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防災とボランティアの日

「なにしてるのぉ?」




図書室で資料を確認していると、


ヒョッコヒョッコとやって来た彼女が、後ろから声をかけてきた。




「防災マップを見てるんだ」




僕は広げていた資料を彼女の方に持ってゆき、見やすいようにした。




「ふぅーん、エッチな本でも読んでるのかと思ったぁ」




彼女は素でそう思っているようで、心底不思議そうな表情をしていた。




「あのね?


いくら僕が健全な男子高校生だからってTPOは弁えるよ?


それに高校の図書室でエッチな本なんて置いているわけないじゃないか、


置いてたら問題だよ?」




いったい彼女の中で、僕はどれだけ節操の無い変態になっているのだろうか。




「持ち込んで読んでるのかと思ったぁ」




彼女は本当に僕がそんなクレイジーな事をしていると思っているのか、


全然冗談っぽくなくポツリと呟いた。




「君の中で僕はどんだけ性欲に溢れてるんだよ」




彼女の僕に対するイメージが、大層な性欲魔人になっているのだろうか。




きっと今の僕は愕然とした表情をしているに違いないだろう。




「えぇー、いっつも私の胸ばかり見てるじゃんぅ」




僕の反応に何かマズイと思ったのか、


彼女はしどろもどろになりながら、言い逃れ出来ない事実を僕に突きつけてきた。




「そんなデカパイをこれみよがしにブラ下げといて、


健全な男子高校生に見るなという方が難しいよ・・・


・・・このワガママオッパイめっ!」




僕はとびっきりの笑顔で、親指を立て彼女に突きつけた。




「はいはい、栄養がたっぷり詰まった胸をブラ下げてる私が悪ぅござんしたぁ」




彼女は両手を上げて肩を竦め、わざとらしくタメ息を吐いた。






「突起から栄養分でる?」


「まだ出ないよぉ・・・出るようにしてくれるのぉ?」






彼女は意味ありげな流し目で、妖艶に微笑む。






「ぼく、むずかしいこと、わかんなぁい」


「チキン野郎がぁ・・・日和やがってぇ」






顔を背け、俯いた彼女がボソリと何かを言った。




「え?なんだって?」




聞こえないフリをした方が賢明だと判断する。




「なんでもないよぉ・・・それで、その防災マップがどうしたのぉ?」




顔を上げた彼女は、ニコニコと朗らかに微笑んでいた。




僕は正直に『女の子って怖いな』と思った。




「あぁ・・・この防災マップで、


もしも災害が起きた場合に、どこに避難すればいいのか確認してたんだ」




とりあえず彼女が話題を切り替えてきたので、


僕は歯向かう事無く会話の流れに乗った。




「ふぅーん、どうやって見るのぉ?」




興味を引いたのか、彼女は防災マップの資料をシゲシゲと覗き込んでいた。




「ほら、ここを見て?


避難する場所のマークがあって、これが危険のある避難経路の標だよ?」




「あっ!うちの学校も指定避難場所になってるぅっ!」




「公共機関は大体避難場所になってるね」




「あの公園も避難場所なんだぁ・・・


・・・ねぇ、しばらく行ってないから、どんな所だったか見に行こぉ」




「そうだね、憩いの場としての公園では無く、


避難場所としての公園という目線での現地確認は必要だね」




「そんな小難しい事言ってないで、早く行こうよぉ」




「確かに、行動する事が大事だね」




「途中でコンビニ寄ろぉ、肉まん食べたいよぉ」






「僕は君の肉マンが食べたいな」


「おっぱい出るようにしてくれるのぉ?」






「さ、行こうか・・・今日は餡まんにしておこうかな」




僕は防災マップの資料を片付け、図書室を出ようとする。




「もう一押ししないなら、言わなきゃいいのに・・・


・・・毎回、期待しちゃう私もバカだなぁ」




背後から聞こえてきた彼女の呟きは、


諦めの中にちょっと嬉しそうな、くすぐったい照れが混在しているようだった。




いつか、もう一押しする勇気を、僕は持つことが出来るのだろうか。

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