底辺物書きがハーレムの主役は『正妻』だと悟った話
ハーレムもの、苦手な方は多いみたいですね。
『除外設定に~』なんて話もよく聞くので、巻き込み事故が怖くて、自分の作品に『ハーレム無し』のタグすら付けられない状態です。
そんな私ですが、実は今までハーレム設定そのものは嫌いではなかったんです。
要はハーレムを築く主人公の性質次第。
受け身の、ヒロイン達の気持ちに気付きもしない『僕、なにかやっちゃいました?』系の鈍感優柔不断主人公が、誰も選べないままハーレム状態になるのは非常に気持ち悪い。
でも『俺が全部なんとかしてやる』な、ちょっとオラついた感じの主人公が、望んでハーレムを作る話は、とても楽しく読むことができました。
やっぱりね、嬉しくはあるんです。
1対1の恋愛なら、100%負けヒロインになる推しの子が幸せになる姿は。
ですが、最近気づくことがあったんです。
今書き溜めている話がありましてね。
ジャンルはハイファン。一度世界を救った強くてニューゲーム少年と、街に現れる怪人と戦う変身ヒロインのラブコメです。
で、キャラを考えていたら、出てきたんですよ。
敵の女幹部。
真面目な常識人なんですが、権力者のせいで酷い目にあって、そこをつけ込まれて組織に入ることになった少女。
で、この子を思い付いた時に、筆者は思ったんです。
――ヒロインにしてぇ。
はい、めっちゃ気に入ってしまいました。それこそ、ヒロイン以上に。
ついでに『恋愛なんてどうかけばいいのっ!?』って感じだった作者には、敵の幹部は天啓だったんです。
敵同士という葛藤をメインにすれば、恋愛描写も何とかなるんじゃないか、と。
私は、この子を何とかヒロインにしたいと考えました。
だかしかし、この物語はラブコメで、ヒロインはもう決まっている。
じゃあ、どうする?
そう、ハーレムです。
たった2人なんで二股なんですが、ハーレムです。
強くてニューゲームの彼(以下、2周目君)が、2人とも娶る話にすればいいんじゃね?
そんなふうに考えた私ですが、そこには一つ、大きな障害がありました。
この話の主人公、女の子の方なんです。
変身ヒロインがエッチなピンチに遭いながら、それでも立ち上がって悪を打ち砕くのが、私の描きたかった話だったんです。
でも、ヒロイン2人のハーレムものにするなら、やっぱり男主人公でしょう。
じゃあ、2周目君を主人公にするか?
2周目君は、実際に今連載している作品――つまり『1周目』の主人公です。
彼の一人称で話を進めるのが、やりやすいことはわかっている。
が、今更強くてニューゲーム主人公の俺TUEEEが描きたいかというと……特に描きたくない。
最低でも、私1人だけでも『面白い』と思える話が書けるとは思えない。
主人公は、変身ヒロインのままで行く。
で、この子が主人公のまま、2周目君が彼女と女幹部2人と関係を結ぶ状況を想像をしたとき――
――なんだこのクズ野郎は。
と、思ったのです。
構想から執筆完了まで七、八年は付き合い続けたある意味『相棒』とも言える男に対して。
もう一度言いますが、私は『僕、何かしちゃいました?』タイプの主人公は嫌いです。
2周目君は、自分が強いことを自覚した上で、やれることをやる私好みの主人公です。
あと、私自身も男です。
女性を侍らせるタイプのハーレムには、抵抗が少ない筈。
が、女性主人公で、彼女に視点を合わせてハーレムものを書こうとした時、どうしても変身ヒロインちゃんが、なんの憂もなく幸せなエンディングを迎える姿が想像できなかったんです。
私のヒロインちゃんは、恋愛思考的にはツン4:デレ6のライトなツンデレちゃん。
ハーレムなんて考えたこともありません。
先ず、2周目君への恋心を認めるだけでも一苦労。
思いを伝えるなんて最終回付近まで不可能です。
そこに、心を掻き乱す2周目君が、別の女を連れてきて、『お前達が俺の剣だ!』とか言い出すわけです。
普通は思考停止、からのビンタ、でサヨナラだと思うんです。
このイメージが出てきた時点で、ハーレム案はボツになりました。
書き手として、主要人物それぞれに視点を移した上で、みんな幸せになるハーレムって難しいんだなって、改めて思い知らされました。
思えば私が受け入れられたハーレムものって、先ず絶対的な正妻がいて、その正妻自身が自分が幸せを感じるために、旦那にハーレム勧めるor許す話だったんです。
そのくらい、正妻キャラがぶっ飛んだ存在でないと、私はもうハーレム設定を受け入れることはできそうにありません。
ハーレムものの恋愛話の主役は、主人公ではなく『正妻』。
この感覚、果たして共感いただけるでしょうか?