#11 待望の新人
東棟のテーマは“遊び”だ。
エリアは種類ごとに分かれてはいるが、ゲームセンター、テーブルゲーム、ブロック、異文化、その他———と、エリアの数が多い上に、クラブの数もたくさんあって、何処までがどのクラブなのか、一目ではわからない部屋もあった。
バトが向かった場所だからと、ヴィゼは安心して東棟に入ったのだが、東棟の中は、クロの気を引くもので溢れている。
チェスやオセロは勿論、異国の遊びだという『将棋』や『囲碁』にも、クロは引き寄せられてしまうし、『独楽』や、『けん玉』、『ヨーヨー』にも、興味津々だ。
「だめだよ、クロ。ゴシップクラブを探すのが先だよ。」
目新しいモノを見つける度に、クロは、ふらふらっと、その部屋に入ってしまう。
その都度、引き戻さなければならないヴィゼは、バトについて行くことが出来なかったからとはいっても、クロに付くことにしたのは間違いだったと、後悔していた。
「「おぉーっ‼」」
「「———⁉」」
二つ先の部屋から、どよめきが聞こえた。
記録的な何かが起こったらしい。
廊下に居た数人の生徒達が部屋の中に入って行くのを見て、クロとヴィゼも中に入ってみることにした。
そこはレゴクラブだった。
小さなブロックを組み合わせて、色々なモノの形を造る。
想像と発想と工夫を駆使して、様々なモノが出来上がっていた。
その部屋の中の一か所に人だかりが出来ている。
「すごいよ、君。こんな短時間で、よくそれだけのものが作れたね。」
「君、何年生?まだ、7年生か、8年生でしょう?すごいわね。」
「ぜひ、レゴクラブに入ってくれ。」
やけに、ちやほやしている声が聞こえた。
どんな奴が、どんなものを作ったのか、クロとヴィゼは興味を持ち、人だかりの中を覗いた。
7年生か、8年生か、と、聞かれていたぐらいなので、小柄な少年だった。
少年の前には、レゴで作ったものらしい城が置いてある。
彼が作ったものなのだろうが、自分たちが暮らす魔界の城に、そっくりなそれを見て、クロとヴィゼは驚いた。
「おい、お前———っ‼」
クロは、ほとんど反射的に、素早い動きで人だかりを掻き分け、前へ出た。
「ちょっと、待てって———っ‼」
その後を追いかけ、やっとの思いで、ヴィゼも人だかりから飛び出す。
そして、顔を上げた少年の顔を見て、二人は言葉を失った。
肩まである、ウェーブの掛かった黒髪の少年など、珍しくはない。
しかし、目つきが悪く、印象の暗い、どこか人を寄せ付けない雰囲気がある、この少年は、クロもヴィゼも知っている少年———バトだった。
「———っ‼」
バトも、クロとヴィゼに気付き、驚きで固まる。
「お前………何、やってんだ?」
恐る恐るクロは尋ねた。
「別に………。お前らこそ、なんでここにいるんだよ………。」
バトはバツが悪そうに、目を反らした。
バトは元々、夜行性なので、昼間に行動すること自体が未知な上に、人間に関しても無知だった。
昼間の世界とは、どうなっているのか。
人間や動物は、どう生活しているのか。
人間を観察して、ヒトとしての振る舞いも研究した。
B・Bから、ルイーザ調査の命が下り、意気揚々と学園に侵入したのだが、考えることが苦ではなく、手先を使うことが好きなバトにとって、レゴクラブは魅力的過ぎた。
目的も忘れて夢中になって、気付けば大作が出来上がってしまった。
これではクロのバカと一緒だ………。くそっ。
バトは酷く後悔していた。




