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かぜさき旅行記  作者: 斎藤 正
9/21

学習#1






城門を抜けると一直線に大きな通りが中心部に伸びており、視界に見える突き当りにさらに中心部を囲むように壁が広がっている。


魔法大国フィーザイアの南に位置する軍事都市グランザフレムの地形はドーナツ状になっていて、中心部を外壁よりも強固で装飾が施された城壁で囲っている。

この囲われた中心部が、貴族が住んでいる上級地区だ。

この、上級地区は貴族の居住区があるのはもちろんだが、貴族が利用するためのレストラン、ブティック、宝飾店などが入っている。

グランザ魔法学園は、この上級地区のさらに中心部に位置していて、

言ってしまうと、このグランザフレムの中心に位置している領主邸の前方に建設されている。

これは、万が一この軍事都市が強襲を受けた際に領主邸を避難所として、学園を砦として対抗するよう設計されたものだ。

そういった、外部からの脅威に対してすぐにどのエリアでも要塞化できるように設計されているのが、この軍事都市グランザフレムだ。

ゆえに、この都市を通過すると、魔法大国フィーザイアの首都にたどり着く。


この都市を建設した先人たちは、外敵脅威からの守護を目的としていたのだが、ここ数十年はそのような脅威にさらされることがなくなってしまったが故にグランザフレムは軍事都市としての意味を失っていた。

本来であればこの都市の外周部は外敵からの守護のために軍事施設エリアとなっており、

戦闘要員の居住区や、訓練施設、外交の窓口となる市場などが広がっていたのだが、

戦闘要員である魔法士は都市を守る貴族であると王に任命されたことにより、

安全な中央部に住むようになり、力がない不要な人間だと、平民だとされた人間が

危険だとされる外周部に追い出されるように分かれて住むようになっていった。



そして、この軍事都市の城壁は南側と、北側に城門が設置されていて、東と西に居住区は分断されている。

南側の城門から入って西側は比較的治安のいいエリアで、こちらには、平民が集まる市場や、冒険者ギルドが存在している。

しかし、東側は王都から追放された犯罪者や、亡命者、流れ着いた人などが吹きだまっている無法地帯になっている。犯罪の温床となったこのエリアから抜け出すことは、都市全体で隠蔽していることもあり容易ではない。

こうなっている大きな原因は、中央部の城壁に東エリアへ向かうための城門がなく、

西側にしか存在していないことにある。


中央部で働いている人や外部からの商人などが西エリアに滞在していて、冒険者ギルドも西エリアにあったため、東エリアにそういった「見せたくないもの」を集めていった。


ちなみに、軍事都市として機能していたころは東エリアへの城門があったのだが、貴族が中央部で住むようになり、東エリアが無法地帯になり始めたころ、貴族が城門を取り壊して壁にしてしまっていた。


ゆえに、城壁から都市に入ると、中央通りで半分に割った東と西で、明らかに町の様子が違う。

対外的な事を考えてだろう、中央通り沿いは比較的普通の町に見えるが、少し路地に目をやると、明らかにスラムといった町並みが広がっている。

いくら取り繕っても隠せるものではない。

始めてまっすぐに都市の内部を視たロズキも、この異様な雰囲気にドン引きしていた。




カインは、グランザ魔法学園に通うまでは東エリアに住んでいた。

もともとはどこか別の場所で暮らしていたようだが、追い出されてしまったのだと、

カインは両親から聞いていた。

兄弟はおらず、両親と3人暮らしだったようだ。

体を借りた時に一番始めに流れてきたカインの記憶は、貧しい暮らしをしていたにも関わらず、とても温かく両親の笑顔だった。




こんなひどい環境で暮らしていながら、あんなにも温かい笑顔を自分の子供に向けることができるカインの両親に、心からロズキは尊敬の念を覚えた。




そしてそんな両親を、くだらない嫉妬で殺した犯人を、この制御できない身体強化魔法で、

文字通り木っ端みじんにすることに決定した。




ロズキは、魔法について調べるために、通行証となっている学生証を中央部城門に配備されている兵士へ見せ、城門をくぐった。


先ほど見た外周部のエリアとは雲泥の差だ。

朝っぱらであるにもかかわらず、もう町自体がギラギラしていて、これが貴族の町だといわんばかりに贅を尽くした町が目の前に広がっていた。

外周エリアと比べると清潔であることは確かだが、こんな場所に暮らすのはごめんだと、ロズキはさっさと視界から意識的に町並みを外し、中央通りの突き当りに存在するグランザ魔法学園を見つめた。

周りのギラギラした街並みに負けないほど豪勢な校門にドン引きながらも、ロズキはその校門をくぐっていった。


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