表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束と契約  作者: オボロ
94/114

#94 模索する守る方法



マリアと凪は、ジェシカの部屋で、ジェシカと過ごすことを許してもらった。

トールは、マリアと凪の為に用意されていた客間のベッドを、ジェシカの部屋へ移動する手伝いをしてから、家に戻った。

バーナードは、夕食を一緒に食べることを勧めたが、トールは、明日も仕事がありますので———と言って、断った。


「マリアと凪の事、よろしくお願いします。」

「いえいえ、こちらがお願いする方です。本当にありがとうございました。」

「ありがとうございました。お気をつけて。」


トールが、バーナードとクレアに頭を下げると、2人は恐縮した。


「マリアを頼む。」

「はい。」


凪の肩を叩き、


「必ず毎日連絡すること。いいね。」


マリアには、毎日の連絡を義務付け、トールは帰って行った。

バーナードとの約束が、マリアを残して行くトールの心配を、少しだけ和らげていた。




マリアと凪は、ジェシカの部屋を使うことが許されたので、トールが帰った後、ジェシカの部屋へ戻り、荷物の整理を始めた。

クレアもジェシカの部屋へ戻って来たが、クレアはジェシカを離そうとしなかった。


「クレアさん、ジェシカちゃんをベッドに寝かせて、少し休んでください。クレアさんにも1人になる時間が必要だと思います。わたしには年の離れた弟が居ますので、大丈夫です。任せてください。」


マリアはそう言って、クレアを促したが、クレアは頑なにジェシカを抱いたままだった。


「クレア……。」


見兼ねたバーナードが、クレアを宥め始めた。


「ジェシカにも1人で居る時間が必要だ。1人では何も出来ない子になってしまうよ。心配なのは分かる。でも、マリアさんが居る間だけでも、命を狙われている子としてではなく、普通の、他の子と変わらない子として接してあげよう?君も休まないといけないよ。ゆっくりと出来る時間を、わたしと一緒に過ごそう。ね?さぁ。」


バーナードの言葉に、クレアはぽつりと涙を流し、躊躇いながらも、ジェシカをゆっくりとベッドに寝かせた。


「よろしくお願いします。」

「ありがとう。ジェシカを頼みます。」


クレアはマリアに頭を下げ、同じく頭を下げたバーナードに連れられ、ジェシカの部屋を出で行った。


ジェシカの部屋には、マリアと凪、そして、ベッドに居るジェシカだけになった。


マリアと凪は、ジェシカの部屋を隅々まで見て回り、B・Bや使い魔達が来た痕跡を探した。


「何も無さそう。」

「あぁ、無いな。」


見た限りでは、B・Bも使い魔達も、ジェシカの部屋には来たことがないと思われた。

ただし、ジェシカの夢までは確認出来ない。


「夢にも現れていないと、信じるしかない。」


マリアの不安を察し、凪が言った。


「そうだね。」


マリアはジェシカの手に触れた。

アルフよりも、ずっとずっと小さな手にマリアの人差し指が触れると、ジェシカはマリアの人差し指をぎゅっと握った。

握られた指を、マリアは左右に動かしてみた。

ジェシカはマリアの顔をじっと見つめ、時折、何かを語り掛けているみたいに、「あー。あー。」と、言う。


「かわいい。でも、痩せているね。」


マリアが知っている赤ちゃんは、皆、丸々としていた。

頬だって腕だって足だって、皆、丸々としていたのに、ジェシカは全体的に細く、華奢だ。


「いっぱいミルク飲んで、いっぱい遊んで、いっぱい寝て、元気で丈夫な女の子に成長して、ママとパパを安心させてあげてね。」


マリアはジェシカに語り掛けた。

こんなにも小さくて頼りない、可愛らしい存在。

直接の身内ではないマリアでさえ、可愛いと思うのだから、親であるバーナードとクレアにとっては、自分よりも大切で、他には代えられない何よりも愛しい存在だろう。

守りたいと思うのは当たり前の事。

マリアだって守りたいと思っている。

でも、使い魔が来ても、ついて行ってはいけないと、教えたところで、まだ理解など出来るはずもない。


「直接現れても、わたし達が居るのを知ったら、連れて行くのを諦めると思うの。わたし達が黙って連れて行くのを見ているとは思わないだろうし、ここで言い争ったりはしないんじゃないかなぁ。そうしたら、ジェシカちゃんの夢の中に現れて、連れて行こうとするよね?やっぱり……。」


マリアは自分で言いながら落ち込んだ。

ジェシカの夢の中に現れたとしたなら、マリアにはどうすることも出来ないのだ。


「凪、おばあちゃんから何か連絡来てない?」

「来ていない。兎に角、今は、蚊取り線香を付けて、神楽を流すしかない。」


凪は、ジェシカの部屋の隅に、豚の形をした陶器を置いた。

中には、火をつけた蚊取り線香が、ぶら下がっている。

テーブルの上に置いたプレーヤーからは、黒石神社の巫女神楽の音楽が流れている。

マリアのベッド脇には、マリアの弓が置いてあり、使わないに越したことはないと思いながらも、矢の用意もしてある。


今現在、マリアがやらなければいけないことは、マリア自身がB・Bに連れ去られないでいること。

マリアも凪も、マリアの夢の中にもB・Bと使い魔達は現れるかもしれないと、考えていた。


クレアは、ミルクを上げる時と、おむつを替える時、ジェシカの所へやって来た。

四六時中一緒に居た時よりも、顔色が少し良くなったように思えた。

夕食も頑張って食べていた。

バーナードが、クレアと一緒に作ったものだと、嬉しそうに言っていた。


「にぎやかな食事は久しぶりだ。さぁ、たくさん食べてくれ。」

「はい。ありがとうございます。」


マリアは、今までのバーナードの家の食卓を考えて、胸が痛くなった。


きっと暗く沈んだ食卓だったに違いない。

もしかしたら一人きりだった可能性もある。


そう考えると、バーナードの嬉しそうな顔にも合点がいった。


夜は、ジェシカを寝かしつけにクレアは来た。

その時はバーナードも一緒だった。

2人はジェシカが眠るまで、ジェシカの顔を眺めていた。

その間、マリアと凪は黙って、親子三人の様子を眺めていた。


この親子が幸せに暮らしていくことを、願わずにはいられない。



おばあちゃん、御弥之様、お願いです。

ジェシカちゃんの夢に、B・Bと使い魔達が現れたなら、わたしと凪も、その夢に入らせてください。

ジェシカちゃんを守りたいんです。

お願いします、おばあちゃん。

お願いします、御弥之様。



マリアは、黒翡翠を握りしめながら、眠った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