#93 使い魔達の想いと企み
「予定通り、マリアと狐がジェシカの家に来たぞ!」
魔界の城のテラスに着地したカラスが、少年の姿に変わり、慌てた様子で走り込んで来た。
バーナード宅の偵察に出掛けていたクロが、マリアと凪の到着を見て、急ぎ報告に戻って来たのだ。
使い魔達は、互いに顔を見合わせ、目を輝かせた。
マリアと凪がジェシカの元へ来る日を心待ちにしていたのは、バーナードとクレアだけではなかった。
グレース家女児誕生の情報を、マリアに教えようと提案したのはノラだった。
ノラは、五人の中で使い魔歴が一番長い。
つまり、一番長くB・Bと共に生きて来た使い魔だった。
そのノラの提案に、他の四人は最初、不思議に思ったが、最近のB・Bの様子から察したヴィゼとバトの二人は、すぐに賛成した。
ノラとヴィゼとバト、三人の考えは同じだった。
マリアと直接会い、話をしてから、B・Bは少し変わってしまった。
ルイーザは、結果的には連れて行くことが出来た。
しかし、ドロシーが居なかったらどうだっただろうかと、考えてしまうのも確かだった。
夢に現れたのは一度だけだし、これと言った決定打を、B・Bは打って居なかったように思えた。
ルイーザの気を一番引いていたのはジャックで、こちら側ではヴィゼだった。
ミリアのことは、早々に諦めてしまった。
マリアが必死に庇っていたから?
マリアが必死に守ろうとしていたから?
マリアと直接話をする前のB・Bだったら、もっと積極的に対象者を誘っていた。
魅了していた。
グレース家の女の子を胎児の頃に連れ去っているだけでは、今の姿を保っていることは出来ないのだから。
なのに、マリアが画策していることに気付いてからは、ミリアを魅了し誘惑することを止めてしまった。
ミリアの為に作ったマリアの香りにうっとりしたり、こっそりミリアに会いに行ったマリアをこっそり見ていたり……。
更には、マリアを守る狐にイライラして、まるで嫉妬しているみたいだった。
ならば、マリアをずっとB・Bの傍に置いておけばいい。
それが、ノラとヴィゼとバトの考えだった。
元々、B・Bは誰かの命を奪うことにためらいがあり、一度、消滅しかけたことがある。
天使の頃の名残のような感情が、まだあるのかもしれない———と、使い魔達は嘆いた。
そんな時、マリアの祖先、レイモンド・グレースの噂を聞いた。
難病の孫息子を助けるために、黒魔術団を探しているという。
悪魔に助けを求めるつもりなのだと知った使い魔達は、B・Bを救う為、旅人を誘導してレイモンドと接触することに成功した。
契約により、B・Bは確実に命のエネルギーを得ることが出来るようになった。
赤ん坊を連れ出す役目は、使い魔達が自ら進んで引き受けた。
そうして、B・Bは、何もせずとも少しずつ力を取り戻すことが出来た。
使い魔達が子供の姿である訳は、消滅し掛けたB・Bの身体を取り戻すために、自分達の力を分けたからだ。
だが、B・Bは、今の美しい姿に戻ってから、まだ30年と経って居なかった。
それは、生まれて来る前の赤ん坊、胎児のエネルギーばかりを得ていたからだ。
生まれて来てからの赤ん坊を連れ出した方が、得られるエネルギーは大きいのに、B・Bは生ませてはいけないと言い続けていた。
仕方なく、使い魔達は提案をした。
生まれて来る前の赤ん坊を連れていくのは、連続で5人までと決めましょう。
次の1人は、必ず生まれて来るまで待ちましょう。
そして、死を望むだろう人間を見つけたなら、積極的に誘って連れて行きましょう。
どうか、このお願いだけは聞いてください。
そうしなければ、B・Bの身体が持ちません。
お願いです。
どうかお願いですから守ってください。
そうして、やっとここまで復活したのに、このままでは再びB・Bの身体は弱り、消滅する可能性だって出て来てしまう。
美しい見た目が崩れてからでは遅いのだ。
使い魔達の力は、まだ補足されていない。
今また消滅し掛けたとしても、再び、身体を取り戻すだけの力を注ぐことは出来ない。
それは、全ての力を注いでも———だ。
ノラたちは、クロとドドにも説明をして、納得させた。
B・Bの為になる事なのだから、クロもドドも反対しなかった。
後は、ジェシカと一緒にマリアも連れて行くだけだ。
「さぁ、始めよう。」
「そうだね。」
「あぁ。」
「おぅ。」
「うん。」
使い魔達は、計画の実行を、開始することにした。




