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約束と契約  作者: オボロ
67/114

#67 使い魔達の心配


「いるか?」

「ああ、いる。」


ショッピングモール内の靴屋の陰に身を潜め、こそこそと覗き見しながら話す少年たちが居る。


「居たって、どうするんだよ。」


1人は、目つきの悪い、ウェーブの掛かった黒髪の少年。


「ここで騒ぎを起こすのはまずい。」


1人は、まるで一足先にハロウィンが来たかのような貴族の格好をした少年。


「でも、このままじゃ行っちゃうよ?」


ニキビ顔のぽっちゃりした少年と、


「どうにかして1人になってもらわないと……」


全体的に色素の薄い、琥珀色の髪の少年。


「いいじゃん、もう、引っ張ってくれば。」


最後の1人は、元気だけが取り柄のような少年だった。


そう、彼らは、B・Bの使い魔達だ。

遠巻きにマリアを見ながら、ひそひそと話をしている。

5人は、マリアの様子が気になっていた。


ルイーザとドロシーの結末を、マリアはどう思っているのか。

B・Bのことを、更に嫌う結果となってしまっただろうか。

自分達のことはどうだろう。

嘘つきで酷い奴らだと思われただろうか?

憎んでいるだろうか?

恨んでいるだろうか?

マリアの回りで起きた不幸な出来事は、全てB・Bの所為せいだと思っているだろうか?

好かれているとは思っていないが、嫌われてしまったのではないだろうか?

顔も見たくないと思っているだろうか?

会っても、ひと言も話をしてくれないんじゃないだろうか?


使い魔達は不安だった。


「5人で移動していたら目立つんじゃないかな?」


休日のショッピングモールの中、前方を歩いているマリアの姿を追いながら、少年の姿をした5人の使い魔達は歩いている。


「1人で居た方が目立つと思うよ。」


ドドの不安にノラが答えた。

丁度、通り過ぎた女性が、横目でちらりとノラを見た。


「ああ、お前のその恰好じゃ目立つだろうな。」


バトが皮肉った。


休日のショッピングモールは家族連れでいっぱいだった。

毎年、この時期になると行われるイベントのことは、使い魔達も知っていた。

魔物から我が子を守る為、魔物に扮した恰好をさせていると知って、当時、使い魔達は笑ったものだ。

人間の子供を狙う魔物が、魔物の姿のままで近づくと思うなど、なんと愚かしい考えだと思い、笑っていた。

魔物の姿のままでは、人間の子供が恐れて逃げてしまうだろうに、そのことを魔物が気付いて居ないと思っていることが阿呆らしかった。

人間の子供を狙う魔物は、大概はヒトか動物に姿を変える。

ヒトや動物の姿ならば、恐れられることもなく、容易く連れ去ることが出来るからだ。

逆を言えば、ヒトや動物の姿になれない魔物には、人間の子供を連れ去ることは難しい。

魔物の姿で近づいて、人間が恐れたり、怯えたりする姿を見て喜ぶだけなら、まだ安全な魔物だということを人間は知らないのだろう。

傷付けることを目的にしていないのだから、至って良心的であるのに。

そして、そんな良心的な魔物よりも恐ろしいモノが居ることを、人間は知らない。

姿を変えずともヒトの姿で、だが、魔物よりもたちが悪い。

遺恨や私怨がある亡霊は、その感情の強さによって、特定の人間に酷い災いを与えていることを、使い魔達は知っている。

しかし、人間は、魔物と亡霊の区別がつかない上に、亡霊に仮装は意味のないことだと知らない。

知らずにはしゃいで盛り上がる。

全く哀れなことだと思っていた。


とはいえ、ハロウィンに全く興味が無いという訳でもない。

毎年、仮装した子供達に紛れて、使い魔達はお菓子をもらっていた。

その時代時代で、変わったお菓子をもらうことは、ちょっとした楽しみでもあった。



「あれ?マリアがいない。」


慌てた様子でヴィゼが言った。

洋装店を出た後、大荷物を抱えた凪とマリアは、朔乃に急かされながら、カフェに入った。

確かにマリアも一緒にカフェに入ったはずなのに、テーブル席には朔乃の姿しかなかった。


「狐野郎もいない!」


バトは言い、カフェの入り口付近を確かめたが、人通りが多くて、凪とマリアが店の外に出たかどうかは分からなかった。


「中を覗いて見るかい?」


ノラが言った。


「いや、行くなら、俺か、ヴィゼだ。」

「なんでだよ。」

「ノラの服装は派手すぎる。お前はバカだし、ドドは行きたくないだろう。」

「はぁ?」


バトの意見にクロは納得できなかったが、ドドは反論しなかった。


「ボク…、あんなに人の多い場所、入って行きたくないから……それでいいよ。」

「じゃあ、バトが行くの?それとも2人で?」

「そうだな……」


バトはカフェを見ながら思案した。

すると———



「今はまだどこにも行く必要はないな。」



5人の後ろから声がした。

前方にあるカフェに意識を向けていた為、背後に近づく気配に気づかなかった。


「‼」

「‼」

「‼」

「‼」

「‼」


飛び上がるほどに驚いた5人は、後ろを振り向き、再び驚く。



「しつこく付いて回っていたからには、何か用事があるのだろう?聞いてやる。わざわざこちらから来てやったんだ。有難く思え。」



仁王立ちの凪が見下ろしていた。

凪の後ろにはマリアも居た。



「わたしにも聞きたいことがあるの。あなた達の用事が済んだら、わたしの質問にも答えてね?」



凪ほど冷たく制するような目ではなかったが、マリアの目は、決して優しいとも温かいとも言えない、本心を探るような、疑うような目だった。



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