電球を見つめていた頃
27歳公務員、独身、A型、さそり座、彼女は3年前に別れて以来いない。趣味は映画やアニメや漫画等の作品を見たり読んだりすることだけれども、それも誰かと語れるほど熱中して見てるかと言われるとそうでもない。気づけば20代も後半を迎え、”アラサー”と言われる自分には縁がないと思っていた時期を迎えている。職業は県内にある公立高校の教員で、科目は国語を担当している。文学作品が好き、なんてこともなく、とりあえず大学時代に取った教員免許の力が作用したと言った方が早い。そんなこんなで新卒から働いているが、わりかし思ったよりも生徒と過ごす毎日は楽しく、自分が思い描いていたようなバリバリに働くサラリーマンとは程遠いけれども、それなりにやれていると感じている。平日の勤務時間は8時半から17時までの一般的な勤務時間。しかし、残業はそれなりにあったりする。部活動という、僕のような熱心に向き合えないような人間には、サービス残業と言った方が表現が近いように感じている。友人は多くはないが、自分の気持ちを遠慮なく伝えられる人が何人かいる。休日は特に予定がないのに早起きをしてしまって、洗濯、掃除、平日にできなかった家事を一通り片づけるところから始まる。料理はあんまり得意ではなく、レシピ通りに作っても別の料理になっていることが多いのが常である。ざっと自己紹介はこのぐらいで済ませよう。誰も僕に興味などはないかもしれないが、ひとまず自分の特性や人物像を得るためには必要だと思って筆を執ってみた。
今日は休日で、朝からずっと電球を見つめていた。アンティーク調のもので橙色を発光している。何もせず、ただただ電球を見つめているのだった。芥川龍之介は『或旧友へ送る手記』の中で自殺した理由を、「何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」と言ったが、その気持ちが少しわかった気がした。僕に自殺する勇気なんて毛ほどもないが、「ぼんやりとした不安」を電球から感じたのは間違いない。キラキラとした日々なんて、何が正解かはわからないけれども、僕の人生はきっとキラキラしていない。それでも毎日生きて、働いて、ご飯を食べて、お風呂に入って、眠っている。ただ、生きている。理由なんてないのかもしれないけれど。
筆を執った理由はただ一つ。自分の足跡をここに残そうと思ったからである。それ以外に理由なんてない。このどうしようもなく広い地球で、世界で、自分は生きていたんだぞという証明を残したいと思ったからである、僕の都合のいいように執筆されていることには大いに目を瞑ってほしい。こんな僕にも多少なりのプライドがあり、よく思われたいという俗な気持ちがあるのだから。
前置きはこのくらいにしておきたい。これから始まる、僕のたいしたことない物語の幕開けには十分すぎるから。
月曜日。
特に何かしたわけではないが、休日が終わるのはいつも寂しい。
平日もいつも通り早く起きる。休日との違いは、家事をやるかどうかだ。必要以上に入念に歯を磨き、顔を洗ってソファに腰を落ち着ける。インスタントコーヒーを飲みながら、今日やることを考える。あれやってこれやって、考えているうちに10分が過ぎ、20分が過ぎ、30分が過ぎ、家を出る時間になる。皴が入ったパンツを履き、色が薄れたジャケットを着て家を立つ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」とは言われないけれども、出発の挨拶をするのが僕の日課だった。
「おはようございます」
「おはよう」
職員室に着くと、隣の猪又先生がすでにいらっしゃった。定年を迎えた後、再任用教員として働いている大ベテランの先生だ。再任用教員とは、退職した先生が正規職員ではない雇用形態で働くシステムである。とは言っても正規の職員と同じぐらいの業務があるし授業もある。ただ、勤務時間と同時にでしっかり退勤できることが多いので、パートタイマーというのがしっくりくるかもしれない。
