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約束と契約  作者: オボロ
25/114

#25 遭遇


マリアは、ルイーザのことが、ずっと苦手だった。

何にでも首を突っ込み、根掘り葉掘り聞いた挙句あげく、実際よりも話を大きくして、吹聴して回る。

知られたくない秘密があるマリアにとって、絶対に関わって欲しくない、絶対に関わってはいけない同級生がルイーザだった。


その彼女の様子が、少しずつ変わっていったのは、イースター休暇の後。


他校の男子生徒へのストーカー行為。

他校の女子生徒との衝突事故。

虚言。

妄想。

不登校。

親からの虐待。


次から次へと流れてくる噂は、あまり良くないものばかり。

噂する側から、される側に、変わってしまった。


「ここで事故があったのよね?マリアの同級生と…確か、アニス女子学院の子だったかしら。」


運転をしながら、朔乃さくのが言った。

丁度、ルイーザがノーラと衝突事故を起こした丁字路を、曲がる所だった。

事故からは、もう1か月以上も経つのだが、たいして広くもない、車がすれ違うのがやっとぐらいの道路に、事故直後には救急車が入って来た為、この付近一帯が酷い渋滞になったことを、朔乃は思い出したらしい。

今日は、アルフのサッカークラブの日なので、クラブが終わるまでの時間を、マリアとクリスは、パーカー図書館で勉強をしながら過ごしていることになっていた。


あの日も、アルフのサッカーの日だった。

だが、マリアとクリスは一緒には行かなかったので、パーカー図書館に寄る必要はなく、この道を通ることはなかった。

それでも、渋滞で車は動かず、通常ならば10分ほどで帰れる道のりを、1時間も掛けて帰って来た2人の様子は、今も覚えている。

サッカーの練習と渋滞に疲れたアルフは、機嫌が悪いし、運転と渋滞で気を張り続けた朔乃さくのは、ぐったりしていた。

気の毒に思ったトールが、夕食の用意をするほどに。

そして、翌日になって事故の話を耳にしたらしい。

マリアと同じ学園の生徒で、しかも同級生の事故と知って、朔乃もトールも心配していた。

ルイーザが、今でもだ登校していないことも、おそらく耳に入っているだろう。

それくらい、ルイーザの噂は広まっている。


「じゃあ、帰りに寄るからね。ちゃんといい子で勉強しているのよ。」


パーカー図書館にマリアとクリスを降ろした後、朔乃はアルフを乗せたまま、サッカークラブへ向かった。

マリアとクリスは朔乃の車を見送ってから、図書館の中へ入った。


パーカー図書館は古くからある図書館で、あまり大きくはないが、温かみがあり、居心地の良い図書館だ。

幅の広い長テーブルが幾つも置いてあり、小さな子供からお年寄りまで、ゆっくりと座って本が読める。

勿論、勉強することを目的にして、図書館に来ている学生もたくさん居た。

マリアとクリスも、テーブル席に並んで座り、勉強道具を広げた。

マリアは、分からないところをクリスに教えてもらい、クリスは、参考書や図書館の本などで調べていた。



「それが、わたしを悪者にしているって言うのよ!どうして嘘をいたの?琥珀色の髪の男の子のこと、本当は見たんでしょ?サッカーボールだって、本当はあったんじゃないの?なんで見ていないなんて嘘を吐くのよ!そんな卑劣なことをしてまで、ジャックの気を引きたかったの?なんて浅ましい女なの!恥を知りなさい‼」



「———っ⁈」

「———えっ⁈何?」


突然に聞こえた大きな声に、マリアは驚いた。

クリスも驚いたように、声のした方を見ていた。

周りに居た人たちも驚いていて、席を立ち、誰が叫んでいるのかを見ようとしている。



「静かにしなさい!ここをどこだと思っているんだ‼」



職員なのか、警備員なのか、怒っている男性の声も聞こえた。



「放しなさいよ!なんでわたしがこんな目に合わなきゃいけないのよ!悪いのは、あの女じゃない!あの女はわたしをおとしいれたのよ!放しなさいったら!放しなさいよ‼」


大人おとなしくしなさい!暴れるんじゃない!」



「ダメだよ、マリア。座って。」


無意識に立ち上がり、歩き出そうとしていたマリアは、クリスに引き留められた。

マリアの腕を掴んで、クリスは首を振っている。


行ってはダメだ!


そう言っているみたいに。


「………」


マリアは、大人しく座った。

ざわつく気持ちは収まらず、胸の鼓動は速くなったままだった。


大声を出していた少女の声が、ルイーザの声だったような気がしてならない。


もしもルイーザだったら………


何かが出来るとも思えず、それでも、気になって仕方なかった。







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