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約束と契約  作者: オボロ
72/114

#72 クリスマスカード


クリスマスカードは皆、12月に入ってから届くように送る。

マリアも、11月中にクリスマスカードを作り、12月になったらすぐに出すつもりで用意を始めていた。

しかし、11月の終わり、ややフライング気味にグレース家に届いたクリスマスカードがあった。

真っ赤な封筒に、緑と赤とゴールドの色が入ったリボンが飾られている。

誰が見ても、クリスマスカードが入っていると分かった。


「マリア宛だ。」


トールが言った。


「随分と気の早いお友達だね。」と、クリス。

「きっと待ちきれなかったんだよ。」


アルフは、ぼくと同じだと言わんばかりの笑顔で言った。


トールは差出人を確認し、朔乃に渡す。

朔乃も差出人の名前を確認し、そして、マリアにそっと手渡した。


「ミリアからよ。」

「!!」


マリアは、朔乃から真っ赤な封筒を受け取り、そのまま自分の部屋に向かった。

なぜか、心臓が跳ね上がった。


トールと朔乃が、ひと言も茶化す言葉を発さなかったからかもしれない。

トールと朔乃が、どこか真剣で神妙な面持ちだったからかもしれない。


部屋に入り、机に向かい、真っ赤な封筒の差出人を改めて確かめる。

差出人は、ミリア。

間違いなかった。


「………。」


ペーパーナイフを持つ手が震えた。


「………。」


思い切って封を開け、中から取り出したカードも、確かにクリスマスカードだった。






マリアへ


メリークリスマス、

そして、ハッピーニューイヤー。


安らぎと喜びと幸せが、

マリアとマリアの家族と共に、

ずっとずっとありますように。


また会える日を楽しみにしています。


じゃあね。


ミリア






「………。」


全く普通のカードのように見えた。

何の違和感も無い、ごく有り触れた文面のように思えた。

不自然な言葉は使われていない。

なのに、ミリアからのクリスマスカードを読んだ瞬間、ぞわりとした感覚が全身に走り、鳥肌が立った。

恐ろしいほどの不安が押し寄せて来て、心臓の鼓動が痛いほどに強く鳴った。

心臓の鼓動が全身に響いている。

体全部が心臓になってしまったかのようだった。


「はぁ……はぁ……」


上手く呼吸が出来ない。


「な…凪…、凪……。」


かすれた声で凪の名を呼びながら、マリアは自分の部屋を出た。


クリスマスカードには、もうすぐ来るクリスマスに対しての楽しみと、新しい年への希望が込められている。

だから、読めばワクワクするし、楽しくなるのだ。

しかし、ミリアのカードからマリアが感じたのは、溢れんばかりの悲しみと、苦しいほどの絶望だった。


どうして?


安らぎと喜びと幸せが、マリアとマリアの家族と共に、ずっとずっとありますように。


その言葉が、ミリアとミリアの家族からは、それらすべてが離れてしまったかのように感じてしまった。


なんで?


また会える日を楽しみにしています。


その言葉が、もう二度と会えなくなってしまうような………

会えなくなってしまう可能性があるように思えて仕方がない。


そんなはずは無いのに………

そんなことなど、絶対にあるはず無いのに………


暗くて深い闇のような不安が、マリアを捕まえて離さない。


「凪………、凪………」


もしかしたら、B・Bが関わっているのかもしれない。

とうとう身近な人に、大切な友達に、狙いを付けたのかもしれない。

今度もまた、連れて行かれてしまうのかもしれない。


「凪……、凪…」


マリアは苦しくなり、壁に手をつき、壁伝いにゆっくりと歩いた。


まだ、弓を習っていない。

守れる力は備わっていない。

何の力も得られていない自分に、きっと勝目は無い。


自分の身を守る為だと思っていた。

誰かを守る為だとは、考えてもいなかった。

自分は何も出来ない役立たずだと、あんなにも嘆いていたくせに!


なんて愚かな…・

なんて自分勝手な…


「…はぁ……凪……」


ゆっくりと歩いていた足は止まり、ずりずりとその場に座り込む。

裏庭までの距離を、こんなにも遠いと思ったことは無かった。


まだ間に合うだろうか?


ミリアも

弓も


琴音は知恵を与えてくれるだろうか?

御弥之様みやのさまは道を示してくれるだろうか?

凪は助力ちからを貸してくれるだろうか?


こんなにも馬鹿なマリアを……


どうしよう。

どうしよう。

どうしたらいいだろう。


「凪……、おばあちゃん…………」


呼吸が上手く出来なくて、マリアの意識は遠くなる。

一度にたくさんの感情が溢れ出て、呼吸困難を起こしたらしい。


助けて…。


薄らぐ意識の中でも、感じる不安と恐怖、後悔と絶望は止まらない。


—————ぼく達と一緒に居れば、君の周りに居る人達を守る事が出来るかもしれないよ。


こんな時に、なぜかヴィゼの言葉を思い出した。

悲しみと悔しさも溢れて来た。


助けて…


「みや…の…さま……」。


意識を手放したマリアの頬に、涙が伝った。




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