猪又先生は小柄で瘦せていて、髪の毛はほとんどないが、どことなく正岡子規を思わせる風貌には貫禄がある。以前、「正岡子規の生き写しのようですね」と尊敬の念を込めて言ったことがあるのだが、「それは禿げてるってこと、有川先生?」と柔和な笑顔で言われて以来言葉に気を付けるようにしている。
「有川先生、後で時間があるときに見てほしいものがあるんだけどいいかな」
「いいですよ、何ですか?」
「この俳句を今日授業で扱うんだが、自分の感性が生徒に合っているかわからなくてな。この表現で生徒に伝わるか見てほしいんだ。有川先生はまだお若いから生徒とも感性が近いだろうから」
「わかりました、感性が近いかどうかはわからないですが見ておきます」
そう言ってプリントを受けとると、ぎっしり赤入れされてコメントがされていた。なかなか時間がかかりそうだと思い、ひとまず後回しにして今日の準備に取り掛かる。今日は授業が4コマあるから、プリントの準備や何やらで朝は忙しない。僕に限らず、月曜日の朝はどの先生方も忙しなくなるのが常なので、印刷室の2台の製版機戦争を勝ち抜かなければならないのだ。
「おはよー、ラッキー空いてるわ」
そう言いながら本宮先生が印刷室に入ってきた。同い年で英語科の担当、僕と同じタイミングで赴任した先生だ。所謂同期ってやつで、何でも口に出す明朗快活な先生である。長身瘦躯で顔立ちは薄く、今風の若手俳優を思わせるので、女子高生には大変人気がある。「27歳の陽と陰」と生徒が僕らのことを話していたらしいと聞いたが、怒りよりも納得したことを覚えている。
「おはようございます、本宮先生」
「いつも思うけどさ、なんでそんな丁寧なの?おれたち同期だよね?たしかに親しき中にも礼儀はあるというけど、この距離感は敬遠を感じちゃうよ」
「そんなことはないです。癖みたいなものなので、気にしないでください。本宮先生は親しみやすいので、やっぱり同期の仲だと感じています」
「いやいや、これ聞いてる人の誰もがそうは思わないって。まあ有川先生のそんなところが良いところなんだけどさ」
僕としては本当にそう思っているのだが、なかなかうまく伝わらないらしい。国語科の教員として自分の考えを他人にうまく伝えられないのは非常に致命的かもしれないが、こんな調子でもう5年近く経っている。
プリントの準備が終わり席に着くともう朝礼の時間に差し掛かっていた。連絡事項が各先生方から交わされ、最後に持ち回りで朝のスピーチがある。教頭先生の進行で本日の連絡事項が始まった。体育祭、PTA総会、各行事についての連絡事項について交わされたあと、生徒指導グループの川下先生が「ちょっといいですか」と席を立った。
「近頃本校の生徒の頭髪が乱れています。校則では染髪は禁止です。先生方、厳しい指導をお願いします。自分のクラスの生徒だけではなく、学校全体で取り組まなければいけません。校内で髪の明るい生徒がいたら必ず呼び止めて注意をしてください。お願いします」
耳が痛いなと思った。僕のクラスにも校則を守らず茶髪や金髪に染めている生徒が数名いるからだ。
「それでは他の先生方何もなければ、今日の朝の打ち合わせはこれで終わります」
朝の打ち合わせが始まり、皆が席を立つ。出席簿を持ち教室に向かう。職員室を出ると、茶髪の生徒が前で待っていたが、何も言えずに通り過ぎるだけだった。川下先生、ごめんなさいと心の中で呟き、自分のクラスに向かう。
2年2組。南棟三階の端から2番目の教室。
さあ、今日も一日が始まる。
「おはようございます」
僕の中での最大限の声量で教室に入っていく。
月曜日はいつも、こうして幕を開ける。
