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pandemic〜細菌感染〜  作者: HARU
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第1話2部

 用意された軍用機に乗り込む。中には数十人が座ることのできるスペースと銃火器を積んだスペース、そして着替え用の男女別ブースが設けられていた。


 機内に備え付けられた無線通信機の電源を入れる。


「能力者は自動小銃(アサルトライフル)を、非能力者は小機関銃(サブマシンガン)を主とし保険用に散弾銃(ショットガン)を装備。緊急を要する場合、散弾銃(ショットガン)に切り替ろ。能力者は駆除を、非能力者は誘導を最優先。決して居住エリアには近づけさせるな」


 部下に立ち回りを指示し、目的地まで最大限の準備をさせる。


 就任早々部下を死なせたら、大佐としての威厳を失いかねない。人命救助と任務の遂行が大佐の本分なのだから。


 着替えのため更衣ブースに入る。すでに用意された戦闘用のスーツではなく能力者用に作られた特殊スーツに着替え、その上に隊服を重ねる。伸縮性に優れ、耐熱・耐衝撃性もあるこのスーツは害虫との戦闘には欠かせない。この隊服だって防刃性があり対害虫用に作られている。更衣ブースから出ると他の能力者隊員たちが敬礼をしてから入っていった。


 軍用機に乗り込んでから数分が立つと機内に到着を知らせるアナウンスが流れた。


『間も無く目標地点に到着します。準備のほどお願いします』


 それを合図に全員が立ち上がる。


「総員降下準備!降下地点から四方百mを基準に区分け、作戦コードはI(アイ)とし班行動を厳守。補給物資は四方五百mごとに投下予定。奴らの脅威は数だ。だが、今まで通りに動けば問題はない。各自自分の責務を果たせ」


 全員が敬礼をし、返事をした。


『目標地点、到着しました。皆様、ご武運を』


 機内アナウンスから無事を祈る放送が流れる。続いてスライド式のドアが開かれ、風が勢いよく流れ込む。暑さの残る気持ちの良くはない風だ。


「総員降下開始!」


 私の号令に続いて隊員たちが次々と飛び降りていく。その時目の端に空を飛ぶ何かが見えた。


「岡部大尉。アレのステージなんだと思う?」


 指を指して示す。大きな翼を持ち鳥のような風貌だがその胴体には太い手足が生え、尾羽の部分には蛇のようなモノがついている。


「1ではないですね。司令部に解析を申請しておきます」


 小型の円筒状のカメラを取り出し、空を飛ぶ害虫を写真に収める。


 空を飛ぶ害虫か……。珍しいな。


「じゃあ私たちも行こう。上空にも気を付けておかないとね」


 そう言って軍用機から飛び降りる。着地点に選んだのは各地に作られたキャンプ用地だった。地上との距離が近くなり落下傘(パラシュート )を開く。キャンプ用地に降り立つと、既に降りていた隊員たちが仮拠点を建設していた。


「物資は自分の目線の高さまで積め。待機場は軽くで良い。後続の部隊が作りやすいように外郭(がいかく)と床だけはしっかり組め。準備が出来次第中央で整列。以上!」


 先に作られた自分用のテントに入りセットされた簡易棚にバックパックに入れてあった薬品を入れていく。


「失礼します!神代大佐、全班準備整いました!」


 テントの外からそう聞こえ、必要な薬品だけを胸ポケットにしまい外に出る。キャンプ用地の中央では私と岡部大尉を除く総勢八十三名がピタリと整列していた。


「再度作戦を確認する。作戦コードはI(アイ)、無理はせず確実に仕留めていけ」


 隊員たちの前に立ち話す。この瞬間だけは何度やってきても慣れないな。


「では、作戦開始!」


 私の声を合図に隊員が一斉に散開する。


 キャンプ用地には数人の支援隊員だけが残り、後続の舞台のための準備をしている。その時、耳につけた通信機に作戦本部から通信が入った。


『司令部より伝達。陸戦機動艦の到着は三十分後を予定。害虫の目的地到達予想時刻は14:03(ヒトヨンマルサン)。それまで各員作戦行動を継続しそこから殲滅戦に移行せよ』


 通信が切れると腰につけた携帯端末に着信がきた。


「緊急回線? なんだろ」


 疑問に思い、端末を耳に当てる。端末の奥からは聞き慣れた声が聞こえてきた。


「神代大佐。私だ」


 岩谷総督だ。指令室にいるんじゃないのか?


「君の部下が送ってきた害虫の解析結果が出た。レベルは赤。つまりステージ3だ」


 うわ…マジか。


「よって君に駆除を頼みたい。このままでは作戦行動に支障が出るかもしれない。負の可能性はできるだけ排除したい。やってくれるな?」


 そうなるよね。


「了解しました。開放は?」


「今回は無しだ。まだその時ではない」


 その言葉に軽くため息をつく。開放したほうが楽なのになぁ。


「了解です。ではA L7の出動をお願いします」


「わかった。そのようにしておこう」


 そう言われて通話が切れる。ステージ3かぁ、面倒くさいなぁ。でもやるしかないか。世界の平和のために。

 端末をいじり通信機の回線を個別回線に切り替える。


「あー、あー。岡部大尉聞こえてるかな?」


 通信機の奥から返事が聞こえる。


「さっきの害虫ステージ3だって」


 岡部大尉の声には焦りが感じられた。


「だからね、今回の作戦の指揮を岡部大尉に移譲してもいいかな。総督からの特務なんだ。迅速に作戦を済ませたいみたい。やってくれる?」


 何も聞こえない。考えているのだろう。小隊を二つ以上指揮するのは普段少佐以上が行っていることだ。大尉の地位ではまずする事はない。やってくれるだろうか。


 その時、通信機から聞こえてきたのは意外な言葉だった。


『神代大佐。そういう時はお願いではなく命令をすればいいんですよ。』


「そっか。じゃあ岡部大尉、今作戦において第一第二小隊の指揮権を移行する。」


『了解しました。ご武運を』


 そうして通信は切れた。


 今の私にできる事はA L7を待つだけだ。再びテントに戻り飛行戦闘用のスーツに着替える。念のために持ってきておいて正解だった。作戦中は何が起きるかわからないから。A L7到着まであと数分、できる限りの準備をしておこう。


 世界の平和のために。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大変興味深く拝読させていただきました。 SFの軍隊モノで、大きな虫が敵役となると、どうしても『スターシップトゥルーパーズ』を想起してしまいますが、それがむしろ、この物語のどこをフォーカスを当…
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