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pandemic〜細菌感染〜  作者: HARU
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第1話3部

第1話3部改稿しました。

 十分程して野戦基地にA L7が到着した。遠隔操作された二〜三人乗りの高速軍用機であるA L7は主に空中戦で使用される兵器だ。


 A L7は音を立ててその扉を開き、私を招き入れる。私はすぐさま飛び乗り通信機の電源を入れ司令室に連絡を入れる。


「こちら神代。A L7の到着を確認。これより特別任務に移る。管制室からの指示を仰ぎたい」

『こちら司令部。神代大佐の登場を確認。これより特別作戦を実行します』


 アナウンスと同時にA L7は宙に浮いた。


『今作戦は迅速なオペレーションが要求されます。敵生命体高度は五千、速度は百で飛行中、現在地からおよそ五〇秒で会敵予定です』


 五千か。なかなか高いな。


「自動追尾による援護は?」

『現在B級弾薬しか積んでいないため効果は薄いかと』


 B級じゃ効果ないかな。


「わかったわ。じゃあ回収だけお願いね」

『了解いたしました』


 通信が切れA L7が急速発進する。マッハ2で飛行する為、身体にかなりのGがかかるが能力の関係上そんなもの意味はない。


 何かを考える暇もなくA L7はあっという間に害虫のすぐそばまで来た。A L7は飛行形態を変え、その場でホバリングする。


『到着しました。いかようになさいますか?』


 害虫との距離はおよそ六〇〇m。この距離でも近づけないことはないけれど、ここで攻撃されないのなら、上を取れそうだな。


「静かに害虫の上四〇〇に回って。気づかれてないわけじゃないと思うからなるべく大回りで。A L7は私の落下に備えてその場待機をお願い」

『了解いたしました』


 A L7は旋回し害虫の上方に進む。


「下の様子はどうなってる?」


 ふと気になり司令部に作戦の進捗を尋ねてみた。


『作戦は順調に進行中です。現在、十一体の駆除を確認。害虫の群れは一直線に居住エリアに向かって侵攻中。およそ十五分後にB-3地点に到達予定です。』


 それなら大丈夫そうだな。

「了解。それまでにどうにかするわ」


 害虫の上方につきその身体を観察する。鳥のような羽毛に肉食獣を彷彿させる四肢、尻尾からはえる爬虫類のようなものを備えたそれは、まるで神話に出てくるキメラに似ていた。


「何度見ても、ステージ3以上は気持ちの悪い姿してるなぁ」


 観察を終え効果の準備をする。


「これより害虫の駆除を開始する。作戦が予定通りということを考慮し迅速に対応する。耐衝撃飛行に切り替えよ」


 A L7の扉を開け位置を確かめる。

 うん、大丈夫そうだ。


『了解しました。ご武運を』


 通信が切れるのと同時に飛び降りる。


 身体を大の字に広げ、風を受け止める。飛行戦闘用に作られたスーツのボタンを押し、飛行モードにする。ムササビスーツの改良版として開発されたため、下降時や上昇気流を受けたときなら少しの間は滑空することができる。


 害虫の視界外から完全に外れ背中に降り立つ。体毛は思いの外硬く、羽毛というよりは化学繊維のようだ。


「何かに使えそうかな。少しだけ採っておこう」


 腰につけた特殊ナイフを抜き出し害虫の体毛を一握り分採取する。


「さてと、意外と静かな飛行をするな、この害虫。まあ、そのほうが好都合だけど」


 害虫の頭部を目指すために一歩を踏み出す。するとその瞬間に害虫が急旋回をした。


「うわっとと。あっぶなぁ。気づかれたかな」


 害虫の体毛にしがみつきことなきを得るがおそらくばれただろう。害虫が私を振り落とさんばかりに体を左右に大きく動かしているのがその証拠だ。


「これは早めにケリつけないと私も下も危ないな。足場固めとこっと」


 体全体を重くするイメージを持つ。すると身の周りに重力場が展開した。これでちょっとのことじゃ振り落とされないな。


 それにしてもよく動くな、こいつ。進路不明になるんじゃないかと思うほどに身体をうねらせながら飛行を続ける害虫。その身体を登っていくと背後に気配を感じた。その瞬間、害虫の尾の部分についていた爬虫類のようなものが襲いかかってきた。


「なっ!」

 

思わず飛び上がってしまう。


「あ……これはまずいな」


 思ったのもすでに遅く、私の体は落下を始めていた。


「A L7――‼︎」


 無線から指示を出す。


『申し訳ありません! 害虫の妨害で回収にはッ』


 回線が切れた。


 やばいやばいやばい。どうするどうする⁉︎ 思考を巡らす。下を見る。ん? ここは確か。


「B-4地雷点火‼︎」

 

司令部に指示を出す。


『B-4地雷点火だ』


 総督の声が聞こえた。

 次の瞬間、地面が凄まじい音を立てて爆発をした。すかさず飛行用スーツを展開する。


「やっぱり! ここにあったか」


 上昇気流に乗り害虫のよりも上に行く。

 害虫の頭上、距離およそ三十。


 ここだ!


「やあぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎」


 かかとに意識を集中し全体重を乗せ、全ベクトルを何十倍にもして害虫の頭に向けて蹴り出す。それに落下の勢いも合わさり、空中にも関わらず大気が振動した。衝撃に耐えられなくなった害虫の頭部は砕け、青色の体液が弾け飛ぶ。そして地鳴りのような轟音とともに害虫もろとも落下する。


「恵莉――‼︎」


 その音を掻き消さんばかりに声を張る。聞こえているかはわからない。だけど、あの子ならやってくれる!


「燃え尽きろぉぉ‼︎‼︎」


 微かにそう聞こえると、先に落下していた害虫の身体を貫くように、とてつもない熱量を持った何かが飛び去っていった。


 そして、そのすぐ後に地上には想像を絶する光景が生まれた。

 白色になりそうなほどの炎の塊が、半球を成すように害虫到達予想地点に佇んでいた。上昇気流に乗って火傷しそうなほどの熱量を感じる。その炎球は居住エリア外壁の頂上に立っていた恵莉が放ったものだった。


「いつ見てもすごい能力だよね、『灼熱炎(インフェルノ)』は」


 落下傘(パラシュート )を展開し、通信機から司令部に連絡を入れる。


「作戦終了。これより検体の採取を行うため、東京都エリアの研究所に派遣要請を出したい。」

『作戦の終了を確認。派遣要請申請完了。お疲れ様でした』


「はぁぁ〜〜」


 安堵と共に深いため息が漏れる。

 危なかった。今回は本当に危なかった。就任早々殉職なんてたまったもんじゃない。


「運に救われたなぁ」


 地上に降り立ち落下傘をまとめる。迎えが来るまでは居住エリアの駐屯所に居ようかな。野外に出ている部下たちにそう指示を出し歩き出す。恵莉が放った炎球はまだその場に留まっていた。

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