「進路希望調査用紙は必ず今週中に提出するようにしてください。進路が未定でも、興味があることは書くように。この用紙を基に一人ずつ個人面談をするから、ふざけて書かないでね」
高校2年生がスタートする時期というのは、生徒各々が進路について考えださなければならない時期でもある。まだ新クラスが始まり浮ついている部分もあるが、ここをずるずる先延ばしにしてしまうと、卒業時に進路が未定であったり、とりあえず興味のない専門学校に進学したりすることになる。今の時期から考え始めないと間に合わないのだ。ただ、それでも自分の無限に広がる未来をこの年齢で決めることなんて難しい。僕のような、”社会”を知っているのかどうか分からない大人が相談に乗り、一人ずつ進路を決めていくのだから、この教育システムもどうかしてると思うこともない。学校現場は社会にある営利目的の民間企業に勤めるのと訳が違うので、僕を含む教員一人ひとりの視野は非常に狭い。利益を生み出さなければならない民間企業とは考え方も行動も異なりすぎている。新卒からそのまま学校現場に入った教員が大半を占めるこの日本の教育が、どこまで正しいものかはわからないと常々感じる。
「じゃあ朝のホームルームはここまでです。質問がなければ終わります。朝倉、海藤、武井は話があるので終わったら僕のところに来てください。」
呼び出されたことに一瞬クラスがざわついたが、なんとなく生徒たちは理由を察したようだった。いま僕が呼び出した3人は、髪色が明るい生徒だからだ。
「はい、なんですか先生。この後体育だから移動しないといけないんですけど」
金髪に近いほどまぶしい髪色をしている朝倉がふてぶてしく言った。女子高生特有の気怠そうな雰囲気を惜しげもなく醸し出している。外見が中身を現すのか、中身が外見をあるように変えるのかわからないが、どちらにしても朝倉はその通説の体現者である。短く刈り上げがされていて、二本の線の剃りこみが入っている海藤はただ後ろで睨むように僕を見ている。メッシュといえばいいのか、流行に疎い僕はその染色をなんと言葉で表わせばいいのかわからないが、まだらに金色が混じっている。この二人に比べれば落ち着いた色ではあるが、明らかに染めていることがわかる武井は申し訳なさそうにしている。
「3人とも、呼び出した理由は言わなくてもわかるよね?」
沈黙が流れる。高校生の空気を読む力は鋭い。察すること、空気を読むことが学校で生き残る術だとわかっているからだ。小学校、中学校を経て、高校生にもなればその感覚は研ぎ澄まされている。だいたいこういった指導をするときはまず、こちらから話さない。自ら自覚があることを認めさせる必要があるからだ。それに、空気を読む力はあっても、我慢する力はそれほど備わっていないので、しびれを切らして誰かが口火を切る。
「もしかして髪色ですか?わたしもともと明るい色なんだけど、大体先輩たちだってみんな染めてるし、わたし達だけ言われる理由ないんですけど」
しびれを切らした朝倉が仏頂面で言った。
「うん、そうです。髪色が明るいから今週中に染めてください。来週月曜日に黒くなっていなかったら、保護者の方に連絡します」
フッ、と馬鹿にしたように笑いながら朝倉が言う。
「先生わたしの話聞いてた?最近染めたばっかりだし、周りもみんな染めているのになんでわたし達だけ染めなくちゃいけないのって言ってるんだけど」
「みんなって誰か分からないし、校則で決まっていることだから。僕のクラスはみんなしっかり染めてもらうからね」
正直言うと、生徒の髪色になんて毛ほどの興味もなかった。黒だろうが茶色だろうが金色だろうが、別に赤色だって青色だって何でもいい。恐らく他の先生達も同じように思っている人の方が多いはずだ。しかし、校則というルールがあり、ルールがルールとして機能しなくなっては校風はすぐに乱れる。生徒が外で問題を起こすようになりやすく、最悪犯罪に手を染めてしまうことだってある。注意する大人がまだ彼ら彼女らには必要で、そのためにこうやって指導しているのだ。
