#8 ギルド長視点
ギルド長である、ライゼン・ガーディズは、階段から一番近い応接室に入り、ドアを閉めた。
その瞬間、ため息が漏れた。
先ほどまでロビーで大立ち回りを繰り広げていた、
目の前の新人冒険者を応接室に移動させることができたことに、まずは安堵したのだ。
あれ以上の殺気を出されてはギルドホール外にまで影響が出るところだった。
何せ、たった一瞬でギルドホールは半壊寸前に追い込まれるほどの力だ。
そんな元凶は、彼の杖に釘付け状態で、全く自分のことを見ていない。
口が半開きの状態で、ものすごいキラキラしたまなざしを杖に向けている。
まさに、鉱物を目の前に吊り下げられた馬のような。。。
そんな彼を見て気が抜けてしまったが、話をするために連れてきた新人冒険者、「ロズキ」を応接間のソファへ、私の杖を使用して誘導した。
きちんと座ったことを確認してから、ロズキに声をかけた。
「その杖の模様に使われている赤い石はルビーでね。このルビーは魔法伝導率だけでなく、変換率と、杖自体の強度も上げてくれる優れモノなんだよ。」
すると、ものすごい勢いで、
「そうなんですか?!」
と、キラキラしたままの瞳を私に向けた。
それで、やっと私を認識し、部屋を移動していることに気づいたのか、私や、周りをうかがうように見まわしていた。
「ようやくこちらを見てくれたね。どうも会うのは二度目だね。ロズキ君。」
「すいません。どちら様でしょうか?」
予想通りではあったが、彼はわたしを覚えていなかった。
「まあ、覚えていないだろうね。あの時の君も私の講義などうわの空だったからね。」
「講義?ああ!一番最初の!。。。。。。その節はすいません。」
「いいよ。君が毎日依頼を受けて、違反なく真面目にこなしている事は知っているからね。」
「そうですか。で、なんで私はここに通されているんでしょうか。」
「それは、先ほどの騒動について説明をするためだよ。」
「そうですか。で、どうやって私はここに来たんでしょうか。」
「自分の足で歩いてきたよ。」
先ほどの殺気が嘘のような、ものすごく間抜けな会話を繰り広げてしまった。
今までの言動と言い、今回の会話と言い、私は、目の前の人物が、とても先ほどの殺気を放った人間とは思えなかった。
まして、彼は新人冒険者。
ベテランでも殺気を操ることができるのはごくわずかしかいない。
そのことから今回、彼が殺気を充満させたのは、自身が死の危険に陥ったための条件反射だったのだろう。
と、私は結論づけた。
それであれば、今回の件について、「ロビーで暴れないように」という厳重注意だけでいいかなと思い、彼にはなしかけようとした。
その瞬間。
「では、伺いましょうか。」
先ほどのロビーで味わったものの数十倍のプレッシャーが彼、ロズキから放たれた。
私は、思わず生唾を飲んだ。
ロズキは、かがんで杖を見ていた体制とは打って変わって、貴族のような振る舞いでを見せ、足を組んでこちらを見ていた。
私の認識は間違っていた。
彼は、「敵に回してはいけない相手」だ。
私は、考えを改め、その場に立ち上がった。
「まず、今回の件について、ギルドの調査にあなたを巻き込んでしまったことを謝罪させていただきます。」
そして、自分の膝におでこが付くのではないかと思うほどに頭を下げた。
彼は私のそんな行動を右手で制した。
そんなことはいい。そして、私が聞きたいことはそんなことではない。と、いうように。
私は、「ありがとうございます。」とお礼を述べ、
座り直し、改めて、今回のことを包み隠さずすべて話した。
彼が相手にした男は、ギルドがマークしていた男で、かれを懲役刑に処するための証拠集めをしていたことを。
「そして本日、冒険者ギルドに現れた対象に酒を飲ませ、彼が殺人について自白するのを待っていたのです。そしてあなたに絡んだ際に、決定的な言質を確認しました。それゆえに懲役刑が決定したのです。」
そして、ロズキはそこまでを聞いて、右の口角のみを上にあげ、にやりと私に笑いかけた。
驚きや、怒りでなく、嘲笑を読み取れる表情だ。
それを見て、私は驚愕した。
ロズキは、気づいていたのだ。
恐らく、昼間から酒を出したギルドのバー職員の挙動、受付がわざわざ監視対象の男の導線に座ってたパーティに話しかけるよう誘導したことも、その後ロズキを使用して自白を取ろうとしたこともすべて。
すべてわかっていて、あえてそれに乗り、ギルドに、私に借りを作るという判断を下したのだ。
そして、ロズキに対して私がすべて話すか、新人だからとナメた真似をしないか、品定めをされていたというわけだ。
自分が逆に、ロズキの手の上で踊らされていたことに気づき、彼は恐怖を覚えた。
これまで彼は、ギルド内でで強い相手と幾度となく渡り合ってきた。
強力な魔法を使う魔法士、SSランクの魔物を単身で討伐経験のある剣士などの戦闘力的強者、」はたまた無理難題を突き付けてくる皇族や、公爵家、などの権力的強者の相手も、すべて自分に理のある方向に対応し、すべて切り抜けてきた。
だが、そんな自分がここまで手玉に取られ、そんな状況に気づくことができず手も足も出ない状況に追い込まれることなど、ギルド長になってから、そのような事態になることなどなかった。
ここまで頭が回り、その知略を実行でき、更に戦闘力も圧倒的。
そんな人間が存在できているという事実に戦慄を覚えた。
だが、そんな相手であったとしても、私は「ギルド長」だ。
どのような事態であったとしても、そんな切羽詰まっている様子を見せるわけにはいかない。
「これが、罪状に「殺人」が含まれていた要因と、今回のことのあらましですが、
やはり、気づいておられたのですね。」
もはや、その言葉は降伏宣下だった。
それを聞いた彼の表情は、満足したのか、嘲笑ではなく、微笑みに代わっていた。
それと同時に、自身に降りかかっていたプレッシャーも消えた。
どうやら私は、今回の対応について、間違いは侵さなかったらしい。
「やはりですか。その点につきましては、本当に申し開が出来ません。本当に申し訳ありませんでした。ギルドを代表して謝罪いたします。もちろん、謝罪だけで終わらせるつもりはありません。何か希望があればおっしゃってください。何でも、どのようなものでも承ります。」
そう申し出ると、ロズキは魔法の新人教育講座を受けることを要求してきた。
その講座は、新人の生存率、仕事の達成率を上げるため、あればだれでも無条件で受けられるものだ。
それを条件に出してきた、という事は。この借りは、しばらく返す機会はないという事だ。
もしかしたら、まさかとは思うが、今後、この国で何か起きる可能性があるのかもしれない。
彼はそう思えてならなかった。
ロズキが部屋を出るときに垣間見た顔は、そう思わせるほどに目がぎらついていたのだった。
諸事情にて、更新が止まっていましたが、
少しづつやっていけるようになればなーと。(ただの体力不足)




