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約束と契約  作者: オボロ
26/114

#26 凪の心配


「使い魔が居たな。」


家に戻ったマリアが、いつものようにほこらの前で手を合わせ、琴音に今日の報告をしていた時、マリアを眺めていた、大きな狐の姿のなぎが、ぼそりと言った。


「………?」


マリアが不思議に思い、凪を見ると、種を明かすように、凪は説明を始めた。


「ノーラと呼ばれていた少女の傍に、ヒトの姿をしたコウモリが居た。あれはB・Bの使い魔だ。この間、マリアに接触して来たネコと同じだ。」

「ノーラって?」

「マリアの同級生だったか?以前、声を掛けて来ただろう?ルイーザと言ったか。あの少女が、今日、当たり散らしていただろう?大声で。相手の少女がノーラと呼ばれていた。一緒に居た男はジャックと呼ばれていたようだが?」

「凪!あそこに居たの⁈」


マリアは驚いて身を乗り出した。

凪は平然と言ってのけた。


「当然だ。使い魔が接触して来たというのに、傍を離れるはずがないだろう。」

「じゃあ、なんで声を掛けてくれなかったの?」

「クリスが一緒ならば安全だと判断した。実際、ふらふらと近づこうとしたお前を止めていただろう?」

「ふらふら近づいてなんかいない!」

「あのまま放っておいたらそうなった。」

「~~~~!!」


ああ言えば、こう言う。

マリアは、言い返す言葉が見つからなかった。

しかし、ふと、思い浮かんだことがあった。


「あのさ、今日居た使い魔って、ノーラって子に接触したってことだよね?B・Bはノーラを狙っているの?」

「狙っているのかどうかは分からないが、目的があるとすれば、ノーラにではなく、どちらかと言えば、ルイーザだろう。」

「どうして?」

「様子を見ていた限り、ルイーザの感情を揺さぶるために、ノーラと接触した感があった。」

「………?どういうこと?」


マリアには、凪の説明が難しくて、理解できない。

凪は、呆れたように息を吐き、マリアを包み込むように身を丸くして、目を閉じた。


「とにかく、お前は関わらないようにすればいい。ルイーザにも、ノーラにも。ついでに言えば、ジャックにもな。」

「………」


マリアは、納得がいかなくて、無言で凪の顔を見つめていたが、凪は、もう何も言わなかった。

目を閉じて、眠ったように動かない。

マリアも、凪にれて、目を閉じた。


関わったところで、何もできない。

悪魔に命を狙われているのに、関わっては、逆に迷惑をかけてしまうだけだ。

普通の人とは違うところを知られてしまい、気味悪く思われてしまうかもしれない。

迷惑をかける上に、気味悪く思われるなんて、嫌だ。

だから、関わってはいけない。

関わるべきではない。

わたしは、普通の人とは違うのだから………


凪の毛並みは柔らかく、ぬくもりは心地よく、マリアは、いつの間にか眠っていた。




「………」


凪は、マリアの寝息を感じて、目を開けた。

見下ろせば、スヤスヤと眠るマリアの姿が見えた。


全てを受け入れるには、マリアは、まだ幼いと感じた。

いずれは、神の代行として、黒石神社をつかさどる者にならなければならない。

とはいえ、今は、まだ14歳。

つい、この間、悪魔に命を狙われていると知らされ、ようやく、その事実を受け入れられるようになったというのに、自分以外の者のことまで背負うとなったら、つぶされて、壊れてしまうに違いない。

だから、凪は、マリアには、まだ自分のことだけを考えていて欲しかった。

家族のことならまだしも、友人のことには、関心を持って欲しくない。

幸い、幼い頃の経験で、あまり他人に関わらないようにする癖がついていて、今までは、凪が心配するようなことには、ならずに済んでいた。

しかし、自分の命を狙っている悪魔が絡んでいるとなったら、さすがに、知らぬ存ぜぬを通すことは難しいだろう。


どうしたものか………


凪の悩みは、マリアを想い、マリアの為にしていることでも、マリアが悲しみ、辛い思いをするのでは、マリアの為とはいえないかもしれないという、複雑なものだった。


琴音に相談してみるか?


「………」


だらしがない———そう言って、鼻で笑う琴音を想像してしまい、凪は頭を抱えた。






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