第二話
月日は流れ受験当日、俺はいつものように目覚めた。
緊張なんてしなかった。なぜなら合格するのは間違いない。だって、受験範囲は網羅しているのだから。このまま合格して、エリート街道突っ走って、りんと...。えへへへ。
試験は終わった。家に帰ると両親が真っ先に駆けつけ、「試験はどうだった?」と尋ねる。
「多分受かった。」俺はそう答えた。多分といったが、絶対だろう。それくらい余裕な試験だった。俺は自室に向かうと、いつものように趣味である数学などの多種多様な学問に打ち込んだ。俺は本当に天才なのである。
「落ちてる...。嘘だろ...。」俺は結果に絶望した。おかしい、これは現実ではない、ありえない。俺は天才なのに、間違いだ、夢だ。「門三郎、人生に挫折はつきものだよ。」と父は言った。何を言ってるんだこいつは。下級武士のくせに、おれより頭が悪いくせに、ふざけるな。こいつは俺を馬鹿にしている。こいつだけじゃない、母が、親戚が、村全体が、いや、世界が俺を馬鹿にしている。こんな世界なんていらない。死んでやる。この日の夜俺は寝ている父から刀を取り、自らの喉を切り裂いた。俺は一切躊躇わなかった。
薄れゆく意識の中(もう俺に朝はこないのか。)そう思うと悲壮感が全身を纏い、そして、何か大事なことを忘れているような気がした。
「...小林さん、元気な男の子ですよ。」知らない女の声がする。なんだ?どうなっているんだ?
「あれ?この子産声をあげないわ?」今度は違う女の声。なんか体がベタベタして不愉快だ。あれ?俺の手はどうしてこんなに小さいんだ?待て待て、冷静になれ。女たちの言っていることから考えるんだ。男の子、産声、そしてこの全身に纏わりつく粘々した感触。俺は全てを悟った。
「あなや~~~~!」これが俺の産声だった。