#47 新たな目的
朝は7時に起床。
顔を洗い、身支度を整え、琴音と一緒に朝食を食べる。
朝食の用意をするのは琴音の役目で、食後の洗い物をするのはマリアの役目。
洗い物が終わる頃になると、通いで来ている望が到着して、掃除や洗濯をする前に、マリアが巫女装束に着替える手伝いをしてくれた。
黒石神社に来て1週間も経った頃には、それが日課のようになっていた。
望は神社の仕事よりも、琴音の身の回りのお世話をしていることが多い。
掃除をしたり、洗濯をしたり、昼食や夕食の用意をしたり……。
一緒に暮らした方が楽であるような気もするが、望には望の都合があるらしかった。
「最初の頃より、随分、上達したわよ?」
マリアが着た白衣を整えながら、望が言った。
「そうですか?でも、1人で着られるようになる気は、まだしません。」
マリアは、情けない顔をした。
襦袢と白衣は、1人でもなんとか着られるようになった。
だが、ただ着ることが出来るだけで、その後、綺麗に整えることは、どうしても上手く出来なかった。
白衣を綺麗に整えなければ、袴を穿いた後の仕上がりが全く変わってしまう。
みっともない姿で本殿に向かったならば、絶対に凪が気付いて静かな怒りを向けて来るに決まっている。
『そんな格好で本殿に入るつもりか?』
『御弥之様を侮辱しているのか?』
凪のしかめっ面が見えるようだ。
なので、まだまだ望の手直しが必要で、袴を穿くのも手伝ってもらわなければならなかった。
「来週、みんな、こっちに来るんですってね?」
「はい。」
昨日、マリアの母・朔乃から、来週、全員でこっちに来ると、連絡があった。
琴音と話した後、望とも話し、マリアの様子を色々聞いているようだった。
琴音も望も、「大丈夫」「心配ない」を繰り返していた。
心配をさせてしまっていたのだろう。
頼りにしていないのではなく、心配をかけたくなかっただけなのに、結局は心配をさせてしまった。
マリアは、自分の我儘で周りを振り回してしまったことを、申し訳なく思った。
それでも、ラフバラーの祖父母の所へ行ってもらうことにしたことは間違っていなかったと思っている。
マリア一人が行かなかったことには、いろいろ思うことはあったかもしれないが、一緒に行った方が気まずい思いをするだろうことは分かっていたので、マリアは、自分一人が行かなかったことにも後悔していなかった。
いつか、一緒に行けるような、そんな日が来たなら、一緒に行きたい……。
「………?」
ふと思って疑問を持った。
そんな日とは、どんな日だろう?
B・Bから…悪魔との契約から解放された日だろうか?
解放される日は来るのだろうか?
解放されるとしたなら、それはどんな時だろう?
「それまでに1人で着られるようになるといいわね?」
「え?」
励ますように言った望の言葉で、マリアは現実に引き戻された。
「みんなが来た時、マリアちゃんが1人で巫女装束を来ているのを見たら、きっとみんな驚くわよ。」
袴の帯をぎゅっと締めながら、望はにこやかに言った。
「イギリスから1人で着て、毎日本殿の清掃をしているなんて、偉いわ。その上、巫女装束まで1人で着られたなら、みんなすごいって思うわよ。」
マリアは、本殿の清掃に関して『偉いわ』と言われてしまうと、少し違うような気がしたが、巫女装束を1人で着られるようになることについては、是非、そうなりたいと思った。
1人で先に日本へ来て、得たことが一つでもあったことを、見える形でトールと朔乃に知らせたい。
心配はさせてしまったけれど、得たものが一つでもあったならば、安心してくれるに違いない。
1人で日本に行かせたことは間違いではなかったと、思って欲しいし、思ってくれたなら嬉しいと、マリアは思った。
「そうですね。1人で着られるように、もっともっと頑張らなくちゃ、ですね。」
「そうそう、その意気よ。」
マリアは、俄然、やる気を出した。