「ほんとどいつもこいつも同じことしか言わないよね。まあいいや、わたし黒くする気ないし。じゃあ先生、体育で着替えなきゃいけないから行きまーす」
こうなることは大体予想がついていたが、瞬間こみ上げる黒い感情を飲み込み、朝倉を止めることはしなかった。
「二人は?ちゃんと来週までに染めてきてね」
「俺も染めないっすよ、これにするの高かったし。そのうち黒くなるんで、それまでは染めないっす」
海藤も朝倉に続いて出ていく。二人目は何事も言いやすい。状況をみて判断してから切り抜けられる。海藤はそういう狡猾なところがある生徒だと分かっていた。朝倉を褒めるところが唯一あるとすれば、海藤のようにずる賢くはないということかもしれない。
「僕は、じゃあ今週中には染めます」
武井がそういって走って教室から出ていった。だったら最初から染めるんじゃないよ、と誰もが思ったであろう言葉を教室に僕がひとり残し、次の授業に向かった。
現代文の授業を終え職員室に戻ると、僕の机の前で新卒1年目の植松先生が待っていた。まだ1年目の初々しさもあるが、華奢でかわいらしい顔立ちをしていて、男性職員及び男子生徒から熱烈な支持がある。指導科目が同じ国語なので、何か僕に相談があるのかもしれない。
「有川先生、このあとお時間ありますか?もしよければ公開授業の指導案のアドバイスをもらいたくて・・・。お忙しかったら大丈夫です!」
教務手帳に貼り付けてあるコマを確認する。次の時間は空いているし、授業の準備は朝に済ませているので時間は取れそうだった。
「いいですよ、丁度次の時間は空いているので。どこにしましょう、職員室でも国語科準備室でもどこでもいいですが」
「ありがとうございます!じゃあ、10分後に準備室でお願いします!」
植松先生がペコリとお辞儀をして、足早に自分の席に戻っていった。
「なあ、有川先生よ」
やりとりを耳にしていた隣の席にいる猪又先生が呟いた。
「ワシも一応、国語科教員の端くれなんだが、植松先生に見向きもされていないのはなんでだ?」
「わかりません。俳句が高尚すぎるからではないでしょうか。もしくは大先生なのでまだお願いできる余裕が彼女にないのかもしれません」
「おーそうかそうか、そういうことか。なるほどなるほど。」
角が立たず相手が心地いい気持ちになれる言い方が世の中にはある。実際のところは猪又先生に話しかけると9割以上の確立で俳句の方に話が持っていかれることを、他の先生から耳にしたのだろう。
机に腰をかけると、前の席の浅井先生が参考書の隙間からこちらを見ていてビクりとした。理科教員で独特の不思議なオーラを纏っている。年齢は自分の2~3上だろうから、30になったばかりくらいか。身長が低く目がくりくりしていて幼さがあるが、髭は濃いのでよく見るとおじさんである。後ろ姿は高校生より高校生かもしれない。
「どうしました浅井先生」
「いや、あの、いまちょっと話を聞いててね。僕もその、一緒に植松くんの見ようかな、なんてね」
そうか、浅井先生も植松先生の支持者の一人なのか。たしかまだ、僕と同じで独身だったはずだ。
「別に僕は構いませんが、植松先生に確認された方がいいですね。」
「お、ああそうだね。聞いてみる、よ。」
「はい、そうしてください」
そんなこんなで時間になって準備室に向かうと、植松先生の姿しかなかった。
「あれ、浅井先生も来るとかなんとか言ってましたが」
「ああ、はい。親切にしてもらったんですけど、今日は有川先生に見てもらいたかったので。それにあの、浅井先生理科なので」
体よく断ったのであろう。女性と話すときの浅井先生はもっとオドオドしてしまって不審者のような感じを受けるのを何度も見ているので、その光景が頭に浮かんできた。
「わかりました、じゃあ早速指導案見せてもらえますか?」
