嘘ばかりのこの世界
この世界は偽物だと誰かが言った。
そんなことはありえない、馬鹿げていると、そう群衆は根拠もないのに罵った。
まるで何かに怯えるように。
私もまた恐怖を感じていた。
それは孤独の恐怖だろう。
交差点をすれ違う隣の人の吐息も、私の手を引く友人の体温も、私の中で早鐘を打つこの心音も、そしてこの恐怖心さえもが全て作りものだとしたのなら…。
人々は恐怖した。
故に全てを否定する。
もし本当にそうであったらと、そう思う心を誤魔化すように。
全てが疑わしきこの世界で、人々は疑うことをしない。
私もまた信じるべきものがわからないでいる。
この世界は本物か否か?
そんな疑問さえも偽物に思えるほどに、私はこの世界を知らない。