春よ、来い
「あれ歌ってよ、あれ」
「あれ?またアニソン?」
「いや、違うよ」
「じゃあ流行りのアイドルグループのやつ?」
「いや、それも違うよ」
「じゃあ何よ?
貴方の聴く音楽なんてその二択でしょ?」
「いや、そうなんだけどさ・・・いま僕が言いたかったのは『春よ、来い』」
「また懐かしい曲ねぇ・・・
まぁ、確かに聴きたくなるくらい良い天気だから、気持ちは分かるわ」
「でしょ?だから歌って」
「なんで私が歌わなきゃいけないのよ?
スマホで検索すればいくらでも出てくるでしょ?」
「やっぱ生歌でないと」
「貴方、原曲の生歌を聴いたことあるの?」
「いや、発売された時、僕らまだ産まれてないんだから、流石に無いよ」
「ならネットで満足出来るわよね?」
「検索するの、めんどくさい」
「ずぼらねぇ・・・聴きたいんじゃないの?」
「聴きたいんだけどね?わざわざ検索するのもなぁーって」
「それで私に歌わせようとしたの?歌詞覚えてないわよ・・・
それに、あの曲はピアノの旋律が素晴らしいから」
「音楽室いく?」
「吹奏楽部が使ってるから、貸してもらえないわよ」
「ピアノ、弾けるんだ」
「楽譜があればね」
「楽譜読めるんだ・・・流石、お嬢様」
「嗜み程度よ・・・ほら、公式にネットに上がってるから、流すわよ?」
「全然聴こえない」
「スマホだからね」
「イヤホン差せばマシになるかな?」
「なるんじゃない?はい、どうぞ」
「それだと僕しか聴けないじゃない?」
「イヤホン差したんだから、当たり前じゃない?」
「せっかくだし、一緒に聴こうよ」
「どうやって?」
「イヤホンを一個ずつ分けあおう」
「まぁ、そうなるわね」
「ほら、もっと寄って?」
「私、汗臭くないかしら?」
「そんなこと気にしてるの?・・・タイツの良い香りがするよ」
「ねぇ、近づくの止めてもらっていいかしら?」
「僕は君の香り、好きだよ」
「もう、変態なんだから」
「恥ずかしながら、くっついてくる美少女は可愛いなぁ」
「ほら、音楽聴くんでしょ!?」
「照れ隠しに怒るのも可愛いぞ!」
「ほらっ!流すわよ!」
「んー、やっぱり良い歌だね」
「そうね、良い歌だわ」
「早く春にならないかな」
「言ってる間にやって来るわよ」
『春よ、来い』




