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かぜさき旅行記  作者: 斎藤 正
10/21

#2




朝早かったせいか、学園内はシンと静まり返っていた。

校門をくぐった先は正面玄関ホールまで石畳の道が続いており、

玄関ホールには豪勢なシャンデリアが下がっている。

床には赤いじゅうたんが敷かれていて

一見、学校というよりは、以前正に見せてもらった写真集に載っていた英国の城だなという印象を受けた。

恐らく、城として建設したものをそのまま学園として使用しているのだろう。



自分の趣味ではないし、興味もないが視界にギラギラと装飾が入ってくることに若干イライラしつつ、ロズキは目的地へまっすぐ向かった。




正面の豪華な建物を素通りし、渡り廊下を通り、いわゆる校舎エリアから離れたところに建っている塔状の建物の前に、ロズキは立っている。

目の前の扉はかなり重厚感があり、豪勢というよりは歴史を感じさせるドラゴンの彫装飾が入っているのだが、視た目に反してその扉は片手で押して開けることができた。





カインの記憶をロズキも共有しているため、もちろんカインが覚えていることをロズキも知識として知っている。

カインは学園生活のほとんどを、人気のないこの建物内で過ごしていたため、この場所のことを知ってはいたのだが、扉を開けた先に広がっている光景に感嘆の息を漏らした。

まず目に入るのが高く高くそびえたつ壁いっぱいの本と本棚。

その量は外から見た塔のうち壁いっぱいに本棚が設置されているのではと錯覚するほどで、

その理由は、中央が吹き抜けになっている事だろう。

その吹き抜けの一番下のエリアにも小さめの本棚が並んでおり、

その間を縫うように、本を読むための机が設置されている。



そう。ここは図書館だ。




この図書館にはフィーザイアに古くから存在しているものや、魔導書、王城から寄贈された貴重なものから、フィーザイア国外のありとあらゆる書籍を集め、保管されている。

なんでもこの建物が学園になる前、要塞として機能していたころの総責任者の指示により、これらの書籍は世界中から集められたという話をカインは耳にしていたようで、そんな記憶が残っていた。


そもそも、「力がすべて」を信念に動いていたフィーザイアにとって、本はただの紙の集まりで、ただの決裁書類で、利用後に無駄に積み重なっていくごみ程度の価値しかなかった。

そんな中、現在学園となっている、この要塞の総責任者は、様々な戦争、謀略を経験し、力があっても知識がなければ意味がないという考えを持つようになった。

きっかけは、戦時中に状況を打破したいとすがる思いでつかんだフィーザイアの過去の戦時記録で、そこに記載されていた戦法を用いて勝利を収めた。

それ以来、彼はありとあらゆるジャンルの本を読み漁り、知識をむさぼるようになり、彼の屋敷にはほんがあふれかえるようになったのだそうだ。

ある日、戦争時の砦守護の功績が王に認められ、褒美の打診があった。

その時彼は、真っ先に王城に保管している本が欲しいと申し出た。

本に全く興味のなかった王はそれを許し、彼はそれらの本を保管するために、現在学園の図書館となっているこの建物を建てたのだそうだ。

そして、王都の屋敷を引き払ってこの図書館で生活し、世界中の本を集める旅をに出たのだそうだ。

そして、この図書館で生涯を終えた。




そんな先人が生涯をかけて集めた書籍が今、目の前に広がっている。

いくらこの国で本の価値が低いとはいえ、これだけの書籍をたった一人で集めるということ自体がどれだけの労力を要することなのか、想像を絶する。

まさに、偉業と呼ぶに値するものだ。

今まで、そういった先人の凄さを実感することのなかったロズキは心から感動していた。

そして、これからこれだけの知識を得ることができる環境に身を置けているということにワクワクしていた。





ロズキが感動で本棚から視線を動かせないでいると、

ロズキの左側に設置されている扉が唐突に開いた。


図書館に入ってすぐの左側にはカウンターが設置されている。

そこで、本の入出管理を行っているのだが、そのカウンターの向こうに扉が設置されていて、その扉には「司書室」書かれた看板がかかっている。

その扉が勢いよく開き、中から一人の女性が出てきたのだ。


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