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かぜさき旅行記  作者: 斎藤 正
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第1章 カイン・ベルベットの場合  出会い#1



魔皇歴5472年

魔法大国フィーザイア 

南に位置する軍事都市グランザフレム




カインは肩を落とし、トボトボと歩いていた。

彼は、この首都グランザフレムに設立されている国立グランザ魔法学園の1年生だ。


魔法学園に通っていると言うだけで、この国ではエリート扱いされるため、学生は皆、意気揚々と、一部の者はかなり威張った態度を取っているものなのだが、彼はかなり暗い顔をしている。


「もう、いいかな。いいよね。うん。いいよね。」


そんなことをブツブツつぶやきながら歩く先には、グランザ魔法学園の隅に建つ時計塔がある。

学園設立時に記念として建てられた時計塔だが、特に何に利用されているでも無いそれを管理するものはおらず、忘れられたそれはイミテーションと化しており、誰も近付くことはない。



「もういいや。もういいよね。」



そんな時計塔を登っていき、かなりの時間をかけて塔の天辺まで登り切った。

足取りはおぼつかないが、戸惑うことなく塔のはし、あと一歩前に出れば地面に真っ逆さまに落ちる位置で立ち止まり、初めて視線を前に向けた。


眼下には、魔法学園が広がっている。

憧れていた魔法学園が。


入学当初は、本当に自分が誇らしかった。


このフィーザイアでは、魔力を持つものが貴族、持たないものを平民としている。

平民とは言いつつも、力こそが全て、魔法至上主義であるこの都市では、

魔力をもたないもの、つまり平民は奴隷扱いが暗黙の了解となっている。

そんなこの国では、底辺だと蔑まれ、一日を生きることだけに必死だった。

そんななか生まれた自分は、教会の神官から高い魔力の持ち主であると判断された。そして魔法学園への入学資格を得ることができた。


魔法学園に入れば、これまでの生活が変わると、両親にも良い思いをさせられると思っていた。



だがしかし、待っていたのは、この学園でも底辺だと蔑まれる日々だった。



訓練だと称して、爆裂、火炎魔法の的にされることなど日常茶飯事。

毎日瀕死の状態になるまで痛めつけられた。

学園側も、魔力はあっても魔法が使えない自分を保護する事は無く、完全に見限っていた。


魔法学園に入れば。

そう思い今までの生活を耐えていたが、つい先程、いつも絡んでくる貴族連中に

面白半分に形見のロケットが「パリン」と音を立てて壊されたのを目の当たりにして、

同時に、何とか耐えていた心がパリンと割れる音がした。




もう限界だった。



「ごめんね。父さん、母さん。さよなら」


そして、一歩前に踏み出そうとしたとき、






目の前が真っ暗になった。




「え。。何?」




確かに、時計塔の上にいて、夕焼けの空が見えていたのに、



何が起きたのか判断出来ず、

カインはその場に座り込んでしまった。


そして、程なくしてまた目の前の風景が変わり、

次の瞬間、自分は教会の中にいた。


その教会はカインが魔力があると判断された場所であった。

当日、魔力があると判断された時は、ステンドグラス越しに入る日の光が美しく、教会内が光り輝いて見えたが、今はステンドグラスも黒ずみ、あたかも廃教会のように見えている。


その場所のステンドグラスの前に全く見覚えのない、人がいた。

黒のローブに黒のズボン。フードを目深に被っているため口元しか見えない。フードの隙間から見える黒髪も相まって全身真っ黒だが、その中にある銀色に目が行った。



「はじめまして。」


そんな人影から声がした。高くもなく、低くもない抽象的な声だ。



「はじめまして、私の名前は風咲 ロズキ(カゼザキロズキ)です。君の名前を聞いてもいいですか?」




「・・・カインだけど。」



この学園において、身分不相応の平民出身で有名なボクを知らないなんて。

怪しい警戒すべき相手であることは明らかだ。



「カインだね。宜しく。まずは、現状の説明をするよ。」


そう言いながら、ロズキと名乗ったその人はゆっくり、話しながらこちらに向かって歩き出した。



「まず、ここはカインくんの深層心理の世界です。なので、カインくんの体はまだ、時計塔にあります。身体的には眠っている状況で、こうしてお話ししている今も、時間は進んでいます。」



深層心理?この教会が?この教会はどう見てもこの街に存在する、ボクがひどい目に合うきっかけになったあの大聖堂じゃないか。

何を訳の分からないことを言っているんだ。




「今回はカインくんにお願いがあって来ました。」




そう言うとその人は、自分の少し前で止まり、




「どうか、カインくんの体を貸していただけませんか?」




貼り付けたような満面の笑みを浮かべ、僕に手を差し伸べてきた。

背後のステンドグラスから光が差し込んできているように見えた。




はじめまして。

初連載です。

楽しんで頂けましたら幸いですm(_ _)m

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