の名前はシスタです!この正教会で聖女として働いております!」
「これから様々な加護をさずけます!この時にスキルが目覚めますよ!今勇者様は中級スキルを持っていると聞ききました。新しいスキルはなんと神級スキルです!」
おぉ!神級なんて聞いたことしかなかったぞ!
この世には魔法が存在している。下級スキル、中級スキル、上級スキル、超級スキル、神級スキル。大体の人は下級、中級スキルは獲得出来る。しかし上級スキルからはかなりの鍛錬が必要で、更にはセンスも重要だ。
「それでは加護を授けます!」
「……エレメンタルフィールド。」
……おぉなんか力が漲ってくるみたいな感じ。
「加護取得完了。続いて神級スキル。……獲得成功しました。神級スキル「勝利の法則」を獲得。その他複数の上級スキルを獲得しました。」
なんか無機質な声が聞こえるな。それより「勝利の法則」というのが気になる。一体どのようなスキルなのか。方程式とか俺は分からないぞ。
「無事スキルや加護を獲得したようですね!自身のスキルはその内自然と理解していきますよ!スキル体の一部として馴染んでいきますからね!」
「それでは勇者様の仲間を選んでいたので紹介します!こちらの方々です!」
正教会の人はそういい他の部屋に繋がっている扉を開けた。そこにいたのは。
「勇者様としての気分はどうだ?」
「結局ずっとあなたと一緒なのね。」
「おまえらぁ!」
なんてこったい。仲間はトールとアメリアだ。確かにあいつらはかなり優秀なやつらだったな。サボってからよく知らないけど。アメリアはなんちゃら魔道大会で優勝してたしトールはなんちゃら剣術大会みたいなので優勝していたな。ちなみに俺はパン食い競走の世界大会で予選敗退したことがある。
「実はもう1人お仲間がいるんです!」
聖女さんがそう言うと扉の奥から綺麗な女性が出てきた。艶のある髪を腰まで伸ばしている。とても整った顔をしており、スタイルもすらっとしていて凄くいい。十字架のマークが描かれた、戦闘服と言うよりもナース服のようなものを着ている。おそらくヒーラーだろう。つまり一言でまとめると女神。
「初めまして。勇者様とお仲間の方々。私の名前はシロと申します。これからはこのパーティーでヒーラーとしてご一緒させていただきます。」
「あぁ、よろしく!俺はレイ。勇者らしいね。あ、ちなみに彼氏とかっています?」
ガンッ!
「うふふ、ウチのバカ勇者様がごめんなさいね。私はアメリア。ジョブは戦闘魔道士です。」
「はい!よろしくお願いします!ところで……勇者様は大丈夫でしょうか?」
「ん?あぁ。大丈夫よこんなやつ。」
「ふぅ。勇者じゃなかったら危なかったかもしれないな。」
なんか本当に危なかったかもしれない。アメリアの力が強くなっている気がするな。
「俺はトール。ジョブはタンクだ。特に言うこともないな。」
「トールさんですね!よろしくお願いします!」
「あぁ。これから長い付き合いになるだろうからな。」
「はい!」
ここからレイたちの魔王討伐の度が始まる。