第2話 定着と休息
―――どのくらい眠っていたのだろう……
俺が目を覚ますと
「よかったぁ!!無事に能力が定着するか不安で、身体は回復させたのにいつまでも貴方が目を覚まさないから心配で……。」
そんなことを言って妲己がいきなり抱きついてきた。いきなりそういうことはやめて欲しいこっちも健全な男子高校生なのだ。しかも今までそういう経験は一切なかったのですごくドキドキする。
「し、心配してくれてありがとうございます。それで、俺は一体どれくらい眠っていたんですか?」
俺は冷静を装い自分がどれくらい眠っていたのか聞いた。正確には気絶していた、だと思う。
「半日よ」
半日!?そんなに眠っていたのか……しかし、それほど眠っていたというのに身体にダルさは感じない、むしろ力がみなぎっている感覚がある。
俺が眠っていた間に一体何が起きたんだ……?
「どうやら能力は上手く馴染んだようね。」
能力?一体なんの事だ?
「能力は妖怪や神が持つそれぞれの固有の力のことよ。普通なら人間に能力は無いんだけど、貴方は特殊でもともと持っていた物が異界に来て目覚めた、という感じのようね。」
なるほど……ん?俺が特殊??どこが?
あとさりげなく心を読まれたことについては気にしたら負けだろう。
「貴女は大きい鳥居のある神社を知っているでしょ?あれは普通人間には認識できない物なの。認識できるのは妖怪や神だけ。しかも、認識できたとしても人間は入って来れない様な結界もあったのに貴女は『そこに神社がある』ということを当たり前に認識していたし、結界なんてあることにも気づかず普通に神社の中に入ってきていた。この時点でもう『普通の人間』ではないのよ。」
……何を言われているのか分からない。いや、正直分かってはいるが頭がその事を理解しようとしていない感じだ。あの神社はいつも通学路の脇に『あった』、そう認識できる事自体がおかしいと言われたのだ。
そして、神社に入る事すらも普通は出来ないのだと。
「あの神社は異界と現世を繋ぐ扉の様なものなの。言ったでしょ?あそこに入れるのは妖怪や神だけだって、でも貴女は入れた。普通の人間には絶対に入ることは出来ないのに、…貴女は人間ではあり得ないほどの妖力を内に秘めているのよ。そして、異界に入った影響で能力が覚醒した。今の貴方は能力が目覚めたばかりで力が溢れているのよ。今度その力の使い方を教えてあげるから今はゆっくり休みなさい。」
――様々な情報が一気に入ってきて気になることは山の様にあるが、今はとりあえず妲己の言う通り休むことにしよう。そう思ったら急に眠気がやって来た。
そして俺は布団に倒れるようにして眠った。
こうして平凡な男子高校生だったはずの俺の新たな物語が始まることとなるのだった――
――世界の歯車は廻り始める――