3月9日
「な~がれぇ~る季ぃ~節ぅ~の真ん中でぇ~」
「うちの学校の卒業式、もう終わってるわよ?」
「そうなんだけどね、やっぱ今日と言えば、この曲でしょ」
「あら、遠回しにカラオケのお誘いかしら?」
「そんなつもりは無かったんだけど・・・カラオケに行くのもありだね」
「行ってもいいけど、卒業シーズンの土曜日だし、混んでないかしら?」
「電話して聞いてみるよ
・・・空いてるって」
「なら向かいましょうか」
「あれだ、今日は<ミクの日>でもあるから『ボカロ曲縛り』ね」
「私、あんまりボカロ曲知らないわよ?」
「何曲かは知ってるんだ?」
「友だちが好きだからね・・・聞いてる内に、自然と覚えたわ」
「へぇー、僕より知ってそう」
「生粋のオタクである貴方には及ばないわよ」
「かもね!僕はプロのオタクだから!」
「誇れる事があっていいわね?」
「オタクである事で卑屈になる必要も無いからね」
「それもそうね・・・
あ、私一人で歌った事が無いから、
分からなくなったら途中で止めてもいいわよね?」
「『歌った事無い曲あるある』だね・・・
僕も入るから、フィーリングで歌ってみようよ」
「デュエットみたいに?」
「デュエットみたいに」
「それなら最初はデュエット曲にしましょうよ」
「いいね、お触りはOKかな?」
「NGに決まってるでしょ」
「えぇーっ!
女の子とデュエットするのに、お触りNGぃっ!?」
「場末のスナックじゃないのよ・・・」
「そうだね、君が居るとしたら、会員制の高級クラブだね」
「私、高いわよ?」
「高嶺の華に寄り添えるのなら、万難を排して頂きに登ってみせよう」
「バカね・・・既に手折ってあるくせに」
「会員制の高級クラブなら、お触りOKだよね?」
「たぶん、本物の高級クラブには、お触り目的の男性は行かないわよ?」
「そんなぁーっ!可愛い女の子を侍らせて、いやらしくお触りしたいよぉ!」
「貴方、ろくな大人にならないでしょうね」
「高い目標があって、素晴らしいとは思わない?」
「結果が伴えばね・・・それが例え不純な動機だったとしても」
「男が頑張る理由なんて、大抵は女の子絡みさ」
「色々目移りするのはいいけれど・・・たまには私の事も見てね?」
「もちろんさ!
試しにカラオケ屋に着いたら『高級クラブごっこ』をしようよ!」
「結局、下心満載なのよねぇ・・・」
「大丈夫!先っちょ、いや、タイツだけだからいいでしょ!?」
「あー、これは勢いで諸々押しきるつもりねぇ」
「ホントだよ!
タイツだけ!
ナイロン部分だけで肌まで触らないから!」
「肌に密着しているタイツを、
どうやってナイロン部分だけ触るつもりなのかしらねぇ・・・」
「そこは大丈夫!
僕くらいのレベルになると、タイツだけを感じられるんだ!」
「ある意味<絶技>ね」
「名付けて!『0.02mmの愛』!」
「頭の悪い名前ねぇ」
「さて、そろそろ最初に歌う曲でも決めておくか」
「私は今から貴方とカラオケに行くのが嫌になってきたのだけれど・・・」
「そうだ、この曲にしよう
・・・最初は僕一人で歌っていい?」
「構わないわよ?なんなら貴方一人で行ってくる?」
「これは僕一人では成し得ないかな・・・
君に感謝の気持ちを込めて捧げ歌おう
・・・『ありがとうの歌』」
「・・・なんでまたそんな曲を?」
「今日は<サンキューの日>でもあるからね、
普段は照れくさくて言えないけど、こんな時くらいわね」
「・・・不意打ちで真面目になるのは止めてよね」
「キュンとしちゃった?」
「もう、知らないっ」
「照れちゃって!可愛い!」
「もうもうもう!
一緒に行ってあげないわよ!?」
「それは困るな、一発で泣かせてみせるから、ぜひ来てくれない?」
「すごい自信ね・・・ちょっと聞きたくなってきたじゃない」
「だろ?
・・・おひねりはタイツでいいよ?」
「タイツを望むなら、90点以上よ?」
「余裕だね、ちなみに100点だったら?」
「それは、その時の、お・た・の・し・み」
「俄然ヤル気が出てきたね、
今日は帰れないと思ってくれていいよ?」
「はいはい、私もそうなる事を願ってるわよ」




