#3
ドゴォォォォォォン!!!!!!
凄まじい音が鳴ったにもかかわらず、ロズキは驚きすぎてその場で固まっていた。
一拍の現実逃避の後、さびついたブリキ人形のごとく、ぐぎぎぎ、と自分の足元を見て、
「。。。。。おおう。」
さらに、現実から目をそらした。
うん。聞いてない。
「魔力はあるとは聞いてたけど、こんなに強いとは聞いてないよ!」
反射的にロズキは叫んだ。
目の前に広がるクレーターは、直径5mは越えようかというほどの規模で目の前に広がっており、そのまま1段陥没している。地盤が緩かったと考えたいが、ここは丘で周りを木々に囲まれており、近くに川などの水源はないので、その考えは無茶というものだった。
正から教わっていたバッファーの身体強化は、STRという項目をプラス何ポイントかする、あくまで補正だと聞いていたのだ。
イメージとして、ちょっと動くのが楽、だったり、走るのが早い程度にしか考えていなかったので、それが今現在の現実逃避に拍車をかけていた。
まるで、地球で見た隕石落下跡地の写真みたいだなー。どう考えても普通に足を踏み出しただけでできるものではななー。こういうのは自分と関係ないところで起きてほしかったなー。そうだー。ボク知らなーい。あははー。
あまりの容赦ない破壊力に、
ロズキのショック状態はしばらく続いた。
その後、
「うん。そろそろ、発動条件とか確認しよう。このまま魔法が暴発して町ぶっ壊すとかシャレにならん。」
現実に戻ってきたロズキは、発動条件、制御、使いこなすための検証を始めた。
全く意識せずに、そして自分の感覚としては全く疲労や苦痛など不快なことを全く感じずこれだけの威力を出すということは、相当な魔力量があるのだろうと認識した。
魔法の威力が大したことないのであれば、つまり、正が言っていた通りあくまで「補助」程度のものであれば問題なかったが、これだけの破壊行為を抵抗なく行えてしまうとなると話は別だ。
最低限、街中で暴れても危険視されない程度には制御できないと、今後自分が生きづらくなる。
まあ、正直こんなクソな国がどうなろうと問題はないが、諸外国にそういう情報が洩れる事は、できるだけ避けておきたい。
まず初めに、隕石落下跡地が発生した時のことを、記憶のかなたに追いやりたい出来事だけども、思い返してみよう。
あの時自分がとった行動は、
軽く手を合わせる。
右足を前に出す。
「身体強化」と言う
の3つだった。
試しにロズキは、両手をパンと合わせて、そのままその右手で、地面を殴ってみた。
どす。
「ぐおおおおおおおおっ。」
右手がただただ痛いだけだった。
続いて、右足を出してみた。
特に、何も起きなかった。
発動条件は、これではないらしい。
続いて「身体強化」と言ってみた。
そういった後、先ほどと同じように、先ほどは右手で地面を殴って不要なダメージを受けたので、今度は左手で地面に触れた。
すると、
ドゴォォォォォォン!!!!!!
新たな、隕石落下跡地が出来上がってしまった。
「なるほど、この世界の魔法は呪文で発動するんだね。了解了解。」
自分が「身体強化」と言わなければ、魔法は発動しないんだということが分かって、
ロズキは、胸をなでおろした。
何とか、町を穴ぼこにせずに済みそうだ。
とはいえ、
「使うと大惨事なんだよなー。どうやって制御すればいいんだろうか。。。。」
あれから、どうにか威力を下げられないかと、何度も身体強化を試していた。
おかげで小高い丘だった場所が、今ではただの平原と化していた。
手で殴る威力を変えても、時間が経っても、できる大惨事の規模は変わらず、どうしたものかと途方に暮れていた。
これ以上、単独で検証してもわからないなと思っていたその時、空が白み始めていた。
「身体強化」を使い続けていたからか、疲れることなく、朝を迎えたようだ。
「これ以上はわかんないかな。よしそれじゃあ、わかるところで教えてもらおう。」
ロズキは、城門が開くと同時に中に入り、目的地に向かって歩き出した。
その日、星降りの丘と呼ばれる、初心者冒険者が狩りを練習する場所として有名な丘が一晩で消え失せているとの報告が冒険者ギルドに入り、地形を変えるほどの攻撃力を持つ魔物が現れたのではないかと、高位の冒険者グループを集めた調査隊が結成された。
3日間に及ぶ調査が実施されたが、結局原因を究明することはできなかった。