#66 ショッピングモール
「今年はドラキュラになるらしいわ。」
この日、凪は荷物持ちとして、マリアと一緒に朔乃の買い物に同行した。
向かったショッピングモールでは、何処もハロウィーン用の商品で溢れていた。
日本では珍しいオレンジ色のカボチャ。
規格外の大きさの物から、少し小さめの物まで揃っている。
蝋燭の種類も豊富だ。
色もサイズも形も様々だった。
カボチャや蝋燭は、グレース家ではもう既に用意してある。
お菓子や料理の材料は、用意するにはまだ早いのだろう。
今日は、アルフの仮装の為の物と、家の周りを飾る為の物を、購入する予定であるようだった。
「アルフは海賊になりたかったらしいんだけど、海賊はお化けじゃないでしょって、ママに却下されたらしいわ。」
洋装店の生地コーナーで、楽しそうに布を選んでいる朔乃を眺めながら、マリアが事のいきさつを説明した。
どうやら、ここにアルフが居ない理由が、そこにあるらしい。
「ドラキュラはお化けなのか?」
「そうね。主食は血液だから、普通の人ではないわね。」
「………。」
凪はドラキュラと言う者の姿を想像しようとしたが、人肉ではなく、血液を主食にしている生き物と言ったら、蚊や蛭以外には思い浮かばなくて、人の姿を想像することは出来なかった。
「当日になれば分かるわよ。」
凪がピンときていないだろうことに気が付いたのだろう。
悩む凪を励ますように、マリアが言った。
「………。」
ドラキュラの正体も気になるが、実のところ、凪には他にも気になることがあった。
どこからか、こちらの様子を窺う視線を、ずっと感じていた。
マリアは気付いていない様子だが、その視線は、ショッピングモールに着いてから付き纏い始め、今も続いている。
着かず離れずの距離を保ち、ずっとついて来ているという感じだ。
チャンスがあれば、姿を見たいと思うのだが、振り向くと、それらしき姿は無く、正体は分からないまま。
B・Bではないだろう。
B・Bが近くに現れたのなら、空気の淀みで分かるはず。
ならば、使い魔だろうか?
凪は、使い魔達の姿を思い浮かべた。
5人が5人とも子供の姿をしていた。
ショッピングモールの人ごみに紛れてついて来るのは容易いはず。
しかし、ノラはとても奇抜な恰好をしていたので、人ごみに紛れるのは難しい。
きっと5人ではない。
それでも、子供がこそこそ隠れながら歩いていたならば、不思議に思う視線を集めるのではないだろうか?
では、動物の姿で?
ネコ、コウモリ、カラス、イタチ、カエル
どれも人目を引きそうだ。
「マリア、使い魔が居るかもしれない。決してわたしから離れるな。」
凪は声を潜め、マリアに警告した。




