チョコレートチョコレート
彼女がぼくに初めて発した言葉は
「チョコ食べる?」
だった。
自己紹介すらせずに。
彼女曰く、
「どこの誰かわからなかったし、話し掛けようにも、話題に困ったから…。」
だそうだ。
まぁ、ぼくも彼女の顔くらいは知っていたけど、同期なのか、他の事業部の人間なのか、同じ会社かどうかすら知らなかったから似たようなものだけれど…。
ぼくらの馴れ初めを話すと、口の悪い友人は、
「それって餌付けじゃん。」
なんてことを、言う。
彼女も彼女で、
「なんか『いいな。優しそうだな。』なんて思っていたけど、話すきっかけがなかったんだもん。だから、たまたま持ってたチョコをあげてみた。」
と、否定しない。
これじゃ、まるでぼくが食いしん坊みたいだ。
『食べ物をくれる=いいひと』
と、いうわけでもないし、だいいち、ぼくは甘いものがあまり好きじゃない。
でも、あの時、彼女からのチョコを断らなかったのは、ほぼ初対面でせっかくもらったチョコを断るのは悪いと思ったし。
何より彼女に好感を持っていたからだ。