#59 帰国
マリア達が帰国する日になった。
マリア達が帰国をする日でも、神社を休みにするわけにはいかないので、月城家が総出で空港まで見送りに来ることは出来なかった。
代わりに———と、見送りに来れない人達は、事前にあれやこれやとお土産を持って来ていた。
お陰で、マリア達の荷物は、日本に来た時よりも、ずいぶんと多くなっていた。
「ラフパラーのおじいちゃんのところから帰る時も、すっごい荷物多くなったんだよ。」
アルフが言った。
ラフパラ―の祖父母の所へ行った時の話を、誰もマリアにしなかったので、もしかしたら歓迎されなくて楽しくなかったのではないかと、マリアは心配だった。
心配だったが、本当にそうだったらどう言ったらいいのか分からないので聞くことが出来なかった。
しかし、そう悲惨な旅行ではなかったらしい。
歓迎されなかったら、お土産など持たしてはくれないだろうから。
「そっか。すごいね。」
マリアは安心した。
「それでは、お世話になりました。」
「いえいえ、来年も待っていますね。」
「ありがとうございました。」
「また来年ね。」
「気を付けてね。」
マリア達は、見送りに来ていた月城家の人達に見送られ、空港へ向かった。
空港までは、来た時同様、元暁の運転だったが、車はバンではなく、7人乗りのワゴン車だった。
「マリアちゃんが、あちこち痛そうで可哀想だったからって、望おばさんが貸してくれたんだよ。」
元暁が言った。
望のお陰で、マリア達は全員、座席に座れて、快適だった。
凪は居ない。
凪は、後から祠を通って来ると、言っていた。
日本に来る時、1人だったマリアは不安だったし、つまらなかった。
ウトウトすることはあっても、ぐっすりと眠ることは出来なかった。
しかし、家族と一緒の帰りの機内は、1人ではないというだけで安心出来る。
きっと、ぐっすりと眠ることも出来て、イギリスまでの時間が短く感じることだろう。
また日本に来たいと、マリアは思った。
日本に行くのは夏だけ。
秋の日本も、冬の日本も、春の日本も知らない。
それぞれの季節に、夏祭りのようなイベントが絶対にあるはずだ。
秋の日本も、冬の日本も、春の日本も、いつか見てみたい。
B・Bのことが決着すれば、いつでもどこでも行くことが、きっと出来るようになる。
「………。」
服の上から、ネックレスの黒翡翠を握りしめた。
琴音が守りの念を込めてくれた黒翡翠。
マリアの居場所を、凪に教えてくれる黒翡翠。
黒石神社は、黒い石に縁があるという。
本殿には、黒翡翠の他にも様々な黒い石が奉られていた。
もしかしたら、御弥之様と関係があるのかもしれない。
ならば、この黒翡翠にも、御弥之様との縁があるかもしれない。
そう思うと、マリアは更に力を与えてもらえるような気がした。
大丈夫。
今は夏だけでも充分だ。
また来年の夏休みに行けばいいと、マリアは自分に言い聞かせた。
いろいろと出来ることが増えて、黒石神社に居場所が出来たら嬉しい。
盆踊りが見たい。
巫女舞も、また見たい。
1人で巫女装束が着られるようになりたい。
1人で買い物も出来るようになりたい。
結衣ちゃんと、もっと仲良くなりたい。
朝衣花ちゃんとも、珠央ちゃんとも、仲良くなりたい。
みんなと、日本のどこかへ遊びに行きたい。
色々考えていると、どんどん楽しみが増えて、マリアは嬉しくなった。
「楽しかったね。来年はもっと楽しいといいね。」
トールと朔乃が複雑そうな顔をしていたことに、マリアは気付いていなかった。




