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約束と契約  作者: オボロ
98/114

#98 お告げ



その日、マリアの夢の中に、女の人が現れた。

昔、日本で見た絵本に出て来ていた衣装と、よく似た衣装を身に付けている綺麗な女の人だった。

長い髪を後ろで纏めている。

美しい着物を身に纏い、薄い衣は羽根が生えているようにふんわりと浮かんでいる。

優しい光に包まれ、柔らかく微笑んでいる。


御弥之様だ。


マリアは、なぜかそう思った。

そして、それは正解だった。



『マリア。』


鈴を転がすような声。


『ようやく、やっと会うことが出来ましたね。あなたの声、届いていましたよ。伝えたいことは山ほどあるのに、なかなか会うことが出来なくて、どうしようかと、ずっと困っていました。やっと会うことが出来て、とても嬉しいです。本当に良かったです。』


御弥之様は、そう言い、嬉しそうに目を細めた。



「………。」


マリアは、何も言えなかった。

声が出ないどころか、どこもかしこも、ピクリとも動かなかった。



『マリア、あなたには思いの強さがあります。夢の中に入る術など無くとも、夢の中に入ることが出来るくらい、あなたの思いは強いのです。今はまだ、そこまでのことは出来ないでしょうが、あなたの思いには、とてつもない強さが秘められている。そのことは、決して忘れないでください。とてつもなく強い思いは、時として凶器となります。これもまた、今のマリアには、まだ早い心配ですが、覚えていてくださいね。それから、そうそう、今のマリアに出来ることも、伝えておかなければなりませんでした。そのために会いに来たのに、わたしったら、ダメね。』


御弥之様はくすりと笑った。

子供っぽい所も残っている可愛らしい人だと、マリアは思う。

御弥之様の話は続いた。


『今のマリアに出来ることで、今のマリアが求めている必要なこと。それは、弓の具現化でしたね。マリアは、悪魔との対決に、弓が必要と考えているようですから、夢の中でも弓を使えるよう、出現させる必要があるのでしょう?方法は簡単です。あなたは思うだけでいい。マリア、あなたの思いは強い。だから、強く思うことで具現化し、手にすることは出来ます。矢もまた然りです。必要だと、本当に思い願うなら、まだ未熟である今のあなたにでも、きっと出来るでしょう。』


マリアは、この時、身体が動き、声が出たなら、大声で叫び、飛び跳ねただろう。


日々、思い願うことは、間違いではなかった。

弓の具現化が可能ならば、とりあえずの不安は払拭できる。

B・Bと、その使い魔達と戦う術は、とりあえず、用意が出来た。


ピクリとも動けないマリアは、心の中で喜んでいたが、御弥之様は、悲しそうな表情になった。


『マリア、わたしは、戦い、傷つけ合う事だけが、解決とは思っていません。相手の心を知り、自分の心を知ってもらい、お互いが理解し合うことで、解決することもあると信じています。相手の心に寄り添う形で、解決することが出来るなら、それが一番いい方法だと思いませんか?』


御弥之様は、鈴を転がすような声で、やさしくマリアを諭した。


マリアは思い出した。

凪が話していた御弥之様は、争うことが嫌いだった。

争いを嫌うあまり、姿を御隠しになってしまった。


御弥之様は続けた。


『考えてみてくれませんか?彼は、生まれた時から悪魔だったわけではなかったはずです。彼には、もう本当に、ほんのわずかな良心も残っていないと思いますか?彼は、本当に人を殺したいと思い、殺しているのでしょうか?契約は、どうして必要だったと思いますか?』


御弥之様の言葉で、マリアはハッとした。


B・Bは堕天使だ。

元々は天使だった。

悪魔になったからと言って、良い心が全く無くなってしまったと、どうして言えるだろうか?

契約のことは、マリアも不思議に思ったことがある。

不思議に思っていたけれど、ずっと先延ばしにしていたことだった。


『マリア、考えてみてください。相手を傷付け、跪かせ、降伏させることは、本当に解決なのでしょうか?考えてみてください、マリア。争わずに済む方法を———考えてみて欲しいのです———マリア———分かり合う方法は———おそらく———きっと、あると思うのです———マリア———考えて——本当の意味での解決を———お願いします———マリア———』


御弥之様の声は徐々に途切れ途切れになって、小さくなっていった。

聞こえなくなる声と一緒に、姿も揺らぎながら薄くなり、やがてはフッと消えて見えなくなった。


マリアは、何も無くなってしまった空間に一人佇み、御弥之様の言葉を噛み締めていた。


弓を具現化できるほどの強い思いを、マリアは持っている。

いずれは夢の中にも入ることも、可能となるかもしれないほどの、思いの強さだと言っていた。

その強い思いは、B・Bの考え方も変えることが、出来るのだろうか。

御弥之様は、それを直接には言っていなかった。

だが、B・Bの考え方を変えることが鍵なのだと、御弥之様が言っていたように、マリアには感じた。



争わずに済む方法を———考えてみて欲しいのです

分かり合う方法は———おそらく———きっと、あると思うのです

考えて——本当の意味での解決を



「………。」


御弥之様がマリアに話してくれた全てのことを、マリアは、目が覚めた後も、はっきりと覚えていた。







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