#61 八方塞がり
「凪はどう思う?」
裏庭の祠の傍で横たわる凪に、マリアは聞いた。
マリアの———どう思う?———は、ミリアのことでは無く、B・Bのことだ。
B・Bは、ルイーザの1件以来、全く現れていない。
使い魔が接触して来る様子も無い。
これはどういうことなのか、マリアは気になっていた。
「どうもこうも、関わって来ないに越したことはないだろう。」
凪はつれなく返事をした。
「それよりも、弓の件はどうした?B・Bが大人しくしているのなら、この機会に動いた方が良いのではないのか?」
マリアが弓を習うべきだと琴音に言われていたことは、当然、凪の耳にも入っていた。
琴音は、弓を勧める理由を、マリアの自信に繋がるからだと言っていた。
マリアの為になると、琴音が判断したのだから、弓を習うべきだと、マリアも思っている。
しかし、弓を習いたいと、トールと朔乃には、まだ話していなかった。
話そうとはした。
何度も、「弓を習いたい」と、言おうとした。
それでも、言うことが出来なかったのは、弓の話をしようとすると、必ずトールと朔乃は巧みに話をすり替えて、マリアに弓の話をさせなかったからだ。
答えをはぐらかしているのではない。
元々の、弓の話をする機会を、トールと朔乃は、マリアから奪い続けていた。
「自分で探すのは無理かな?」
マリアはぽつりと言った。
悉く弓の話をする機会を逃し続けていて、話せる気がしなくなっていた。
どうせまた、話そうとした途端に、全く違う話になって、結局、弓の話は一言も言えず仕舞いで1日が終わってしまうに決まっている。
そう思うと、マリアは、「弓を習いたい」と、トールと朔乃に言える時は、もうずっと来ないんじゃないかとすら思えて来て、弓を習う許可がもらえる自信は、全く無くなっていた。
「どうやって探すつもりだ?登下校以外で、1人になることは許されていないだろう?」
「うー…ん。サークルにアーチェリーがあれば良かったんだけど……。」
ニコラス学園には、たくさんのサークルが存在するのだが、アーチェリーサークルは無かった。
弓道サークルも然り。
サークルならば、トールと朔乃には、弓とは関係のないサークルだということにして、サークルに入る許可さえもらってしまえば良かった。
そうすれば、堂々と学園で弓を習うことが出来た。
凪が言うように、B・Bが関わって来ないこの時期に弓の練習をしていれば、B・Bの動向を気にしながら練習をするよりは身に付くだろう。
だが、実際には、学園にサークルは無いし、トールと朔乃に話すらしていない。
当然、弓を教えてくれるところは、見つかっていない。
トールと朔乃は、話をさせてもくれないし、自力で見つけようにも、当てはないし、方法は無い。
「八方塞がりなのよ………。」
マリアは、凪の毛に顔を埋め、頭を抱えた。




