#68 B・Bの糧
「主様は悪い悪魔じゃない。」
ノラが言うと、他の使い魔達はすぐさま揃って頷く。
「俺らも悪い使い魔じゃない。」
バトが言うと、他の使い魔達はすぐさま揃って頷く。
「だから、ぼく達を嫌わないで。」
ヴィゼが上目遣いで言うと、ノラとドドはすぐさま揃って頷き、クロとバトは、やや引き攣り気味の笑顔を浮かべて、躊躇いがちに頷いた。
今、5人の使い魔達は高架下の芝生に正座している。
その5人の使い魔達のすぐ前で、マリアと凪は腰を下ろしている。
知らない人が遠目で見たら、7人は高架下に座って寛いでいると思うだろう。
しかしながら、マリアと凪の2人は、5人の使い魔達を威嚇していた。
「嫌う?」
凪は首を傾げた。
「嫌わないで?あんな酷いことをしておいて?」
マリアはすぐに聞き返した。
何を言っているのか、意味が分からない。
酷い言葉で罵ってやりたい気持ちだった。
「待て。」
凪が止めた。
「嫌うな——ということは、好かれたい——ということだ。お前たちは、マリアに好かれたいのか?」
「はぁ?」
突然の凪の発想に、マリアは素っ頓狂な声を出した。
これはこれで意味が分からなかった。
しかし、使い魔達は、もじもじとして、少し照れているのが見て取れた。
マリアに怒りが込み上げた。
「嘘でしょ?好かれたいと思っているのに、なぜ、ルイーザを連れて行ったり出来るの?殺したり出来るの?殺したんでしょ⁈ルイーザを自殺に見せかけて殺したんでしょ?ドロシーも一緒に……。」
思い出して、言葉に詰まった。
霧の中に消えた2人の姿を思い出してしまった。
「2人はどうなったの?B・Bは、2人の魂を食べたの?」
「食べる⁈」
「食べるだって⁈」
クロとバトが叫んだ。
他の使い魔達も驚いて目を丸くした。
「そんなおぞましいことを、主様がするわけがない。」
ノラが言った。
「じゃあ、2人はどうなったの?」
問い詰めるマリアの言葉に、少しの間、言い淀んでいた使い魔達だったが、互いに目配せした後、ノラが答えた。
「2人は天に召されたはずだ。」
「天に⁈」
これには、マリアも凪も驚いた。
地獄に落としたならばいざ知らず、天に召したとは驚きだ。
「悪魔が天使の真似事?」
「ふっ……。これだから人間は……。」
バトが鼻で笑った。
「ルイーザは洗礼を受けていたが、ドロシーは受けていなかった。しかし、自殺ならば同じだ。2人は一緒に地獄行き。だけど、情け深い神なら、この哀れな2人をきっと天に召してくださるだろうと、俺たちはそう考えているわけだ。本当に天に召されたかどうかは分からない。知りたければ自分で聞けば?関係者だろう?」
「じゃあ、消滅しただけかもしれないってこと?」
「そこまでは面倒見れないよ。選んだのは彼女たちだしね。」
ヴィゼが言った。
「選ばせたんでしょ?」
「断ることは出来たでしょ?君はそうして来たじゃない。」
全く悪びれず、当たり前のことのように言うヴィゼの言葉に、マリアは悔しさが込み上げて来て泣きたくなった。
「………B・Bは、それで、何を得たの?2人の魂を食べたんじゃなければ、2人から何を得たの?」
声は震え、目の前は涙で滲んだ。
「……魂のエネルギー……」
耐え切れない様子で、クロがぽつりと言った。




