ドクズ勇者スクド
——勇者スクドは真まことの勇者である。しかし、真まことにクズであった。
まず彼は勇者が、魔王に武力で対抗できる唯一の存在である事をいいことに、魔王討伐の準備金と称して、各国の王達から国家予算にも匹敵する多額の金を出さた。
使い道はというと・・・世界中を渡り歩いては、貴族でも中々手を着けないような額の酒を浴びるように飲み、ピンク色のお店で女を買い漁り、賭博で散財した。
それに飽きると、今度は村や町で気に入った女をその晩部屋に呼ばせて無理やり奉仕させた。
いくつかは反発が行われたが、その莫大な力を持って反発した人間を全て血祭りに上げた。
次第に資金に底がつき始めると、貴族や商人、果てには町人どころか、お小遣いを握りしめた子供からもお金を徴発し始める。もちろん反発すれば血祭り。
同種の人間に容赦がない勇者が魔族に寛容な訳がない。
勇者と対峙した魔王軍は男は皆殺し。気に入った女は奴隷にした。
自分のパーティーの仲間にもその悪行は及んだ。
正義感の権化のような英雄ムエトは、勇者の行動を諌める度、拷問の刑。
ありとあらゆる知識を持つ賢者ホアは、悪行の知恵袋代わり酷使され。
一番性欲の吐け口にされそうな聖女アナは、顔がタイプじゃないとの理由で何もされなかったという。
詐欺、恐喝、窃盗、殺人、強姦。
この世の悪という悪の限りを行い尽くし、
「魔王より魔王してる」「ドクズ」「真の魔王」「魔王が唯一引いた男」「クズの権化」「聖女はタイプじゃ無い人」
などと呼ばれた勇者であったが、今日この日、勇者なのに勇者パーティーを追放されるとなった。
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勇者パーティーの泊まる宿の一室で秘密の会談が行われようとしていた。
会議に参加するのは英雄ムエト、賢者ホア、聖女アナの三名。
机の上に広がる計画の最終段階を終えたムエトはアナに問う。
「穴、スクドにちゃんと薬は渡せたか?」
「ええ、完璧よ。誘いに行ったけどいつも通りタイプじゃ無いって門前払いされたわ。だから他の娘こする時用に使う精力剤だからって言ってホアの作った『弱体化の秘薬』を渡したわ。やっぱりタイプじゃ無いって言われたのムカつくから、ついでに惚れ薬も混ぜてやったわよ!」
「ホア、スクドの様子は?」
呼びかけられたホアは手持ちの魔法の鏡を使ってスクドの様子を覗き込んだ。
「たぶん、大丈夫。寝てると、思う」
アナが疑問を投げかける。
「薬はどれぐらいで効き始めるの?」
「たぶん、スクドが起きる頃には薬が効いて、一般男性並みの力になる、と思う」
「せいせいするわね」
「ああ」「うん」
ムエトとホアもすかさず賛同した。
「スクドったら勇者の能力か知らないど、アホみたいな力だけじゃ無くて、自分に悪い影響のある薬の効果も無効化しちゃうんだから滅茶苦茶よね」
「ああ、でもホアの作った弱体化の秘薬なら効くはずだ」
「うん、理論上は完璧だよ」
「ホアがいうなら大丈夫だな。明日になったらスクドを追放して、魔王を倒す真の旅に出よう!」
「うん!」「ええ!」
こうして秘密の会談はお開きになった。
明日起きると勇者の力を失ってしまい、スクドは追放されてしまう。
そして、
ドクズ勇者スクドが更生するまでを更生譚!
勇者不在の奇妙な勇者パーティーメンバーが織りなす魔王討伐を目指す奇怪譚!
が今!
・・・始まるとか始まらないとか。
スクド ドクズ(ド屑)
ムエト ドエム(ドM)
ホア アホ(阿呆)
アナ 穴
魔王の名前は・・・
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