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ツインテールの日

「ツインテール・アタックゥッ!」


「アウチッ!」




廊下を歩いていると、彼女の声と後頭部に『ぺしん』とした感触を得た。




「もう一回ぃっ!」




彼女は僕を追い抜いて、振り向き様に回転を加えて、


ツインテールに結った髪を、僕の顔面に『ぺしん』とぶつけてきた。




「あひんっ!」




全然痛くは無く、くすぐったい感触なのだが、僕は大げさに反応した。




「どうだぁっ!まいったかぁ!」




彼女は腰に手を当てて、偉そうに宣った。




「ははぁ!参りましたでございますぅ!」




僕は彼女のノリに乗り、中腰になって頭を下げた。




「よぉおしっ!なら可愛いと言えぇっ!」




テンションを合わせた事で、彼女は気分を良くしたのか、


フフン、と鼻を鳴らし、ノリノリで命令してきた。




「世界一可愛いよ!」




僕は腕を突き上げて、とびっきりの笑顔で叫んだ。




「えへへぇ」




彼女は満足そうに、照れながらはにかんだ。




「それで、何で今日は髪形をツインテールにしてるの?」




一通りコントが終了したので、僕は彼女に尋ねた。




「今日はツインテールの日だって、ニュースで見たからぁ!」




彼女はニコニコと笑いながら、ブイサインをしてきた。




「ふぅーん・・・新鮮で、なんかイイネ」




普段は緩くカールしたセミロングの艶やかな髪を流し下ろしているので、


突然のツインテール姿には意外性を感じた。




「実は、ちょっと恥ずかしいんだぁ」




本当に恥ずかしいのか、


頬を赤くして目線を外して身体をモジモジとさせていた。




確かにツインテール姿は子どもっぽさがあったが、


少女から女性に成りかける今の時期に、


見方によって〈あどけなさ〉と〈大人っぽさ〉が、


万華鏡のように入れ替わるアンバランスさに、


僕の心は『ドキッ』とさせられた。




「そりゃそんな、あからさまに〈あざといツインテール〉にしてたらね」




このトキメイた心を誤魔化すために、僕はわざと彼女に意地悪な事を言う。




「あざとくないよぉ!」




憤慨した彼女は、プリプリと怒りだした。




「茶色のローファー、


薄手のニーハイ、


ムチムチした太もも、


パンチラしそうなくらい短いスカート、


萌え袖に、


大きな乳房の形が分かる上着、


ツインテールを結う可愛らしいリボン、


これだけ『属性』を盛っといて、狙ってないと言い張るの?」




僕はジト目で、如何に彼女があざといか伝える。




「でも好きなんでしょお?」




彼女は上目づかいで、ニヤニヤと笑いながら聞いてくる。




「萌えー」




2000年代のヒロインを彷彿とさせる〈あからさま感〉が、


あの頃夢中になった想い出を呼び起こし、〈萌えの王道〉を思い出す。




「いやらしい顔してるぅ!悪の怪獣めぇっ!


くらえぇっ!ツインテール・アタック!」




彼女から悪の怪獣扱いされるほど、僕はいやらしい顔をしていたのだろうか?




きっと気分は正義の美少女ヒロインであろう彼女は、


頭を振ってペシペシと僕の顔にツインテールをぶつけてくる。




ちょっと鬱陶しかったので、悪の怪獣らしく、


彼女のツインテールを口に含んでしゃぶりついてやろうか、


と思ったが、それではただの変態なので、控える事にした。




手入れの行き届いた枝毛の無い、


艶やかな彼女の美髪は、


きっと砂糖菓子のような甘美な味がするのだろう。




しばらくの間、好きにさせていたのだが、


彼女は何が楽しいのか満面の笑みでツインテール・ペシペシ攻撃を続け、


一向に止む気配が無い。




流石に飽きてきたので、彼女を止める事にする。




僕はタイミングを見計らい、


ツインテールの一房を掴むと、


自身の鼻に近づけ、


呼吸音が彼女に聞こえるように、


おもいっきり深呼吸して、髪の匂いを嗅いでやった。




大きな呼吸音を聞いて、彼女は彫刻のようにピタリと動きを止めた。




彼女のツインテールに結われた美髪はシルクのように手触りが滑べやかで、


薔薇の華に似た良い香りがした。




面白いくらいに反応して身体を硬直された彼女に、僕は更に追撃を加える。




『チュッ』




彼女のツインテールに、キスをする。




目を合わせて、わざと大きなリップ音を立てるのを忘れない。




瞬間、彼女の顔は真っ赤に染め上がり、


ボンッと頭から湯気が出ていそうだった。




可憐な唇をアウアウとさせ、言葉が出てこないようだ。




大きな瞳は潤んでおり、所在なさげに視線をさ迷わせていた。




「どう?悪の怪獣キッス」




僕は不敵に微笑んで、とどめにウィンクを贈った。




「ぴゃぁぁああーーっ!」




僕のウィンクを皮切りに、


硬直がとれた彼女は、奇声を上げて走り去って行ってしまった。




正義の美少女ヒロイン、敗れたり。




僕はそんな事を思い、唇を舐めた。




彼女のツインテールは、想像していた砂糖菓子程では無いにしろ、甘やかだった。

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