指導案を受け取ると、びっしり文字が敷き詰められている。導入から展開まで時間単位でしっかり準備できている。扱う単元は高校1年生の頃に多くの生徒が読むことになる、芥川龍之介の『羅生門』だった。
時間をかけて読み、赤入れをしていく。
「うん、全体的にまとまっていると思います。生徒も主体的に参加できるような授業構成だし、いいんじゃないかな?赤入れしたところは、あくまで自分ならこんな風に発問するよってことが書いてあるので、良さそうだったら取り入れてみてください。」
「ありがとうございます!有川先生も羅生門は何度か授業で扱われているんですか?」
「何度かありますよ。大体1年生担当したときはやります。下人の心情を考えさせたり、まだこの時代の描写なら古文とちがって生徒もイメージしやすいですし。」
「そうですよね、私も高校生の時授業で習いました。この後下人の行方はどうなるんだろうって高校生ながらに考えたの覚えています」
「僕も同じでしたよ。高校生の時、考えました。」
言いながら、高校生の時の自分を思い出していた。当時の僕はこの作品を読んで、下人のその後の行方なんて考えなかったことを覚えている。それよりも、赤く薄暗い月明かりの下に、荘厳としてそびえ立つ大きな門があり、明日生きていけるかも分からないみすぼらしい恰好の男が震えて立ちすくんでいる光景が脳に浮かびあがってきたのだ。老婆が死人から着物をはく奪し、その老婆から下人が剥ぎ取りをする、強者が生き残ることができる世の縮図が綺麗にまとまっていると感じた。ある意味で現代に生きるよりも単純でわかりやすいのかもしれない。
そういえばあの頃から、何か将来に対しての漠然とした不安のようなものを感じていた。そして、あのころからずっと僕は、成長せず変わっていないのかもしれない。ただゆっくりと過ぎていく時間の中で、身を置いて、身をゆだねていただけだった。きっと僕が羅生門の世界にいたならば、老婆に服をはぎ取られた死体だ。もしくは、どこまでも狡猾に、自分が生きるためなら正義も倫理も厭わない小賢しい奴だったかだ。
「有川先生、ありがとうございました。あの、今度もしよかったらお食事行きませんか?私まだ有川先生とそんなにお話させてもらったこともないので・・・。お忙しくなければで大丈夫なので!」
特に予定があるわけではないが、一応だけ考える素振りを見せて答える。
「いいですよ。金曜日の仕事終わりにでも行きましょう。」
チャイムがなり、休憩時間が始まった。
「ありがとうございます、楽しみにしてます。こっちの方もありがとうございます。」
そういって植松先生は指導案を持ち上げてもう一度僕にお礼を言った。
「いえ、公開授業がんばってください。身が空いていれば僕も見学に行きますから」
あっという間に最後の6限の授業が終わり席に戻る。ここから明日の授業の準備や部活動の指導をして、一日が過ぎていく。平穏な日々、平和な日常。自分はこれで満足だった。何事もないのが一番で、何事か起こる前に解決するのが僕なりの信条でもある。ただ、今日に関してはそうもうまくいかないようだった。
「有川先生、外線2番に保護者からお電話でーす」
”狸の玉川”と異名を持つ玉川先生のよく響き渡る声を聞き、電話を取り次ぐ。狸の理由は億説がいくつもあり、真相は誰も知らない。
「ちなみに、どなたの保護者か名乗られました?」
「あさくら、さん?ピリピリしてる感じだったかもしれないよ」
頑張ってね、とにこやかに言われ、大体電話の内容の検討はついた。今朝の頭髪のことで僕に文句があるのだろう。保護者に連絡すると言ったから、先手を打つつもりなのだろうか。
「はい、お電話変わりました有川です。」
「あなたが有川先生?ちょっと今日娘から話しを聞きましたが、どういうことか説明してもらえますか?」
面倒になりそうだ。目を閉じて一呼吸入れる。何事か起こる前に解決しなければならない。