表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束と契約  作者: オボロ
23/114

#23 恐ろしい考え


強い怒りと決意と共に、パーカー図書館の事務所に連れて行かれたルイーザは、数人の警備員と図書館の職員に見張られながら、グリッティの到着を、ひたすら待っていた。

まるで取り調べのように、名前と住所と電話番号を聞かれ、親が来るまでは帰さないと、言い渡されてしまった。

カウンセリングの後、逃走したルイーザに、グリッティが怒り狂っているだろうことは明白めいはくで、しかし、ルイーザは、ノーラへの怒りで、グリッティの怒りに対しての恐怖は、感じていなかった。

到着したグリッティは、予想通り怒っていたが、それでも、警備員や図書館の職員の目の前で、怒り狂う姿は見せられないと思ったのか、怒りに震えながらも、必死に平静を装い、娘の不祥事ふしょうじに対して、何度も深々と頭を下げていた。

オルコット家からも、いかりの連絡は入っていたようで、パーカー図書館を出た後、グリッティはルイーザを連れて、オルコット家に向かった。

ルイーザは、ますます、ノーラへの怒りをふくらませた。


今度は親を使うのか!

親を使って、自分を正当化させるのか!

嘘をいたくせに謝らせて、また悪者にするのか!


オルコット家でも、グリッティは、何度も頭を下げて、謝罪をしていた。

ルイーザは、無理やり頭を下げさせられたが、ひと言も言葉を発さなかった。

ノーラは出て来なかった。

怖がって出て来ないと、オルコット夫人は言っていたが、ルイーザは信じていなかった。


きっと陰から見ている。

陰から見て、笑っている。


「いろいろと大変だろうことは承知していますが、くれぐれも目を離さないようにしていただかないと。今後は気を付けてくださいね。次は無いと思ってください。同じようなことがあれば、次は弁護士を通させてもらいます。よろしいですね?」


オルコット氏も厳しい口調で、グリッティに念を押す。

グリッティは、ひたすらに頭を下げていた。


「申し訳ありません。本当に、申し訳ありませんでした。」


隣で頭を下げているだけのルイーザは、自分が病人扱いをされているのを感じていた。


精神をんでいる娘を持ち、大変な思いをしてるだろう、可哀想なベトソン夫人。

それでも、きちんと監視するのが親の役目ですから、次は慰謝料を請求します。


オルコット氏は、確実に、そう言っていた。

ルイーザの、ノーラへの感情は、怒りから憎しみへと変わりつつあった。


家に帰ると、父・バーナードが会社を早退して帰って来ていた。

エドナを連れて行くわけにはいかず、だが、1人で家に居させるわけにもいかないので、グリッティはバーナードに連絡したらしい。

バーナードは神妙な面持ちで、グリッティとルイーザを迎えた。

何も知らないエドナだけが、いつもと変わらない態度だった。

ルイーザに、あまり関心が無く、いつも通りピアノを弾いている。

ルイーザは、夕食まで部屋にいるように言われ、いつもよりも会話の少ない、静かな夕食を済ませ、夕食の後も、すぐに部屋へ戻るように言われた。


「これからは、必要以上に部屋から出ないようにしなさいね。今後のことはドクター・ケイリーと相談してから決めます。」


グリッティが言った。

結局、一度もグリッティは、ルイーザをしかりつけなかった。

グリッティもバーナードも、ルイーザを、まるでれ物のように扱っていた。

触れると破裂するのではないかと、思っているみたいだった。

これは、最悪、入院もありえる———と、ルイーザは感じた。


ベッドに腰かけ、窓の外を眺める。


今頃、ジャックは何をしているだろうか?

だまされているとは知らず、ノーラのことを心配しているのだろうか?

ノーラにとっては、この状況も計算のうちなのだろうか?

どこまでおとしいれれば満足するのだろうか?


ノーラの、ルイーザをおとしいれようとする執着心は、異常だ。

どうして、そこまでする必要があるのか?———と、ルイーザは考えた。


ジャックの気を引くため?

ジャックの気を引くために、なぜルイーザをおとしいれる?

邪魔だから?

ジャックの気を引くには、ルイーザが邪魔だから。

ジャックを守れるのは、ルイーザだけだから。


そうだ!

そうなんだ‼


やはり、ジャックを守るのは自分だと、ルイーザは固く心に決めた。

そのためには、ノーラを排除しなければならない。

ノーラの計画をつぶす必要がある。


どうすればいい?


ノーラから引き離そうにも、ジャックはすっかりだまされていて、ルイーザの言葉には、耳をかたむけてくれない。

ルイーザをにらむジャックの目を思い出すと、ルイーザは悲しい気持ちなった。


ノーラが居なくなればいいのに………

ノーラなんて居なくなってしまえばいいのに………

そうすれば、きっと、ジャックの目は覚める。

目が覚めれば、きっと、ノーラに騙されていたことにも気付くだろう。

気付けば、きっと、わたしを見てくれる。


ノーラが居なくなれば………


ノーラさえ居なくなれば………




<<ガタンッ!>>


風で窓が音を立てた。


「———っ‼」


ルイーザは、びくりとして、我に返った。

自分が今、とんでもなく恐ろしいことを、考えていたことに気が付いた。


居なくなればいいだなんて………


自分が考えてしまったことなのに、自分の考えであることが、信じられなかった








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