バレンタイン~準備~
「あっ!甘い匂いがするっ!」
彼女が部屋に入ってきた瞬間、
砂糖の甘ったるい香りに、僕のテンションは一瞬でハイになった。
「あらやだ、まだ残ってるかしら?」
彼女は少し恥ずかしそうに、自身の身をスンスンと嗅いだ。
「すっごいチョコの匂いがするよ」
彼女から漂ってくる甘ったるいチョコの香りに、
バレンタインが近いので、僕は期待してテンションが上がり続ける。
「そう・・・ごめんなさい、
さっきまでずっと嗅いでいたから、私には分からないわ」
彼女は恥じらって、モジモジと上目づかいで僕を見つめてきた。
「これはあれかな?
バレンタインに『私がチョコよ?召し上がれ?』ってやる前フリかな?」
今まさに、彼女からそう言われたら、僕は理性的にいられるだろうか?
「随分とお目出度い脳をお持ちのようね」
テンションがマックス状態の僕を見て、
先ほどまで恥じらっていた彼女は呆れた表情をして、
見つめてくる上目づかいはジト目に変わっていた。
「ストッキングの足先にチョコをつけて、
直舐めさせてくれたりはするんだよね?」
呆れている彼女をお構い無しに、
テンションのボルテージが振りきっている僕はアレコレと妄想が広がり、
鼻息を荒くして彼女に食い気味に聞く。
低デニールのストッキングに液体状のチョコを足先に塗り、舐めとる。
想像するだけで最っ高ではないか?
「はぁー・・・
バレンタイン用のチョコを練習で作ったのだけど、試食の必要は無いようね」
はぁはぁ、と呼吸を荒くし彼女のストッキングをガン見する僕の目の前に、
彼女は手提げ袋をヒラヒラと振ってアピールしてきた。
「あーっ!するする!
・・・あっ、やっぱ止めた、
楽しみはバレンタイン当日に取っておきたいものね」
僕は楽しみを後に取っておく派なのだ。
「貴方は自分がバレンタイン当日に、私からチョコを貰えると思っているの?」
彼女は前屈みになり、上目づかいで挑発してくる。
「もちろん」
何の疑いも持っていない僕は、胸を張って正面から彼女の目を見て答えた。
「貴方のそのポジティブさは尊敬できるわ」
彼女は意表をつかれたのか、
少しキョトンとした表情をしてからクスクスと笑いだした。
「もっと褒めてくれてもいいよ?」
「もう、すぐに調子に乗る」
「バレンタイン、楽しみにしてるよ?」
「貴方の想像、越えてあげるわ」
「えぇーっ!『私がチョコ』と『タイツ・チョコ』を越えるだってぇっ!?」
「ハードルが果てしなく高いわ・・・まぁ、期待しておきなさい」
「やっば、興奮しすぎてバレンタインまで眠れないよ」
「そのテンションでバレンタインまで居られると困るから、
ランニングでもしてクールダウンしといてね?」
この後、何だかんだで彼女の手土産である
『手作りバレンタイン試作チョコ』を二人でお茶をしながら頂いた。
彼女から漂う砂糖の甘ったるい香りとは裏腹に、
甘いながらも非常に食べやすいチョコに、僕はご満悦だった。
チョコの感想を伝えると、彼女は照れてはにかみご満悦そうだった。
二人してご満悦な僕らはニコニコと笑いあいながら、休日の午後を満喫した。




