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約束と契約  作者: オボロ
104/114

#104 B・Bの過去の望み


「「B・B!」」

「「B・B!」」

「主様!」


凪が現れ、マリアとジェシカを纏めて一気に連れ去ることを阻まれたB・Bが膝を付いた。

マリアの肩を掴んでいた両手を震わせていて、まるで、凍えているかのようだった。


「何が起こった?」


凪が小声で訊いた。

状況が全く分かっていない凪に、マリアはB・Bの身に起きた事の大まかな説明をした。


「B・Bと使い魔達がわたしに触れると、火に水をかけたみたいなシューっていう音がして、触れた部分から煙が出るの。痛くはないみたいなんだけど、力が抜けて、痺れるみたい。でも、それもすぐに治まるの。だから、わたしが幼稚な術を使って使い魔達を怯えさせているって、B・Bが怒って、ジェシカちゃんとわたしを纏めて連れて行こうとした。そうしたら、今度はすごい量の煙が出て、何にも見えなくなって、もう駄目だって思ったら、凪が現れた。凪が現れて、我慢していた痺れが一気に来たんじゃないかなぁ。」


「なるほど。」


凪は、すぐに理解できたようだった。

マリアの腕の中で、ずっと泣いているジェシカを抱き上げ、クレア直伝のあやし方で泣き止ます。

ジェシカは、マリアよりもがっしりとした腕と安定した心音に、安心したのだろう。

ずっと泣いていた疲れもあって、今にも眠りそうだった。

マリアの腕の中では、仰け反って泣いていたのが嘘のようだ。


「随分と上達したわね。」

「この状態を持続するのが大変なんだ。」


凪は、大人しくなったジェシカを見ながら、手の位置と力加減を確かめた。

凪はまだ、勝手に体が動いて出来ている訳ではなかったらしい。


「これは、どういう術なんだ。」


ノラとヴィゼに支えられて、立ち上がったB・Bがマリアに聞いた。

無理やりにでも連れて行こうとしていた、どす黒い闘志は、すっかり消えていた。

両手を開いたり閉じたりしている様子から、まだ多少、痺れは残っているようだった。


「わたしは術を使っていないわ。」


マリアは答えた。


「わたしに術は使えない。多分、わたしの祖母がわたしの為に掛けてくれたものだと思う。」

「お前のおばあさん?」

「ええ。もちろん、グレースではなくて、日本に住んでいる母方の祖母。宮司をしているの。」

「宮司?」

「そう。日本に居る神様の1人に御弥之様という神様が居て、その神様が御座おわす神社を、わたしの祖母は守っているの。」

「日本の神……?」

「そうよ。日本にも神様は居るのよ。」


B・Bは、マリアの話を聞いて、不思議そうにしていた。

B・Bが知っている神様と、マリアが話す神様が、同じ神様ではないことが不思議なのだろう。


「この世に神様は1人じゃない。自分が信じたいと思う神様を信じればいい。これが、日本の考え方。B・B、昔、あなたが望んでも、叶えることが出来なった望みを、わたしに教えてもらえないかな?」

「なぜ?」


マリアの提案に、B・Bはあからさまに嫌な顔をした。

だが、マリアは怯まなかった。


「叶える方法を探してみたいの。」

「だから、なぜ?」

「前に、ヴィゼが言っていたわ。わたしはいつもお願いばかりだって。だから、今回、わたしのお願いを聞いてもらう代わりに、わたしもB・Bの望みを叶える———て、いうのはどう?」


マリアのこの提案には、B・Bも使い魔達も驚いていた。

そして、徐々に嫌悪を露わにした。


「神の関係者だか何だか知らないけど、調子に乗ってるんじゃないの?」


ヴィゼが吠えた。


「おばあさんに頼んで、その神様に叶えてもらうのかい?」

「その神、どれだけお前に甘いんだ。お前は一体何様のつもりだ!」


ノラとバトも痛烈に言った。


「日本の神ってのは、ちょろいんだな。」

「望めばなんでも叶えてくれるの?いいなぁ。」


クロとドドも悪態を吐いた。


「どんな神様も、お願いをホイホイ叶えてくれるわけがないわ。」


御弥之様まで馬鹿にされて、マリアはムッとした。

凪も頭に来ただろうが、ジェシカを抱いていることもあり、クロとドドを睨むだけにとどめていた。


「神に頼むのではなく、では、どうやって叶えると?」


B・Bが口を開いた。

今までも、マリアに冷たい目を向けたことはあるが、今回の目には、嫌悪が含まれている。

怯まずに、マリアは言った。


「考えるわ。どうすれば、叶えることが出来るか、色々考えてみる。御弥之様に頼んで、どうにかしてもらうんじゃなくて、わたしが叶える為に色々と方法を探すわ。」

「神が却下した望みを、君に叶えられると、本当に思っているのか?」

「思っているわ。人間だからこそ叶えられることが、きっとあるって、わたしは思ってる。」


しばらく、にらみ合う時間が流れた。

そのかん、誰も何も言わなかった。


まるで意地の張り合いだ———と、マリアは思う。

譲れない思いが互いにあって、折れることが出来ない。


だが、以外にも折れたのはB・Bだった。

折れたのだと、マリアは思った。


「いいだろう。話してやろう。だが、叶えることが出来ないとなった場合、ジェシカと一緒に来てもらう。いいね。」


B・Bが条件を出した。

その時、マリアは、B・Bは折れたわけではなかったのだと、察した。

にらみ合っていた時間、一番効率のいい方法を探していた。

マリアが望みを叶えられるとは、端から思っちゃいない。

条件を呑ませることが目的なんだと、マリアは悟った。


「わたしは、人間と深く関わり、日々、寄り添い、慈しみながら生きて行きたいと望んだ。悪魔のわたしが、人間と深く関わり、日々、寄り添い、慈しみながら生きて行きたいと言ったなら、人間たちは恐れをなし、こぞって逃げるだろうな。だが、考えてくれるのだろう?叶える方法を。楽しみにしているよ、マリア。」


B・Bの勝ち誇ったような笑みが、全てを物語っていた。







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