#6
なんて美しい杖なんだろう!!!!!!
杖の大部は純度の高い銀で作成されており、先端は滑らかに生成された気象素材であるミスリルが惜しげもなく使用されている。
ミスリル部分に継ぎ目がないことからそのまま芯にもミスリルが使用されているのだろう。
装飾部分には大きなフェニックスがあしらわれており、細かな羽の部分まで美しく再現されている。目の部分には赤い宝石がはめ込まれている。おそらく炎の精霊石か、ルビーだろう。フェニックスの周りを囲むように炎が装飾されているのだが、ここに使われているのはミスリルより更に希少性の高いヒヒイロカネだろう。
しかも手持ち部分は無駄な装飾はなく持ちやすいようにくぼみがあり、使用感についても工夫が感じられる。
学園の図書館で勉強していた時に学んだのだが、起動する魔法の種類、魔法に込める魔力量を決めるには呪文を使い、その起動した魔法を、杖を通して具現化し、魔法を放つ方向、距離を決定、つまりコントロールするために魔法杖を使用しているのだそうだ。
なので、杖の性能が悪いと魔力量があっても魔法として発動できる規模が半減するし、発動速度ががくんと落ちる。らしい。
そして、魔法速度を上げるために魔法伝導性を上げるための金属を芯に使ったり、炎の魔法具現化する還元率を上げるために炎の精霊石を付けたりとカスタマイズしていくのだそうだ。
しかし、私の身体強化魔法は自分自身に魔法をかけている状態なので、杖で行わなければならないコントロールを行う必要はほとんどない。
なので、販売されている杖を購入しても、コントロールができない現状を改善することは見込めないのだったのだ。
魔法について、勉強して知識を得ることはできていたが、実際にしっかり魔法杖を見ることはなかったので、目の前に杖が入ってきた瞬間、その美しさに周りのことなどどうでもよくなるほど目を奪われてしまった。
こんなにも美しいものなのか、しかも機能性を保ったまま、細かい技を使用して華やかさを表現している。しかもよく見ると、ヒヒイロカネは魔法文字を象っている。魔法文字とは文字自体が魔力を持ち、それが記載されてものにその文字の性能を移すために使用されるもので、主に魔法具に使用される技術だ。例えば鎧に「防ぐ」と記載すると防御力が上がるといった具合だ。杖に記載されている魔法文字はどうやら速さを増強するためのようで、この杖は、魔法の発動速度を最大限上げることに特化しているようだ。
つまり、こんなにも豪華だが実戦で使用するための杖という事だ。さすがギルド職員。
と、見とれていると、
「その杖の模様に使われている赤い石はルビーでね。このルビーは魔法伝導率だけでなく、変換率と、杖自体の強度も上げてくれる優れモノなんだよ。」
と、声をかけられた。
「そうなんですか?!」
と、私は反射的に顔を上げた。
その時はじめて気づいたのだが、私の目の前にギルド職員の制服を着た品のいい老紳士が座っていて、にこにことこちらを見ていた。
ん?座って?
そういえば、今私もふかふかの椅子に座っていて、しかもなんだが先ほど板ホールではなく知らないうちに狭めの装飾された別の部屋に移動していて、壁に絵画や花瓶が飾られていて、装飾された木の長机が目の前に展開されている。
明らかに先ほど筋肉だるまを吹っ飛ばした場所とは違う場所に来ていた。
「ようやくこちらを見てくれたね。どうも会うのは二度目だね。ロズキ君。」
そう声をかけられたが、
「すいません。どちら様でしょうか?」
勿論私は覚えていなかった。
「まあ、覚えていないだろうね。あの時の君は私の講義などうわの空だったからね。」
「講義?ああ!一番最初の!。。。。。。その節はすいません。」
「いいよ。君が毎日依頼を受けて、違反なく真面目にこなしている事は知っているからね。」
「そうですか。で、なんで私はここに通されているんでしょうか。」
「それは、先ほどの騒動について説明をするためだよ。」
「そうですか。で、どうやって私はここに来たんでしょうか。」
「自分の足で歩いてきたよ。」
全くもって記憶にないが、目の前の老紳士は満面の笑みを浮かべてそういった。
なるほど、あまりに杖が美しすぎて、そのほかのことがきれいさっぱり自分の頭の中から消え去った感じか。
うん。通常運転。
だが、さすがに説明を受けるとなると、いわゆる紳士な姿勢?を見せた方が話がスムーズに進むか。
と思い至り、私は背を正して、足を組んで(クセ)、笑顔で話しかけた。
「では、伺いましょうか。」
そう言うと、老紳士は真面目な顔へ切り替えて、私に説明を始めた。
「まず、今回の件について、ギルドの調査にあなたを巻き込んでしまったことを謝罪させていただきます。」
そういって、老紳士は立ち上がり、私に対して頭を下げた。
反射的に私は右手を前に出してしまったが、そのすぐ後に「ありがとうございます。」と言って、
老紳士はまた座りなおした。
「あなたに先に手を上げたD級冒険者は、2か月ほど前からギルドの監視対象となっていました。
あの男はの罪状は、殺人、暴行、迷惑行為、器物破損と違反行為のオンパレードです。冒険者資格のはく奪は勿論、慰謝料の請求、慰謝料以外での罰金と冒険者ギルドでの懲役刑が課せられます。もちろん、あなたの対応は正当防衛と判断されますので、ペナルティが発生することはございません。」
「うゎお。懲役刑って何ですか?」
罰金とかはわかるが、懲役ってなんだ?!と、内心びっくうう!となっているが、なるべく顔には出さずに聞いてみた。
「懲役刑は、一般階級の人間へ殺人を行ったものに対して課せられる刑です。ギルドが所有している牢獄塔内の牢屋に特定期間拘束されます。これは一般市民、冒険者、商人などを一般階級としている。もし、貴族が一般階級を殺害、もしくは、まああり得ないが一般階級の人間が貴族を害した場合は王家直属の警備隊が対処いたします。」
私は、ホット一息ついた。私の魔法暴発(制御不可)事件は懲役刑にはならないようだ。
「そして、例外ではありますが、都市全体に害があると判断された場合など、極度の危険性が認められる場合は、懲役刑が適応される場合があります。」
そうでもなかった!!!!!




