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約束と契約  作者: オボロ
21/114

#21 溢れ出した怒り


「………。」


ルイーザは、ずっと考えていた。


琥珀色こはいくいろの髪の、あの少年は、誰が何と言おうと、存在していた。

一緒に歩いて、パーカー図書館に向かった。

途中で出会った人や、すれ違った人は、確かに居なかったけれど、こちらが気付かなかっただけで、遠くからでも見掛けた人は、絶対に居ると思った。

絶対に居るのに、可愛らしい少年と歩いていたことをねたんで、名乗り出て来てくれないに違いない。

そんな少年は居なかったことにしてしまえば、ルイーザは嘘つきになる。

ルイーザを嘘つきにして、ねたましさをまぎらわせることにしたのだろう。

きっとそうだ!

そうに違いない‼


ルイーザにとって、パーカー図書館に向かう途中の、ルイーザ達の姿を見た人達の嘘は、それほど重要ではなかった。

それだけうらやましかったのだろうと思えば、気の毒にすら思うことが出来たからだ。

事故の後の目撃者の証言も、事故があった後の騒然とした状況の中では、見落としたとしても仕方がないと思えた。

しかし、ノーラの証言に対しては違った。


琥珀色の髪の少年は居なかった。

ニキビ顔のぽっちゃりした少年も見ていない。

サッカーボールすら無かったという。


彼女は、なぜそんな嘘を?


ルイーザは納得出来なかった。


退院してから知ったことだが、ノーラと一緒にロビーにいた少年は、ノーラのいとこだった。

ビルという名で、マレット・スクールの11年生。

ジャックの同級生で、ジャックと同じサッカークラブに所属している。

そして、サッカーの応援に来たノーラが、ジャックに一目ぼれをして、それ知ったいとこのビルは、ノーラの為に、ノーラとジャックをくっ付けようとしていたらしい。

つまり、ジャックはノーラと付き合っているわけではなかった———という事。

なのに、事故をきっかけにして、2人は急接近してしまった。

その様子は、ルイーザも見ている。

ロビーで見た2人の様子は、ルイーザには耐えがたい光景だった。

今では、通院時にジャックも付き添っているというのだから、ルイーザの心情は穏やかではない。


事故の後、登校して来たルイーザに、さも心配している風を装いながら近付いて来て、ジャックとノーラの関係を得意げに話して来たのは、ゴシップクラブのエヴァとジェイミーだった。

いつ調べたのか、どうやって知ったのか、ビルの事やクラブの事など、事細かにルイーザに話して聞かせた。


「残念だけど、2人はもう親公認の仲だから。もう、諦めてくださいね?」

「しつこく付きまとっちゃダメですよ?ベトソン先輩。」


今にも笑い出しそうだった2人の顔は、思い出すだけでも腹立たしい。


どうしてこんなことになってしまったのだろうか?


ルイーザは、事の始まりを考えた。


塾帰りのジャックに、会いに行っていることが噂になった。

イザベラがひがんで、ジャックのことを調べろと言った。

ジャックには、付き合っている子がいるとか、好きな子がいるとか言われて、それを調べるのが嫌で、悩んでいたところに、琥珀色の髪の少年が話し掛けて来た。

その少年をパーカー図書館まで案内することになって、サッカーボールを拾ってと言われて………。

そうだ。

それで、あの少年がサッカーボールを追いかけて、それを止めようとしたらノーラとぶつかってしまった。

なのに、ノーラは、そんな少年は居なかったと言って、ルイーザを嘘つきにした。

そのせいで、ルイーザはカウンセリングを受けることになって………。

まるで、精神状態が異常であると、思われているみたいだった。


どうしてノーラは嘘をいたの?

なぜ嘘をかなければならなかったの?

ノーラが、あの男の子を見ていないはずはないのに!

絶対に見ているはずなのに‼

全部、ノーラのせいだ‼

ノーラの嘘のせいだ‼


ルイーザの中で、ノーラへの怒りが膨れ上がり、どうしてもノーラに一言言ってやりたい気持ちになった。


嘘つきだと。

嘘つきはノーラだと。

そんな嘘をいてまで、ジャックの気を引きたかったのか?———と。


しかし、ルイーザがノーラに会いに行くことは出来そうもなかった。

事故以来、親の監視が厳しくなったからだ。

誰も見ていない少年をかばったと言い、追いかけたと言っているサッカーボールは見つからない。

学校へ行っていないルイーザは、今、カウンセリングに行く以外で、家を出ることが許されていなかった。


それもこれも、ノーラが嘘をいたからだ‼


ルイーザの頭の中は、ノーラへの怒りでいっぱいだった。








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