センター試験~前日~
「三年の先輩たち、ピリついてるね」
学校に広がっている異様な空気に、僕は堪らず彼女に話しかけた。
「明日からセンター試験だからじゃない?」
彼女はこの異様な空気を何とも思ってていないようで、
素っ気なく返事を返してきた。
「そっか、センター試験があるんだ・・・
人生がかかってるもんね、そりゃあピリピリもするか」
彼女からこの異様な空気の原因を聞いて、僕は納得した。
「もし知り合いがいるなら、今日はソッとしておいてあげなさい」
彼女は念を押すように注意してきた。
「やっぱり、ソッとしておいた方がいいかな・・・
・・・カツ丼を差し入れようと思ってたんだけど」
彼女からの注意に、先ほど思い立った三年の先輩を励ますためのプランが揺らぐ。
「ただでさえ緊張しているだろうし、
余計プレッシャーになるかもしれないから、
気持ちだけ伝える事にしておきなさい」
彼女の意見を聞いて、今日ばかりは自粛するかと思った。
「そうするよ・・・僕の時は君のタイツを差し入れてね?」
僕は自分が緊張している時に、欲しい物を予めリクエストしておく。
「あら、センター試験を受けるつもりなの?」
彼女は意外そうな表情をして僕を見つめてきた。
「推薦は望み薄だからね・・・
君と同じ大学に行こうと思ったら、
センター試験を受けるしか方法が無さそうなんだなぁ」
自身の学力の無さに、思わずタメ息が出る。
「私と同じ大学に行くつもりなの?
・・・こう言ってはなんだけど、貴方の学力では今から勉強しても、
大分頑張らないと不可能よ?」
僕もその通りだと思い、苦笑を禁じ得なかった。
「最初から可能性を捨てるのは、ナンセンスだと思うんだ」
僕は不甲斐なさから肩を竦めた。
「そう、好きにしたら?」
そう言って彼女はクルリと踵を返し、僕に背を向けた。
彼女の肩はソワソワと揺れ、
落ち着きなく手で髪を弄る仕草に、
普段クールな彼女からは想像出来ないほど珍しく、
愛おしくて可愛かった。




