#5
アウグニル教授に退学する、読み書きを教えてほしいということを伝えて、
次の日から、図書館で読み書き、魔法についてなどの勉強をする日々を送った。
私としては読み書きを教えてほしいと伝えたその日から勉強したかったのだが、
教授が「休みなさい!」とヒステリ過多な状態でカインに迫り、
そのまま奥にある彼女の寝室に引っ張っていき、ベッドに強制連行されたのだ。
この学園から少しでも早く出ていきたいという気持ちが早って、少し焦ったなと、
強制連行されたその瞬間眠りにつき、次の日の昼頃、日が高くなってから起きたことに気づき、ロズキは反省した。
「体を借りるのであれば、ちゃんといたわらないと。カイン、すいませんでした。」
カインが聞いているわけではないとわかっているが、ロズキはそういって、頭を下げた。
それから、図書館で初めて本を実際に手に取り、文字を見た。
この国の文字は、私が生活していた元の世界のものとも、今まで旅行していた別世界のものとも全くにつかないものだったので、かなり習得に難航した。
開始5分で撃沈。疲れも相まって、そのまま夢の世界へ旅立っていた。
むしろ良く持ったといえる。残念ながら。
基本的にロズキは「自分が面白いかどうか」が行動指針となっている。
なので、ロズキにとって「楽しくない」文字の勉強は、次元旅行を始めてからは全く通ってこなかった。
まあ、今まで体を貸してくれた人物は、そのあたりの基本はマスターしており、記憶を共有してもらっていたので、その必要がなかったともいえるが。
その代わり、少しでも興味をそそられることに関しては、そこらの専門家より詳しいし、いわゆるオタクだ。
つまり、べ今日は楽しくないが、研究は楽しい。
という事らしい。
そんなカインを見かねたのか、アウグニル教授が、貴族の子供が文字の勉強に使う一般的な教材を自宅から持ってきてくれ、読み書きを教授自ら教えてくれた。
ロズキにとって、教授の教え方が楽しかったのか、それからは、かなりのスピードで一般的な読み書きを習得した。
7日ほどたったころ、通常の読み書きはほとんどマスターしていた。
貴族の言い回しに関する勉強もするかと教授に尋ねられたが、それだけはきっぱり断った。
今後、自分が楽しむために、貴族とかかわる気はさらさらなかった。
読み書きができるようになってから、図書館にある魔導書のようなものを見つけて読んでみた。
どうやら今習得している言語はこの世界共通のものであるらしく、読み書きできるようになれば、ここにある本はすべて読めるようになると教授は興奮した様子で教えてくれた。
その後、読み書きの勉強とは打って変わって、私はひたすら魔導書を読み漁った。
「魔法」はロズキにとって、まごうことなき「楽しいこと」だった。
初級魔導書を読み漁って解ったことは、この世界の魔法は、約20㎝ほどの杖を使い、呪文を唱えて発動するようで、高度な魔法を使おうとすればするほど、
とんでもない量の呪文を覚えて唱えなければならないらしい、という事だった。
「とんでもない量の呪文を覚えて唱える」
これが、以前の戦争でディクター・ケーニッヒが英雄と謳われた要因だ。
彼が発動した広範囲殲滅魔法が、戦争を勝利に導いたのだが、それは絶対に人間には使用できないといわれていた伝説の魔法だったのだ。
その魔法の呪文は教会の保管庫に封印されていた巨大な、成人男性の上半身程の大きさのある本いっぱいに記されており、その量はゆうに全100ページ以上にのぼる。
そんな大量の呪文を覚えること自体がまず不可能と言われていた。
さらに、それほどの呪文を扱うことのできる魔力を持ち合わせている事、呪文自体を発動させ制御するための精神力を備えている事、などの要因からヒトは使えない神の領域の魔法であるといわれていたのだ。
それを使用できた彼はその功績から、教会の最高責任者の地位をいただいているというわけだ。
そして戦争後、どうにか第二の英雄を生み出そうとこの学園の教授陣は躍起になっているのだ。
そんな私には関係ない昔話はさておき、このことから私が魔法を自由に使うにはどうしたらいいかということを考えなければならない。
まず、呪文は必須である。
初日に「身体強化」と言って魔法が発動したことから考えても、呪文を唱えるという行為は外せない。
しかし、その短い言葉だけで発動はできているわけなので、そのほかの長い呪文は一体なんで必要なのだろうか。
魔導書を調べたところ、一番初級の魔法はろうそくの火程度の炎を出す魔法なのだそうだが、それを発動するだけでも、1行程度、文字数で言うと30文字の呪文を唱える必要があると書いてあった。
ちなみにこの国の魔導書をすべて見てみたが、どれも炎に関する魔法しか記載されていない。
ディクター・ケーニッヒが使った広域殲滅魔法が、簡単に言うと炎の嵐を一定の広範囲に展開する魔法だったことが原因なのだろうと想像はつくが、なんと安直で使えない国だと再認識した。
というわけで、炎以外の魔法を使うカインの体で魔法を自由に使うためには、
本で魔法を暗記するのではなく、どうやったら自在に操れるかを検証する必要があるのだった。




