#13 ゴシップクラブ
ゴシップクラブは、北棟にある巨大な図書室の隣にある。
クラブ員は8人で、全員が女子生徒。
9年生はルイーザが1人きりで、8年生が2人、10年生が3人、今学期で最後の11年生が2人いる。
8年生の2人は、クラブ内では一番年下になるのだが、2人とも11年生の妹なので、10年生の3人と、とても仲が良かった。
そうなると、9年生でも1人きりのルイーザの立場は弱い。
ルイーザは上級生の気を引くために、色々と努力をしなければならなかった。
「あら、今日のおやつはルイーザが用意したの?」
「はい。昨日、駅前まで行く用事があったので、『フラフィ』に寄ったんですよ。たくさん買ったのでお裾分けです。」
テーブルの上には、色とりどりのマカロンがお皿に並んでいる。
最近、駅前に出来たばかりのマカロン専門店『フラフィ』は、若い女性に人気があり、毎日行列が出来ている。
「わぁ、美味しそう!」
「『フラフィ』のマカロンじゃん!」
8年生のエヴァとジェイミーが部屋に入ってくるなり、上級生よりも先におやつを物色し始める。
ルイーザは勿論、10年生のジーナ、マッジ、メーガンが同じことをしたなら、11年生のイザベラも、フェリシアも、黙ってはいないだろうが、妹達のすることには寛容だった。
「二人とも、お行儀が悪いわよ。」
「早く荷物を置いてきなさい。」
口では注意をしているが、笑顔で妹達が選んでいたマカロンを取り分けている。
それからイザベラとフェリシアが選んで、その後に10年生3人が選び出す。
ルイーザは人数分の紅茶を用意して、それぞれの前に置いてから席に着き、残ったマカロンを自分の小皿に移した。
11年生は今学期で居なくなる。
しかし、同じ学校に進学するだろう10年生達にとっては、先輩、後輩の関係性が終わるわけではないので、11年生の妹である8年生に強く言うことは出来ない。
そして、ルイーザが11年生になった後も、エヴァとジェイミーの、ルイーザへの態度は、きっと変わらないだろう。
ルイーザを先輩とは思わず、雑用を押し付け、自分たちは好きなことだけをして、楽しく過ごそうとするに決まっている。
そんなことはさせない!
例え、進学する学校は同じでも、ルイーザが入学した時には、もう11年生は卒業しているはずなのだから。
ルイーザの、今のゴシップクラブの楽しみ方は、エヴァとジェイミーを顎で使う自分の姿を想像することだった。
「今日は、誰が報告をしてくれるのかしら?」
紅茶を飲みながら、クラブ長のイザベラが、クラブ員全員の顔を見回した。
ゴシップクラブの活動は、『校内外にある噂話の収集、及び、報告をして、みんなで面白おかしく、お話しましょう』というものだ。
収集は各自で行い、報告も出来る者がするという、実に大雑把なルールでの活動をして来た。
そんな大雑把なルールでも、今まで問題なく活動出来たのは、クラブ員全員が噂好きで、話題に事欠くことが無かったからだ。
この日は、エヴァとジェイミーが、何処からか仕入れて来た噂話が報告された。
「私たちは、『マレットスクールの生徒を、我がニコラス学園の生徒がストーカーをしているらしい。』と言う噂話を入手しました。」
「マレットスクール?確か、男子校だったわね。」
「はい。駅前の塾に通っているそうで、その塾の帰りを待ち伏せしているとか。ニコラス学園とマレットスクールの生徒が、多数、目撃しています。」
報告していたエヴァとジェイミーが、意味ありげにルイーゼを、ちらりと見た。
ジーナ、マッジ、メーガン、フェリシアも、ルイーザを見ている。
ルイーザは、誰の目とも目を合わさずに平静を装ったが、ティーカップを持つ手が小刻みに震えていて、動揺は隠しきれていなかった。
「つまり、他校の男子生徒を、我が学園の女子生徒がストーカーしている———と?余程の美男子か、良家のご子息か………。」
イザベラは、ルイーザを一度も見ずに、話していた。
視線は上の方へと、ずっと向けたまま、何かを考えながら話している風を、ずっと続けている。
「そんなに良い物件、誰の目にも止まらず、ずっと空いたまま、なんてこと、あるのかしら?」
「………?どういうこと?」
フェリシアの絶妙な質問に、イザベラはフッと微笑み、そこで初めてルイーザを見た。
「どうして、その人に彼女がいないと思うのか、わたしには分からない。そうは思わない?ルイーザ。」
「———‼」
名前を呼ばれて、咄嗟に顔を上げたルイーザは、必然的にイザベラと目が合った。
目が合ってしまったからには、反らすことは出来なかった。
イザベラは、ルイーザの目を見つめながら、有無を言わさぬ口調で続けた。
「調べてきて、ルイーザ。ストーカーをされているという、マレットスクールの男子生徒のこと。付き合っている女性、もしくは、好意を寄せている女性は、本当に居ないのか。居ないのなら、なぜ居ないのか。来週は、おやつの用意なんてしなくていいから。ぜひとも話題を提供して頂戴。よろしくて?」
「………。」
まるで、蛇に睨まれた蛙だった。




